第8話 宇宙栽培

「新鮮な野菜がたべたい!」

とノヴァ


「必要ありません。野菜から接種すべきビタミンはキューブで摂取できます。」

と答えるイブ


「あんなものは食事とは言えない!【ドーム】を出してくれ」


すこし間をおいて

「こちらです。」

と【ドーム】と呼ばれる人の上半身ほどの立方体型の装置を2つ運んでくるロボットアーム


ノヴァは装置を受け取り、一個ずつ外へ運んでいく。


宇宙船近くの開けた場所で立方体のを地面に置いた後、一つの立方体に向けて腕のコンソールを操作する。


すると、ドームの各面が開き、はじめサイコロの展開図のように広がり、十字の形になった後、円形になるように地面に広がっていく。やがて、100平方メートルほどの床面が形成された。


つぎに、ノヴァは、形成された床面の端にもう一つの立方体を置いて、再び腕コンソールを操作する。

立方体が展開し、ドーム型の壁から屋根となるように骨組みを形成した後、骨組みの間と間を覆う形で屋根と壁面が形成されていった。 


こうしてドーム型の建物が形成された。



ノヴァは、宇宙船内からワゴンとスコップをもってきて、土を掘ってはワゴンに入れ、それをドーム内に運び込む作業を繰り返した。

やがて、ドーム内の床面は土でいっぱいになった。その上から、宇宙船に積んであった肥料をまいていくノヴァ。


これほどの作業を一人で行う場合、本来であれば時間をもっと消費していたはずであるが、スーツの運動補助機能により、短時間で作業を実行することができた。


「自家製菜園の出来上がりと。次は種付けだな。種はなんの種類がある?」

スーツと宇宙船との通信装置を介して、イブに問いかけるノヴァ


「あらゆる種類の種を用意していますが、成長性や栄養価を考慮すると、じゃがいもが最もお勧めです。そのほかにも、レタス、ホウレンソウ、かぶ、トマト、バジルなどを推奨されます。ただ・・・」


「ただ?」


「問題は水です。」


「水か。」


「宇宙船に備え付けてある水生成器は毎日人間2人が1日に活動できる水を生成しますが、エネルギー配分の関係でそれ以上の生成はできません。しかし、野菜を育てるのに十分な土壌を作るには一定量の水をバクテリアが活動できるうちに土に与える必要があります。」


「それはそうだ。」


「なにか十分な水を入手する方法を考えなくてはいけません。なお、船にある酸素ガスと水素ガスを燃焼反応させることで水を生成できますが、爆発の危険性を伴うため、お勧めしません。」


「火遊びするには年取りすぎてるしな。

やっぱり氷を探しにいかなくちゃだめかも。」


「ひとまず一人分の水は使えますので、それで賄える範囲で育ててみましょう。」


「そうだな。それじゃあ、まずはおしゃれにバジルなんかに挑戦してみよう」


「種を用意しておきます。それと、マスター。確かめたいことがあるので、この星の土を分析機にかけておいていただけますか?」


「確かめたいこと?」


「はい。そちらに関しては結果が出たら、またお知らせします。」

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