第3話 日常を手にいれるまで
そうして無事、私もアオちゃんも中学校に受かり、再会。二人で高得点を出して内部進学し、今に至る。
私も、アオちゃんほどではないが好成績を出せるようになったため、二人で勉強をするのだと言い訳し、私の家に入り浸っている。アオちゃんのお母さんも、渋い顔をしたが見逃してくれている。勉強は同じレベルかそれ以上しか、友人として許してくれないのは小学校の時点でわかっていたことだ。
最近ではアオちゃんの両親はお互い不倫相手がいるようで、忙しい。アオちゃんの成績表を見る以外に何も言ってこないと随分苦々しい顔でアオちゃんが言っていた。
私の家に集まっているためか、アオちゃんは料理をしてくれる。今日もこれから夕ご飯の買い出しだ。昼間は家政婦の君江さんがいてくれる。両親へは私の様子を報告する君江さん。お目付け役も兼ねているようだが、君江さん曰く、あまりしっかり聞いている様子はない、とのこと。
「ねえ、貴羽」
「はい。なんですか、アオちゃん」
「ここ以外のどこかに、行きたいって思わない?」
珍しくアオちゃんは空を見上げる。夕方のオレンジ色が、アオちゃんは嫌いだった。
――夕日を見るとね、貴羽と離れてあの家に帰らないといけないって思うの。だから、あのオレンジ色が、夕日が、嫌いなんだ。
いつか、そんなことを言っていた。私は、明日もアオちゃんといられるように頑張ろうと思っていた。
私は何にも縛られることがなかったから、きっとアオちゃんの辛さはわからない。
学校でも家でも、成績を気にしなければいけないアオちゃん。放課後、私といる時だけ気が抜ける、なんてことも聞いた。
「アオちゃん、私の目を見てください。ね? 私とアオちゃんはいつでも一緒ですよ」
苦し紛れの私の言葉に、アオちゃんは笑ってくれた。
「そうだね。でもそれは私と貴羽の秘密だよ」
「はい! 絶対です」
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