第3話 星の組成

「センサーが反応しなかったのは、なんでだろうな。原因はわかる?」


ノヴァは、宇宙船スターレイの外壁に残る衝突痕を観察しながら、腕の通信端末に問いかけた。

声はヘルメットの内部で反響し、薄く乾いた空気に吸い込まれていく。


宇宙船には高精度の物体感知センサーが搭載されている。

通常であれば、飛来物との接触などありえない。


『衝突時の状況を解析中……。

 ――詳細は不明ですが、センサー系統に外部からの干渉を受けた形跡があります。』


「干渉、ね……。」

ノヴァは唸るように呟いた。

「ま、考えすぎても仕方ないか。とにかく、この星の調査を進めながら、修理の糸口を探そう。」


ノヴァはスーツの前腕にあるモジュールを操作した。

即座に《スターレイ》の前方装置が起動し、地表から垂直にレーザー光が放たれる。

淡い青の光が砂塵の中を貫き、空へと伸びていった。


数秒後――イブの声が戻る。


『環境分析、完了。

 大気成分は二酸化炭素が96%、窒素が3%。火星に近い組成です。

 磁場による保護は観測されず、宇宙放射線の照射が強い状況にあります。

 屋外活動にはスーツ着用を強く推奨します。

 また、周辺に水分および生命反応は確認されません。』



ノヴァは地面に片膝をつき、砂を掴み上げた。

乾いた粒子が指の隙間をすり抜け、さらさらと流れ落ちていく。

その感触を、しばらく無言で味わう。




「……冒険の始まりだ。」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る