第11話 流れ星
〈不時着して二日目の夜〉
赤茶けた荒野の向こう、空はどこまでも黒く澄んでいた。
大気が薄いため、星々は針のように鋭い光を放ち、夜空を隙間なく埋め尽くしている。
「ここの夜空もいいねぇ。」
ノヴァはスターレイのタラップに腰かけ、、瞬く星へ視線を向けた。
着用しているのは《ライトスーツ》――船内や軽作業時に使う簡易仕様のスーツだ。
「この星は大気が薄いため散乱光が少なく、星の輝きが強調されています。」
「一つひとつの星に一つひとつの夜がある。それこそロマンってやつだな。……ん?」
その時だった。
星々の煌めきの中――ひとつだけ、異常な速度で膨張する光があった。
何かが大気圏に突入し、尾を引いて落下している。
「……これは、隕石……じゃないよな?」
白い軌跡は地平線へ吸い込まれ、山稜の向こうで閃光とともに姿を消した。
数秒の静寂。
――ドゴォォォォン!
重低音が遅れて空気を震わせる。
「今のは!?」
「分析するには情報が乏しいですが、落下物は隕石より複雑な物体です。」
ノヴァの胸に、ぞくりと電流が走る。
「よし!見に行くぞ!」
彼は勢いよく立ち上がり、宇宙船内の倉庫へ急ぐ。
だが、ライトスーツからフル装備のスーツに切り替える余裕はなかった。
落下物は待ってくれない。
星を眺めていた時の《ライトスーツ》のまま、ノヴァはローバーに飛び乗った。
《ナンバーナイン》のエンジンが唸り、荒野へライトが伸びる。
「落下地点までの距離は?」
「予測では五時間から十時間です。」
「幅ありすぎだろ。」
「落下角度と速度から座標範囲は推定できます。しかし地形データがありません。」
「行ってみるしかないってか。」
ノヴァはアクセルを踏み込む。
ローバーは砂煙を巻き上げ、闇の荒野へ躍り出た。
「イブ、ナビを頼む。」
「了解しました。くれぐれも気を付けて運転を。」
六輪の“ギア”が夜を切り裂くように走る。
遠く、闇の向こうには――“何か”が落ちている。
ノヴァの胸は、不気味な期待と興奮で震えていた。
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