第7話 続 遠い国の返事 第三部 下 お名前空港

出発の日です。この長く楽しい旅もいよいよ終わりを迎えます。エハカさんが自動車で迎えに来てくれました。サムハさんも乗り込んで、いよいよここともお別れです。

「楽しかったね、いっぱい思い出ができたね。暑かったけどそれでもやっぱりみんなでいるのって最高よね。」

ジュアンダ空港に着きサムハさんとエハカさんにお別れをしました。

「良い結婚式でありますように。そして二人の新しい生活が、幸福に満ちたものでありますように。エハカさん、サムハさんを大切にしてくださいね。」

エハカさんは約束しますと答えニャーモさんと握手をしました。

「サムハさん・・・あのウェディングドレス、絶対着てね!写真忘れないでね。」

メールボトル19が小声で言いました。サムハさんはにっこりほほえんで

「必ず着るわ。待っていてね。」

と、答えました。

 名残はいつもつきないものですが飛行機の時間が迫ってきます。今回のお別れはみな笑顔でした。


飛行機に乗り込むと手紙さんが言いました。

「目的地はCGKって・・・なんていうところ?」

「うん、チュングカレン空港って言うの。と言うのは昔の話でね。チュングカレンと言う土地にあるのでそのままCGKって使っているけど、今の名前はスカルノ・ハッタ国際空港なの。インドネシアで一番大きな空港よ。

 そこで乗り換えてAMS,オランダのアムステルダム空港まで12時間のフライト。オランダはキリエさんを海に流したデンマークのお隣の国。そこからもう少しだけ飛行機に乗ってHEL到着。」

わーー、なんだかすごいなぁ・・とメールボトル19は思いました。言いたいこと、聞きたいことがまたまた増えました。


「ねえ、なんで空港のお名前が変わったの?」

「それ話していたらスカルノ・ハッタ国際空港に着いちゃうわよ。」

 ニャーモさんが参ったなぁとメールボトル19を見ました。けれどメールボトル19はニャーモさんの言葉を待っています。

「あのね、インドネシアって国は昔はオランダの一部だったの。」

「えっ??デンマークのお隣のオランダの一部?だってすごく離れているのに?」

「そう、インドネシアは国じゃ無くてオランダの領土だったの。でもそれ、インドネシアの人達は嫌だったの。だからオランダから離れる為に戦ったの。独立戦争って言うのだけどね。その時に活躍した人がスカルノ大統領とハッタ副大統領。

 そして戦いに勝ってオランダが、はいはい、もうオランダじゃありません。あなたたちの国はインドネシア国です。って認めたのよ。インドネシアの人達はとっても喜んで、二人の名前を記念に空港の名前にしたのよ。

そうそう、その頃インドネシアに日本人の吉住留五郎さんと言う人が住んでいてね。一緒に戦ったのよ。昔のインドネシアの人は、その人のこと覚えてると思うわ。」


メールボトル19はニャーモさんの話を真剣に聞いていました。手紙さんが言いました。

「なんだかすごい。私たちこれからオランダに向かうのでしょ。そして宮子さんに会った日本。サムハさんの居るインドネシア・・・・世界って繋がってるみたい。」

「そうだね。世界にはたくさんの国があるけど、みんな何かしらで繋がっているのよ。喧嘩して仲が悪い国もあるけど、できる限りどの国も仲良くしよう、協力しようって考えているのよ。」


お名前が変わった空港は他にもあるの?」

キリエさんが聞きました。

「あるわよ。結構たくさんあるよ。ええと、たとえばアメリアにはジョンFケネディと言う、立派な大統領だった人の名前の空港あるしね。イギリスのリバプールってところはジョン・レノン空港。この人音楽家。音楽家と言えばポーランドのショパン空港も。それからフランスのリヨンの空港は、小説家のサン・テグジュペリ。日本にもあるのよ。坂本龍馬って偉い人がいてね。龍馬空港と言うのができたのよ。」

「わーー面白いね。きっとみんなその国で活躍した有名な人を、よその国の人に自慢したくて空港にお名前つけるのかもしれないね。」

キリエさんの感想は、当たらずとも遠からずだなぁとニャーモさんは思いました。

「ねえ、フィンランドにはお名前変えた空港はないの?ロバニエミなんて、サンタ・クロース空港にしたらいいのに。」

「確かにそうね、面白いわね。でも今のところフィンランドにはないわ。そうそうニャーモのお家があるトゥルクの空港が、『ムーミン空港』なんて、いいんじゃない?」

結局最後は笑い話になってしまいましたが、そんな話をしているうちに本当にスカルノ・ハッタ空港に到着してしまいました。


ニャーモさんは思っていました

『良かった、到着。ケネディさんがどんな人?とかジョン・レノンさんがどんな人とか聞かれたら、簡単に答えるの難しかったし・・』

しかしニャーモさんの考えは甘く・・・メールボトル19は非常に記憶力が優れているので、お家に帰ってから、質問の矢がばさばさと飛んできました。しまいには手紙さんとキリエさんがビートルズの歌を歌い出し、ボトルさんがそれに合わせてぴょんぴょん飛び跳ねるように・・・ニャーモさんもやれやれと思いながら一緒に歌い、一緒に踊るようになってしまったのは後のお話。



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