第27話 豪華な部屋

それぞれ連れていかれたが、私の部屋はアオちゃんの部屋の向かいだ。

「貴羽、また明日」

穏やかな表情で私に挨拶しアオちゃんは部屋へ入った。私も頷いて部屋へ入る。

部屋は可愛らしいピンクと白の乙女チックなものを想像していたが、さすがは本物のお城だけあり、そんなことはなかった。

壁紙は白いが、照明器具がうっすらオレンジがかっていることもあり、目がチカチカするようなことはない。家具は一式焦げ茶色の品の良い猫脚で揃えられている。

「夕食までお時間がございますが、入浴を先に済まされますか?」

「はい。よろしくお願いします」

マリーが入って右手奥の扉から入浴の準備へ。メリーが「入浴の準備に少々時間がございますので」とお茶の準備へ向かった。今、この部屋には誰もいない。えんじ色のソファー。好奇心でゆっくり座ってみる。柔らかく身体を包み込むソファー。けれど、柔らかすぎて身体が痛くなる、なんてことはない。計算され尽くした作りに感動する。もう、前の世界の教室の椅子も、家のソファーにも戻れない。

このままでは寝てしまう。そう思い、家具をじっくり観察するために、無理やり身体を起こした。

ドレッサーには香水瓶やら化粧品やらが並んでいる。申し訳ないが、私には使い道がわからない。そっと引き出しを開けてみれば、キラキラ眩しいアクセサリーが並んでいる。怖いので触らないで置いておこう。

窓から景色を眺めようと近づけば、バルコニーがあるではないか。

そっと出たら、程よく心地よい風が吹く。寒すぎないが、夜の風が昼間の太陽が残した熱をさらって行っているのを感じる。ほのかに涼しい。

ここにも簡単なソファーとティーテーブルが置かれている。時間があったらここで読書をしたいものだ。

景色に目をやると、前の世界とは全く違う。

先ほどこの部屋に入った時に感じたが、多少、電気の概念が存在するようで、街にも街灯の灯りが見える。しかし民家には浸透していないようで、街灯と遠くの橋あたりにしか光がない。橋よりもう少し奥には港街だろうか、灯台の光と船の光がうっすらと見える。

少しだけ強く風が吹いた。

「中に入りましょう」

呟いてバルコニーを後にしようと振り返る。

「――お帰りなさい」

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