第9話 続 遠い国の返事 第三部 下 考えてみよう

ニャーモさんはコーヒーのおかわりをしながら言いました。

 「さあ、ここであなたたちに問題を出すわね。この飛行機はアムステルダムまで12時間もかかるから、ゆっくりしていられるしね。考える時間はたっぷりあるわ。

はい、私たちは夕方の5時に飛び上がりました。目的地までは12時間かかります。さて、到着はいったい何時でしょう?時差は8時間よ。よく考えてね。」

メールボトル19は考え始めました。

「ええと・・夕方の5時に飛び上がったのよね。そして12時間かかると言う事は、明日の朝の5時に到着。だけど、時差が8時間ということは、明日の午後1時に到着だね。」

ボトルさんが強く二回傾きました。いいえ、違うといっているのです。


「キリエちゃん、それ違う気がするわ。ニャーモさん、機内誌の一番後ろのページの世界地図見せて。」

手紙さんがそう言ったので、ニャーモさんは世界地図を広げて見せました。

「文字小さいけど・・・まずフィンランドを探そうね。」

「えっと・・北の国だから上の方・・・あ、あった、赤丸ついてヘルシンキって書いてある。」

「じゃあ、キリエちゃんが流されたデンマークは??」

「お隣のスウェーデンまで船で行ってそこからピレンちゃんに乗って・・・走って。ああ、あった。ここよ。」

「PHR07さんがオランダはデンマークの隣って言ったわよね。探せるよね。」

「あった。ここ。赤丸でアムステルダムって書いてある。」


「私たちはそこへ向かって飛んで行くのよね。じゃあ、今度は日本を探しましょう。あのとき東に向かって飛んで行って、日本は小さな島国。東の島を探そうね。」

「日本、日本、あった!!ほんと小さな島国ねえ。KIXはどこかしら?」

「すごく小さな文字だけど、関西インタナショナルエアポートってここにあるわ。」

「そこからインドネシアにいったのよね。南へ飛んだね。バリ島見つからない。」

「バリ島じゃ無くていいのよ。スカルノ・ハッタ空港を探しましょう。」

「インドネシアの一番大きな島・・・・の・・・あ、見つけたわ。」

「私たち、スカルノ・ハッタ空港から飛び立ったわけよね。そこからアムステルダムまで・・・・それって西に飛んでいるのよ。」

手紙さんとキリエさんは世界地図で、自分達がフライトしたところを探し出しました。

ボトルさんが一回しっかり傾きました。


「東に飛んだ時は地球の回り方と反対に向かって飛んだから、時間が早くなってお昼過ぎの出発で8時間のフライトだったけど、時差を加えて朝の6時に着いたのだったわ。

 今度は西に飛ぶってことは・・・地球の回り方と同じ方向に飛んでいるのだから・・・地球と競争?」

ボトルさんが又しっかり一回傾きました。

「ええと・・・・だったら・・8時間の時差を足すのじゃなくて、引くってこと?」

「そうだと思う。だから・・・・夕方5時から12時間で朝の5時・・・そこから8時間引く・・・前に戻るのよ。だとしたら夜の9時!!!え?5時から飛んで夜の9時だと4時間しか飛んでいないみたいになるねえ。」

ボトルさんは手紙さんとキリエさんの会話を聞いていて、またまた強く一回傾きました。


「ニャーモさん、分かったわ。夜の9時にアムステルダムに着くの。」

ニャーモさんは笑い顔でいいました。

「よく考えたわね。大正解よ。その通り。手紙さんもキリエさんも賢くなったねえ。でも。ボトルさんは最初からわかって居たみたいね。」

ボトルさんは嬉しそうにぴょんと飛び跳ねました。

「宮子さんが言っていたわね。このボトルさんは大学の偉い先生達が、研究して作り出した特別なボトルだって。だから私、ボトルさんすごく賢いのだと思う。ただ、話せないだけ。もし話せたら私より、キリエちゃんよりずっと賢いのだと思うわ。」

「手紙姉ちゃんの言う通りだと私も思う。ボトルさん、えらい!!」

 ボトルさんはみんなに褒められてちょっと恥ずかしそうでした。

「ニャーモさん、アムステルダムに夜の9時に到着して、それからヘルシンキ行きの飛行機に乗るの?」


「ううん。もうその時間にヘルシンキに飛ぶ飛行機はないから、空港の中にあるホテルで一泊して、次の日の朝の飛行機に乗るのよ。」

メールボトル19は『そうなんだ・・明日はヘルシンキに帰るんだね』と思いながらも『なんで明日??今夜この飛行機の中で眠って、着いたらホテルで眠って・・・明後日ヘルシンキじゃ・・・ないんだよね。時差ってやっぱりよくわからない不思議なものだわ』 と、思っていました。

「ほら、あなたたち窓の外を見てごらん。もう真っ暗よ。」

「ほんと、じゃあずっと夜の中をとぶのかな?」

「多分・・一回昼になると思うのだけどまたすぐ夜になっちゃうのね。本当の事言うとニャーモも時差のことはまだよく分からないの。ただ・・そういうものだと思っているだけ。深く考えるのやめちゃいましょう。頭がこんがらがっちゃうしね。」

ニャーモさんはそう言っておおきなあくびをしました。もう眠くなったみたいです。


まだみんなが寝静まっている時、機内に灯りがともされて朝食が運ばれてきました。

「ん・・・ん。まだ眠いのになぁ・・・朝食?外は真っ暗な夜なのにね。」

とニャーモさんが言いました。

 朝食を食べ終わるともうすぐ着陸態勢です。12時間の長いフライトでしたが、みんなよく眠っていたのでそんなに長くは感じませんでした。


赤いトーク帽のキャビンアテンダントさん達に笑顔で見送られて、アムステルダム・スキポール空港に到着しました。とても広くて爽やかな感じのする空港です。別にヘルシンキ空港とは似てはいなかったのですが、それでも同じヨーロッパの空気というのでしょうか?メールボトル19はここまで来て、お家が近くなってきたなと感じたのです。

「さてと、ホテルに行きましょうか・・・その前に何か食べたいわ。朝食って言ったけど今、夜だし、もう少しボリュームのあるものが食べたい。」

ニャーモさんはかなり分厚いサンドウィッチとミルクティーを買って、ぺろりと食べました。


そのあとでホテルに行ったのですが、なんだか箱の中に入ったような、お部屋とは言えない処でした。ただベッドがあるだけ。シャワールームやトイレは共同です。

「これでいいのよ、ただ一晩眠るだけだから。飛行機を待つ人はみんなこういうところで眠るの。空港内にあるから、朝出発が楽だからね。」

それにしてもつい先ほどまで眠っていたのです。眠れるのでしょうか?しかし、ニャーモさんはベッドに横になると、すぐにすやすやと眠ってしまいました。

「体内時計が夜だからかな?それにやっぱり長い旅行で疲れているからだろうね。」

と、寝ても寝なくてもかまわないメールボトル19は、ニャーモさんの寝顔を見て言いました。

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