第3話 続 遠い国の返事 第三部 下 今度は大丈夫
翌日もとってもいいお天気。
「ねえ、みんなで海にはいりませんか?」
とサムハさんが提案しました。
メールボトル19はとても海に入りたかったけれどバリ島での事を考えると、すぐに返事ができませんでした。ニャーモさんは『ああ、もう4月になったわ。フィンランドの雪もすっかり溶けているでしょう。でも海になんかとても入れる気温じゃ無いわ。もう一回海にはいりたいけど・・・でも』と、やっぱり考えてしまいました。
サムハさんはみんなの気持ちが分かっていました。
「この丈夫なロープ。研究所で使うものですが・・・これをあの木に結ぶのです。そして、これ、おもちゃみたいなビニールプールですが、ここの処にロープの端を結びます。舫い結びと言って船を係留する時に結ぶやり方。絶対にほどけません。
そしてね、こちらの細いロープで私かごを作ったのです。この中にメールボトル19さんを入れて、ぐっと口の処を絞って、そして私たちが持ってメールボトル19さんを海に入れるのです。
お向かいの島はマドゥラ島。ここの海は外洋ではないから激しい潮流などありません。穏やかな海ですよ。だから流される心配などありません。」
メールボトル19はサムハさんの作ってくれた網かごの中に入ってみました。
「わーー、いっぱい隙間があるから外も良く見えるね。これだったら心配はいらないと思う。」
サムハさんの心遣いでみんなは安心して海に出ることができそうです。
「ニャーモさん、お日様の光はとっても強いのでこの帽子をかぶってくださいね。」
サムハさんは大きなつばの麦わら帽子をニャーモさんに差し出しました。そして自分は太いロープをしっかり木に結びつけ、ビニールプールにも結びつけました。その手順は確実で素早く信頼ができました。
「サムハさんはお仕事を始めてから、ずいぶんてきぱき何でもできるようになったのねえ。前はもっと、おっとりのんびりゆっくりしていたのに。」
と、キリエさんが驚いていました。
「ここの海は遠浅で浜から50mぐらいまではニャーモさんの首あたりの深さです。だから心配しないでくださいね。このロープでは浜から15mぐらいまでしか行きません。その辺りでのんびりしましょう。エハカと私は時々このビニールプールにこうやって乗って、海の上でランチなどしたりするのです。」
「まあ、とっても仲がいいのね。でもそう言うことなら安心ね。バリ島でのようなことは起こらないわね。」
メールボトル19もその話を聞いていました。
さあ海に出て行きます。ロープの長さだけ沖にでました。本当にこれなら安心。ニャーモさんは手首に、メールボトル19の入っている網かごの細いロープをしっかり結んで、メールボトル19を海の中に入れました。
そのとたんに手紙さんとキリエさんの歓声がが上がりました。
「きゃー、気持ちがいい!それになんて綺麗なんでしょ。珊瑚がいっぱい見えるわ。あのふにゃふにゃとしたのは、あれがイソギンチャクって言うのね。貝が口をぱくぱくしてる。浜辺にいる貝はこんなことしないのに。空気を吸っているのかなぁ?」
賑やかにあれやこれや話しながら海の中を楽しんでいます。
「サムハさんありがとう。私はこんなことはできなかったわ。あの子達を怖い目に遭わせただけ。」
「そんなことないですよ。大変な事だったかもしれませんが、それでもメールボトル19は自分達で考えて考えて、絶対ニャーモさんの処に帰ろうとしていたし、運良くシーラカンスにも会えて、またいっぱい勉強もしたでしょうし。悪い事なんて本当は無いのだと思います。」
サムハさんは優しく言いました。
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