第12話 勇者2
私の名前はベルゼ。ブランカ王国の勇者パーティで魔法使いをやっている。
我々のパーティは何十年に一度出るくらいの才能持ちばかり集まっているそうで、確かに勇者のアモンを初め、弓使いのモレクも強い。賢者のフルーレですらそこら辺の剣士では、束になっても敵わない。
私達は子供の頃、勇者の星の元に生まれたとかで、ブランカ王国に集められ、勇者パーティとして育てられた。確かに皆、自分達もびっくりするようなスピードで力をつけ、国を出る15歳の頃には、私達に敵う者はいなくなった。
私がアモンの事を意識し始めたのはいつ頃からだろうか?13の時初めての月のものが来た頃かもしれない。
それまではパーティの一員として接していて、特に男だとか意識した事は無かったのだが、何となくアモンの事が気になるようになった。 そして訓練中にたまたま私が転んで太腿があらわになった時アモンがそれを見ていて顔を背けたのだ。
それ以来、さりげなく、膨らんできた胸の一部を見せたり、偶然を装ってアモンに触れるようになった。
過酷な訓練のストレスか、他の2人も面白がって同じような事を始めて、目を背けたり、赤くなったりするアモンの反応を楽しんでいた。
そして、ある日私の着替え中に偶然部屋にはいった入って来たアモンを恥ずかしさのあまり怒って必要以上に責め立てたのだ。
私の言葉に小さくなって謝るアモンを見ていたら、止められなくなった。しつこくアモンを責め立てていたら、突然、背骨を貫くような快感が私にやってきた。この場で乳を揉みしだきたくなるような、いままで知らなかった快感である。今思えばこの時私は女になったのだと思う。
それから数日、私の顔色を伺うようなアモンの様子を見るたびに私の気持ちは昂るのであった。
いけないと思いつつ、私はそれをやめられなかった。アモンに屈辱を与えて支配したい。普通の男女の恋愛ではないのはわかっているが、確かに私はアモンを愛していた。
同じような態度をとるモレクとフルーレと話した事があるが、彼女達も同じだった。私達は彼に惹きつけられる。アモンにそういう嗜好は無いようだが、大丈夫。私達3人で育てれば良い……
ジップと共に勇者のパレードを観る。大人になるちょっと前の男1人、女3人のパーティだ。
流石に国の公認勇者だけあってオリハルコン製の武器と防具を装備している。
「クロエ、勇者はかっこいいねー。ボクも強くなっていつか勇者になるんだ。クロエとボクのパーティで魔王を倒そうね」
ジップの魔力なら閉じた魔導路を通す方法が見つけられれば、大人になった時、勇者以上の力を手に入れる事とできるだろう。更に私の魔法が解けて魔法を自由自在に使えれば、2人で弱い魔王なら倒せるかもしれない。
魔王を倒せば勇者だ。世界で最初の魔女の勇者。まわりはさぞかし扱いに困るだろう。
そんな事を考えているとなんだか未来が明るい気がして、楽しくなった。子供は良い。彼らの前には無限の未来がある。
祭りを楽しんだ後、トゥルムを出て少し北に向かい、シャンベルという町からからアストラ山脈へ、それを超えた先が目的地パルムだ。
シャンベルとパルムの間に走ってるアストラ街道は歴史が古い昔からある街道だが、基本山道で小さな峠をいくつも越えなければならない。通過するのに7日位かかるとみておいた方が安全だ。
途中に小さな村がいくつかあって泊まることも可能だし、旅人の為に無人小屋も何ヶ所か建てられているのは助かる。
シャンベルで干し肉と干した果物、堅パンを数日分買って山越えの準備をする。嵐とかで山小屋に数日閉じ込められる可能性もある。荷物は増えるが仕方ない。
アストラ街道に入って4日目、嵐とまでは行かないが、酷い雨に遭遇。運の良いことに小さな村が近くにあったためにそこに避難して宿をとった。
体の小さいジップと私は、気温の下がりやすい雨の山での野宿はできれば避けたい。初夏とはいえ、風邪をひいたり、体調を崩したりしやすいのだ。
高度も高いこの辺りだと、犬の私はともかく、魔力で力が強くなっているとは言え、子供のジップは低体温で死ぬことだってないとは言えない。
雨はやまず、宿の部屋で私とジップは魔導路に魔力を流すトレーニングをしている。
人間には頭の天辺から背骨の1番下、尻の穴の少し上の所まで太い魔力の流れる道がある。具体的な肉体の器官がある訳でない。
それは生きている肉体と共にある精神体、アストラルボディの血管のような物ではないかと私は考える。
肉体と精神体は表裏一体。どちらが壊れても人は死ぬ。だが、修練により魔力が増え、アストラルボディが肉体を遥かに凌駕するとかつての私のように肉の限界を超え、アストラルボディが肉体を形成するようになり、不老不死に極めて近いものとなる。
勇者のように肉体の能力も常人を遥かに超えていると、魔力が膨大であってもこの恩恵を受ける事はできない。
もちろん、そこを更に超えるなら勇者も不老不死が可能だろう。
で、人は背骨と共にある太い魔導路に8箇所の魔力節があり、そこに順番に魔力を循環させることにより魔力の流れが良くなる。ジップの場合、戦いの中で魔力を外に放出する事が命を守る事にもなるので、魔力を滞りなく流せることはとても大事なこととなる。
私は犬の体の時は何故か魔力節が5箇所しか無くなる。魔力を使うのに、流れが人の体の時と微妙に違うため、2人で訓練中と言う訳だ。
ジップには、私がやり方を教えたのだが、剣の修行に同じようなものがあるらしく、すぐにやり方を理解したのだった。
次の日も次の日も雨。結局ここで4日間過ごすことになった。修行ばかりをしていたわけではない。
宿の廊下てジップが中に布切れを丸めて入れた小さな革袋を投げると、私は何故かそれを追いかけてしまう。咥えて戻って来て頭を撫でられると嬉しくて思わず尻尾を振ってしまう。
顎の下から胸をコチョコチョされると、つい裏返ってお腹を見せてしまう。ある程度は肉体が精神を支配すると言うことか……
あっ、また投げた。目で追う間も無く体が反応して袋を追った。
やっと雨があがり、私達は出発した。そして3日後、目的地のパルムに着いたのであった。
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