第56話 パルム3

 パルムに戻って、ヨシヒコの食堂の準備が順調にに進んでいるのを確認。

 次は温室を作る相談を商館主とする。商館主から提案がある。

 温室を作って珍しい植物を育てるのは、観光資源としては面白いと思うが、そこでバナナを作っても、どれ程作れるのかが未知数であるし、品質的にも満足できるレベルの物が作れるのかわからない。

 試験的に売り出しているチョコレートなどの菓子、味噌や醤油などの調味料も貴族や金持ちを中心に高評価を受けている。


 以前に商隊をいくつか組織して大陸中を回らせて各地の珍しい品物を集めて売るような組織を作りたいと話した事があったけど、あの話を発展させたい。

 信用のできる元冒険者を雇い、マジックバッグを持たせて、アサムまでの香辛料ルート、サルサから北の海岸で作らせている昆布や海苔を仕入れるルート、妖精大陸の3ルートを定期的に回らせたらどうかと言う。

 3チームの商隊で始め、扱う量が増えたら6チームに増やせば良い。

 場合によればハポンやシンまで行くルートを開発しても良いし、海岸沿いに航行する船を利用すれば多少日数はかかるが、遭難のリスクも大幅に減る。

 マジックバッグを使えば商品も傷まないし、運送費用も人間数人分だけだから恐ろしく安くなる。

 嵩張らない高級品と珍しい食材などを主体に扱う特殊な運送業を始めたいと言うのだ。

 それらはパルムの町に人を集めるだろう。

人が集まれば金が集まり町は発展する。

 バッグに空きがあれば他の商人に頼まれた物を運んでも良い。

 それに少人数の冒険者で構成されたパーティなら、盗賊に襲われるリスクもほとんどないだろう。

 こちらからも売れる商品があれば、持ってゆくことにより往路も無駄にならない。

 大きな商隊を組織するより全然低コストでローリスクである。


 なかなか面白い。商会の職員を隊長にすれば向こうの商人との交渉もできるだろう。

 共同出資の運送会社を設立する事にした。

元冒険者であればそれなりの魔力量はあるはずだ。一回の旅で運べる量が多い程良いのは間違いない。

 お泊まり小屋の方は多少ストックがあるので、人に戻った日は1つか2つのリュックタイプのバッグを作る事にした。

 基本船旅であり、町や村を繋げは野営は不要であるから、お泊まり小屋は要らないし、その分荷物を沢山運びたい。

 非常時用に結界を張る道具とワンタッチテント、毛布、携帯食料などがあれば充分だろう。 

 多少距離が伸びてもリスクの少ない安全なルートを選んだ方が結果的に儲けは大きくなる。

 町が大きくなって客が増えたら、北の海岸から新鮮な海鮮も運ぶと良いと助言しておいた。


 パルムでのバナナの生産はやめになったが、観光用の温室は作る事になったので、ジップは温室の設計に夢中になっている。

 ヨシヒコが、前の世界で大きな温室を見た事があるとかで、その話を聞いたりしながら設計図を描いているのだ。

 ガラスはこの世界にもあるし、私だって作れる。鉄にミスリルを少し混ぜれば錆びにくい金属も作れる。

 ヨシヒコからはメニューを決めたので試食に来てくれと頼まれているし、なかなか忙しい。

 

 ジップさんとクロエさんのお陰で、店は確保できたし、道具や食器も揃った。

 当座の調味料もジップさんに分けて貰ったし、サルサ村から運んできた米などもある。

 いきなり店を持つ事になって改めて色々と考える事になった。

 不可能だと思っていたので、俺が店を持つならとかは今まで考えた事がない。

 前の世界の漫画で見た闇夜食堂なんか格好良い。

 渋い訳ありのオジサン料理人が大概のものはできるよとか言いながら料理を出して、そこに色々なドラマがからむ。

 だがこれは却下。俺はどっちかというと童顔だし、好きなものを注文して良いと言っても

ここの客は日本のメニューなんて知らない。

 好きな物を作るなんて格好良い事を言って、知らない料理を頼まれたら大恥をかく。

 それに俺は格好良くタバコを吸えない。まぁ、喫煙の習慣自体この世界には無いのであるが。


 つらつら考えるに、この街はなんだかんだ言って、ダンジョンと温泉で栄えている町なのである。

 従って、食堂を利用する者の多くは冒険者達なのだ。

 味もそうだが、満足感の得られない軽い物では話にならない。

 湯治客にも傷を治すために来ている冒険者が少なからずいる。

 そして俺の出した結論は『丼もの』と『うどん』。

 サイドメニューとして日本酒、味噌汁、漬物、握り飯を出せば量なども自分で食べたい量に調整できるだろう。

 天ぷらなども使いまわせるし、どんぶりはどちらにも使える。

 カップや汁椀、皿などは注文済みだがメニューが決まってなかったので、本格的な食器の注文はこれからだ。

 数は多くなるが、同じ物を作ってもらうなら問題無い。

 最終的には箸を使ってもらいたいが、初めはそれ用のフォークを作る必要があるだろう。

 値段も特別安くする必要は無い。気持ち高めでも他で食べられない料理なら構わないのだ。

 冒険者は町で食べる食事には金をかける者が多い。旅の途中やダンジョン内では干し肉で何日も過ごす事が少なくないからだ。

 婆ちゃんの手伝いでうどんは何度も打ったことがある。

 讃岐の有名うどん店のようにはいかないが、まぁまぁ美味いうどんを打つ自信はあるのだ。

 ハポンの調味料の味を広めるにも最適なメニューだろう。

 いずれにせよ、試作を作ってみて、ジップさん達に味見をしてもらおう。


 今日はヨシヒコの店のメニューの試食に行く。

 基本は飯の上に具材を載せた丼とうどんだそうだ。 

 定番のカツ丼、親子丼、牛丼、焼肉丼、天丼、中華丼、カレー丼など。うどんは天ぷら、きつね、たぬき、肉うどん、カレーうどんだそうだ。

 作る種類も多くなく、丼とうどんで共有する具材も多い。これなら1人で作るにせよバッグをうまく使えば問題ないだろう。

 味もまぁまぁ。ジップも合格点を出していた。

 食器を追加注文して、町の孤児院に配膳と雑用の仕事をする子供の求人を出す。

 ダンジョンの町はどうしても孤児が多くなり、皆で仕事を与えて自立を助けないと餓死者がでたりもするのだ。

 子供でもできる仕事は子供に与えるのは、皆の共通認識になっている。

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