第8話 続 遠い国の返事 第三部 下 素敵な飛行機

スカルノ・ハッタ空港です。さすがにインドネシア一の空港、とても広くて大きくて近代的です。ここからは長いフライトになります。

「私ね、すごく楽しみだったの。今から乗るのはエミレーツ航空と言ってね。私の憧れの航空会社の一つよ。アラブ首長国連邦のドバイって言う、なんかすごい都市が拠点でね。 豪華絢爛なファーストクラスやビジネスクラス。ああ、興奮するわ。」

メールボトル19はファーストクラスとかビジネスクラスなんか知りません。

「それって同じ飛行機の中?」

「そうよ、同じ飛行機の中で特別な場所にあるの。ものすごくお値段も高いの。」

「じゃ、今日はそのどちらかに乗るのね?」

「まさか!!ニャーモさんはそんな贅沢はしませんよぉーーー。いつものエコノミークラスでーす。」

「・・・・・・・・・・・だったら・・・・・何も嬉しいことないじゃない。」

「ううん、そういう場所がある飛行機に乗るってだけで嬉しいのよ。」

前から思っていたことですが、ニャーモさんはやっぱり子供みたいなところがあるようです。

「お食事もとても美味しいって聞いたわ。それにキャビンアテンダントさんが・・・とっても魅力的なのよ。見れば分かるわ。」

ニャーモさんはとにかく、今度の飛行機に乗るのがとても楽しみな様子です。


搭乗のアナウンスがありました。目的地はアムステルダム・スキポール空港です。AMSと書いてありました。飛行機に乗り込むと、キャビンアテンダントさんたちがこぼれるような笑顔で迎えてくれました。

 メールボトル19はびっくりして声がでません。

「お客様のお座席はこちらでございます。ごゆっくりおくつろぎくださいませ。」

アテンダントさんはそう言って座席まで案内してくれました。

 制服は真っ赤なスーツです。そして同じ色のトークハットをかぶっていて、その帽子のところから白いベールが垂れ下がっています。とても優雅です。男のお客さん達はアテンダントさん達に見とれています。だってどのアテンダントさんも、美人ばっかりなのですから。


「私・・アラビアンナイトのお姫様は、サムハさんより、ここのアテンダントさん達の方がぴったりな気がするわ。だってアラブでしょ・・アラブってアラビアンだと思うし。

 サムハさんはイタリアの大昔の大画家達の描いた女性みたいに思えるの。」

「みんなすごく綺麗ね。そしてお帽子のベールが本当にお姫様みたい。

 ニャーモさん、イタリアってモロッコに近いの?」

「そう、一番近いのはサムハさんが言っていたように、ポルトガルとスペインだけどその向こうがイタリアよ、だからわりと近いの。」

「じゃあ、そうなのかもしれないね。」

とメールボトル19は妙に納得していました。


飛行機が飛び上がるとお食事の用意。アテンダントさんが運んできてくれました。ニャーモさんは早速食べて、おいしい、評判通りだわ。と満足そうでした。

「フィンランドって・・・食べるものあまり美味しくないのよね。半分冬だし、取れるものがすくないのね。サケとかオイルサーディンとか、ニシンの干ものとか・・・お野菜だって限られているし。まあそれらも美味しいけど、いっつも同じものばかり食べている気がするわ。

 日本では珍しいものいっぱい出してくれたでしょ。インドネシアもやっぱり食べ物の種類が豊富だったわ。

 食事が代わり映えしないのも、自分の国だから仕方ないけどね。」

ニャーモさんは機内のお食事を残さず食べて、食後のコーヒーを味わっていました。

ニャーモさんはとてもリラックスしてご機嫌でした。


手紙さんは考えていました。

 『旅はとても楽しかったけれど、やっぱりニャーモさんは自分の家にもうすぐ帰れるのが嬉しいのだわ。そう、キリエちゃんとボトルさんがニャーモさんのお家に帰ってきたとき、あんなにサムハさんが大好きなのに、それでもお家がなにより嬉しかった。あの時の気持ち私忘れられないわ。自分の住処って、特別なものなのね』

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