前のエピソード――第1話　いつもの放課後

私とアオちゃんは家庭の事情で、ほぼ二人暮らし。小さい時はアオちゃんの両親が、文句を言いながらも、私の面倒を見てくれていた。けれど、小学校の中学年くらいから、アオちゃんの家は厳しくなった。もともと厳しい教育方針ではあったけれど、アオちゃんの意思も無視するような過激さになった。

一度だけ、小学校六年生の時。私と遊ぶこともままならなかったアオちゃんが、両親の目を盗んで、隣にある私の家にやってきたことがあった。すぐにアオちゃんの両親にバレてしまったけれど。

「蒼乃を唆すような友達なんていらないわ！　もう蒼乃に関わらないで！」

アオちゃんは目の前で大泣き。

「お母さん、ごめんなさい！　もうしないからやめて！　貴羽を怒らないで！　ごめんなさい！　貴羽は悪くないの！　お母さん！」

私もすごく痛い思いをしたことを覚えている。けれどアオちゃんは未だ、あの日のことを気にしている。きっとアオちゃんの方が傷ついた出来事のはずだ。だからアオちゃんには忘れたと言っている。

それから中学に入るまではアオちゃんとは会っていない。何度か学校へ行くときにすれ違うが、声をかけようとしても、アオちゃんが避けるのだ。

そんな頃に、学校で噂を聞いた。アオちゃんは有名な大学附属の私立中学に通うのだ、と。そこにいけば、アオちゃんとまた遊べるかもしれない。アオちゃんに釣り合う私になれば。アオちゃんが必要としてくれる人物になれば。幸い、私の両親は放任主義ではあるが結構な額の給料をもらっているし、私の進学先は自由にしていいと最近メールがきた。

――貴羽。高校くらいは出れば何をしてもいい。中学も行きたいところがあれば好きにしなさい。父。

私にはアオちゃん以外の友達はいない。趣味もなければ、取り柄もない。アオちゃんの友達であること。それだけが私の誇れるところだ。

アオちゃんは人気者だ。容姿端麗、成績優秀、品行方正。運動も得意だ。

そんなアオちゃんのそばにいたい。そんな一心で勉強した。