第22話 シン
新興の勢いのある国とは言っても、若い国には前王朝の残党とかも居たりして治安が悪かったりする。
流石に子供と小犬のご一行様を盗賊団が襲ったりはしないが、人攫いや枕探しなど危険はいっぱい。
流石にハポンの将軍家の威光もここまで届かず。手形も役に立たない。
意外に役立ったのが結界石。野営でも宿に泊まる時でもこれがあれば安心。
前王朝から冒険者ギルドは進出してきており、内乱の一番酷い時以外は何とか機能していたらしい。
パルムで預けたお金の引き出しなどはまだできなかったけど、冒険者カードは有効。依頼をこなしながら旅を続ける。
ハポンに飛ばされて以来、魔物相手だけでなく、対人の実戦もほとんどしていなかったので肩慣らしと、新しく身につけた技術の試用というのもある。
海沿いのシンハイという町で、「蜃」という貝の魔物の討伐依頼を受けた。海に潜んで口から霧を出して人を迷わせ食べてしまうという。
蜃気楼と言う言葉の元になった魔物らしい。
硬い貝の中に閉じこもると槍や剣、魔法なども通じず、この辺りの冒険者では討伐できないらしい。
かといってこの程度では国の軍隊も出動してくれず、漁師も漁に出られず困っているらしい。
私とジップは海に向かう。海で蜃と待ち合わせをしている訳ではないので、日除けのテントをはって寝台を置く。そこに2人で転がってお昼寝三昧。
そうして3日目、辺りが変な霧につつまれ始める。海の方から大きな魔力が感じられるようになり、ちょっとした小屋程もある巨大な二枚貝が現れる。
サンダーストライク。お試しで私が雷を落とす。海水で濡れているから効くかと思ったが、ほとんど効果は無いようだ。残念。
ジップが短槍で龍月を使う。硬そうな貝殻を突き破って刺さるが切り裂くことはできない。 だが、蜃は怒ったらしく口を開けて高圧の水流を飛ばす。
ウォーターカッターとでも言うべき攻撃だ。空気を飛ばして小さな真空を作って切り裂くウインドカッターと違って質量のあるこれの威力は桁違いだ。
斜め後ろへのパックステップでそれをかわしたジップが短槍の石突を持って投げる。回転しながら高速で飛んだ槍はつっかい棒となり、口を閉じられなくなった貝に私はファイアランスを連射する。
そのまま砂に潜ろうとするので、土魔法で砂を固くして更にファイアランスを連射。
何やら良い匂いがしてきて貝の討伐終了。
魔石を取ろうとしたら、大きな真珠が沢山出てきた。ラッキー。
町に戻って討伐報告をして、皆で酒と醤油を持って海岸に戻る。その日は町をあげての焼き貝パーティとなった。
シンの国の料理、パンみたいなマントゥやチャオズ、シューマイなどもとても気に入ったのであるが、マジックバッグもほとんどいっぱい。特別な材料は使っていなかったので、レシピを調べて、作り方を習うだけにして、調理済みの物は、少しだけ買って私のバッグに収納したのであった。
まだ2つ使っていないバッグがあるが、流石に貴重なマジックバッグを2つも食料保存庫用には使えない。何かの時換金しなければならないかもしれないし、その時人に分けるとか、売るにしても、状況によっては全て食べられないだろう。その時中身を廃棄したりするのは耐えられない。
その後も毒を吐く大蛇や、何となくミノタウロスみたいなやつとかを討伐しつつペクンに到着。
ここには大学という国営の学校があって、国中外の英才、秀才が集まって様々な研究をしていると言う。
新王朝とは言ってもこの地の文明は様々な王朝の勃興を繰り返しながら六千年も続いているのだ。
大学は学費さえ払えば、短期長期の外国の留学生も受け入れているらしいので、何を調べるにしても人脈作りから始めなければならない私達と言うか、ジップはここに入る事にした。
年齢制限も無い。
現にハポンからは佐伯真名と言う12歳の天才少年が留学しているらしいと言うのは楊生家の情報。一応将軍家からの紹介状はもらってきている。
半年位はかかるだろうと思い、大学の近くに家を借りる。この国には公衆浴場は無いらしく、風呂好きの私達は家を借りなければ風呂に入れなかったのだ。
それなりの大きさの家を借りたら、普通はは、使用人を雇わなければならないのがこの国の流儀だそうで、大家の紹介で男性の使用人と女性の使用人の2人を雇った。
皆が困っていた魔物を結構討伐したのでお金は結構持っている。蜃討伐で手に入れた真珠も手をつけてないので、金銭的にはかなり余裕がある。
使用人の2人には、私は呪いにかけられて犬にされているが、時々人に戻るのでびっくりしない事、この事は決して他言無用と申し付けた。
噂が広まり、攫われて見せ物小屋や特殊な趣味の金持ちにでも売られたらたまらない。
まぁ、よっぽどレベルの高い冒険者でもなければ私を拐うような真似は出来ないだろうけど。
ただ、金持ちの子供が主人で使用人2人と住んでいるらしいという噂は拡まったらしく、盗人や強盗が訪ねて来るようになった。
当然捕まえて、高額の身代金を払った者は釈放。払えなかった者は反省させるために、切り刻んだ後、ハイヒールで治すのを数回繰り返したあと役人に引き渡した。
そのうちに夜の訪問者は来なくなった。
なんとなく寂しくなったので使用人に、多額の金銭が家の中に放置してあるという噂を流させたところ、何組かの強盗団が来た。
それを捕まえてしまうと、今度こそ鍵を掛けずに家の扉を開けていても誰も来なくなった。
その頃から何故か家の周りの治安も良くなり、チンピラや肩をいからせて歩く兄さん方も見かけなくなった。
町を歩いているといかにもその筋のお兄さん達がジップに頭を下げて愛想笑いするのも不思議である。
住む所も決まり、生活も落ち着いたので、佐伯真名君に会いにゆく事になった。
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