第11話 蒼乃の怒り

――しまった。

どこから聞きつけたのか。アオちゃんは屋上の扉を勢いよく開いていた。


いつかは変わらないといけない。

そうは思っている。それでも私は、アオちゃんを中心に生きてきた。アオちゃんが私の世界を変え、私に友達だと言ってくれた時から、ずっと。

私は正直、両親を家族とは思っていない。私の家族は、今やアオちゃんだけだ。

それが、その考えが、アオちゃんを傷つける結果を招いてしまった。

私がもっと周りに、アオちゃん以外にも好かれる努力をしていれば。学校でのアオちゃんとの付き合い方を考えていれば。私の狭い思考では、私の狭い世界では、アオちゃんを守ることはできない。そのことに気がつくきっかけは幾度とあった。けれど、アオちゃんを守るために、アオちゃんと距離をとる。その勇気が持てなかった。だから私はそのきっかけから目を背けたのだ。

今更後悔しても遅いのだが、そんな思考が頭をよぎった。もちろん、そんな思考に答えなどでない。私が選ぶべきは決しているのだから。

アオちゃんの声に振り返る四人。しかし高橋さんの手は止められない勢いに乗っている。私の頬に、見事にヒットした。

「貴羽!」

アオちゃんは中学時代と同じ、泣きそうな顔――いや、涙を流しているようにも見える。

アオちゃんが駆け寄ってきた。なんだかじんじんとしてきた。少し痛い。

「アオちゃ……」

「あなたたち! 貴羽が何したっていうの!?」

私を胸に抱きしめてアオちゃんは叫んだ。

「高嶺さん、付き合う相手を考えた方が」

「山田何言ってんの!」

「遠海さんが影で高嶺さんの悪口を!」

「俺ら高嶺さんを守ろうと」

「うるさい! 貴羽はそんなことしない!」

ーー確かに、私にはアオちゃんの悪口を言いふらす相手なんていないか。

そんな自虐的な思考ができるくらいには、私は元気だ。

アオちゃんの涙声に、四人はこれ以上の言い訳はできなかったらしく、俯いた。こう言う時の対策も練らずにこんなことをするなんて、名門校の名が廃る。

「せんせー! こっち!」

アオちゃんの友達が声をあげる。ここは屋上。逃げ場はない。こんなところに計画なく呼び出すところも、ずさんというか。

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