第4話 続 遠い国の返事 第三部 下 ニャーモの冬
ニャーモさんはサムハさんに会ったらお礼を言おうと思っていました。ビニールプールの上で二人でくつろぎながら話を始めました。
「サムハさん、メールボトル19を私の元に返してくれて本当に感謝しています。わがままなお願いだってことはわかって居たのですが・・・・・・私はあの子達と一緒に居たかったのです。
私、十八歳の時に両親を失いました。極寒の真冬のことでした。どうしても出かけなくてはならない急用ができて、二人は車ででかけて行きました。もちろん雪の中でも走れるようにしている車です。でも思いがけず天候が悪化してすごい吹雪になって、全く何も見えなくなってしまったようで、道を失ってしまったのです。そして激しく降り続く雪に車ごと埋もれてしまったのです。雪は非常に勢いよく降り続き、二人は車のドアも開けられず・・・いや・・開けて外に出たとしたも凍死していたでしょう。
私は帰ってこない両親のことを警察に連絡しました。でも捜索にでることもできないぐらいひどい天候で・・・翌日・・やっと見つかった二人はもう凍えて亡くなっていました。」
「・・・・・・・・まあ、なんてお気の毒なこと・・・アラーの神様、ニャーモさんの傷みをどうか和らげてください。」
「ありがとう。私にはあなたがアラーの神様に見えるわ。
私はそれから通っていたデザイン学校を卒業して、あれこれの仕事をしながら生活しました。私の祖父母ももう亡くなっていましたし、私には兄弟姉妹もいませんでした。結婚もせず子供も無く、私、ずっと一人だったのです。
夏場はそれでも頑張って仕事をしたり、大好きなモーターサイクルに乗ってあちこちツーリングしたり、それなりに元気に過ごしていました。でも冬がだめなのです。冬になると寂しくて怖くて暗い気持ちになって・・・・・・
もう遠い昔のことなのに冬になるとやっぱり憂鬱で、外に出るのも食料品や日用品を買いに月に二回ぐらい。あとはずっと家の中に閉じこもっていました。
日本の宮子さんからあのメールボトルが届いて、手紙さんと話をするようになりました。それは私の毎日を変えてくれたのです。手紙さんは賢い子で私の様子をいつも見ています。そして冬になって私が暗い表情になるのを見逃しませんでした。
キリエさんをボトルさんと海に流すのは手紙さんが考えたことです。夏の終わりに・・そうしたらきっとその次の冬には、楽しい連絡が来るはずだと手紙さんは考えたのです。
その通りになりました。
キリエさんとボトルさんの旅の様子を書いてくれた、あなたからの初めてのお手紙はどんなに私の気持ちを明るくしてくれたことでしょう。
私はキリエさんとボトルさんとも一緒に暮らしたいと願ったのです。
私に家族ができました。今は夏も冬も私はとても元気。冬でもあの子達が賑やかで、時々、『ちょっと静かにしてよ、ニャーモは今図案のこと考えているのだからね。あまりうるさいと暖炉の中に放り込んでしまうわよ』なんて、まるで本当の子供に言うようなことまで言っています。
サムハさん、あなたに会ったら私がどんなに幸せかを伝えようと・・・お手紙ではなく直接あなたにお話しようとずっと思っていました。サムハさんありがとう。」
サムハさんは目に涙をいっぱい溜めてニャーモさんの話を聞いていました。そしてたまらなくなってニャーモさんを力一杯抱きしめました。
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