第4話 デスペナ!!
……。いやいやいや、こんなことでショック受けてる場合じゃねえ。
「あからさまにチャンスじゃん! こんなの、ようっ!!」
「う、が……」
「クリィィィィン、ヒットぉぉおおぉおっ!!」
躊躇いもくそもないままに俺は右足のつま先でザッコザッコウルフの鳩尾部分を蹴り上げた。
すると嗚咽を漏らすだけだったザッコザッコウルフは、口から俺のパンツなんかよりも強烈なにおいを放つ汚物を吐き出した。
「きゃんっ!」
可愛らしく鳴いたって遅い。
残念ながらこっちはダンジョンってゲームみたいな場所に入った時からモンスターを殺すくらい覚悟してんだよ!
最初の戦闘で尻込みすんのなんて正当は主人公か可愛いヒロインだけで、俺は元々引きこもりのゲーム馬鹿でファンタジー耐性強者なんだよ!
いきなり異世界転生させられても喜ぶだけの人間性を舐めんな!
「――く、ぅん」
「はぁっはぁ……。やったか?」
案内人と違って攻撃力がない俺は攻撃してくる気配のないザッコザッコウルフに馬乗りになるとひたすら殴って殴って殴って、大体3分くらいでようやく一体を討伐……したっぽい。
見ごたえのない戦闘過ぎてダイジェスト待ったなしだっただろうけど、まぁ、勝ったからよし。
『――レベルが2に上がりました。職業スキル【超振動伝達】を獲得しました。職業スキル【壁特攻(パッシブ)】を獲得しました。職業スキル【筋トレ反映(パッシブ)】を獲得しました。スキル【拳闘術】を獲得しました』
おお! たった1匹殺しただけでレベルアップは嬉しいな!
獲得スキルはちょい地味だけど、十分使える。てか、スキルの効力が頭にすっと入ってくるの便利だな。
「っと、ま、なんにせよ、あの女をぎゃふんと言わせる一歩を踏み出したってわけだから前向きに行きますか。……それに、今のでこの階層の攻略の糸口は見えたし。って、これがドロップ品か?」
視線を落とすとザッコザッコウルフの身体がすうっと消えていった。
そしてそれと同時に俺の目の前にはまたホログラムが浮かび上がった。
『獲得ドロップ品:ザッコザッコウルフの牙(F級)……これを持っているとザッコザッコウルフが襲ってきやすくなる』
多分だけどこのF級ってのが高ければ高いほど売却金額が高くなるんだと思う。
だからあんまりドロップ品に期待はしないし、喜んだりもしない、けど……。
「この説明にある効果だけは、気にしないとまず――」
「「わおおおおおおおおおおおおおおおおんっ!!」」
急いで辺りを見回すと、岩陰からザッコザッコウルフがもうわんさかわんさか湧いてきやがった。
絶体絶命の大ピンチ。
ではあるんだけど、実は焦ってなかったりするんだよな。
というのも、さっきザッコザッコウルフを倒して新しく見れるようになった情報と、手に入れたスキル、それとあれの組み合わせがですね――。
「わうっ!」
「い゛っ!」
思考する暇もなく俺の首筋にザッコザッコウルフが噛み付いた。
強烈な痛みが襲い、意識が遠のく。
これがダンジョンでの死。
めっちゃ痛くて辛い。辛いけど……。実際の死にはならないって分かってりゃ、ゲームのそれって知ってたらわざと死ぬってことにためらいはねえ!
『デスペナルティでレベルが1になりました。状態異常の悪臭が強化されました。復帰まで残り10秒、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0』
「……ふ、ふふ。待ってました待ってました。さぁて、お前らの弱点をたっぷり堪能させてやる」
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