第5話 臭い!!

死んだときと同じ場所でのリスタート。


 そしてザッコザッコウルフたちも俺をリスキルしようとしていたのか、その場所から動いてはいない。


 俺の身体を食おうとしないあたり、こいつらはこいつらでレベルアップとかの目的でもあんのかな?


「わうっ!」

「こいっ!」


 一斉に襲いかかってくるザッコザッコウルフ。


 ズボン、さらにはパンツにまで手をかけて一気にそれを下ろす……俺。


「わ、っう……。お、えっ。おろろぉぉろおおろぉろ……。あ、があっ!」


種族:ザッコザッコウルフ

レベル2

HP:7/10

攻撃力:5

防御力:2

職業:なし

物理系スキル:なし

魔法スキル:なし

持ち物:なし

状態異常:頭痛、吐き気(強)

弱点:超敏感嗅覚(匂いで状態異常。場合によってはダメージ)


「あーっはっはっはっはっ!! ザッコザッコウルフ攻略したなり! あーっはっはっはっはっはっ! あーっ……はぁ。俺でも分かるレベルで臭くてなってんですけど」


 弱点を突いた俺、もとい俺のパンツ。

 デスペナルティのお蔭で生ものの匂いとつーんと酸っぱい匂いは強化。


 手前にいたザッコザッコウルフたちは口から涎だのなんだのを吐き散らしながら毒を受けたようにじわじわダメージが入っていく。


 後ろにいたザッコザッコウルフはこの異常な光景との意を感じて後ずさっていく。


 まぁ、そりゃそうだよな。

 人間だって臭くて下半身丸出しでパンツ片手に高らかに笑ってるやつみたら逃げるもの。


 よかったぁ、これ誰にも見られてなくて。



 ――ジュル。



「ん? なに今の――」

「があああっ!!」

「ってこのままじゃ逃げられちゃうまずい! まずいまずいまずいまず、くないんだよなあっ!!」


 頭の中で味噌汁を吸うような音が流れたかと思うと、ザッコザッコウルフの一頭が発狂。

 振り返って逃走を図る。


 しかし、俺は慌てずにパンツを頭上へ。


「喰らえ、『超振動伝達』」


 ライブさながらパンツをタオルに見立ててながらそれを握りしめた手を思い切り振り回した。


 風に乗る匂い。

 

 それは通常そこまで遠い所まで届かせることはできない。


 だが! 俺のスキルは空気を震わせ、波のように匂いを運ぶことができるのだ!


「きゃおんっ!!」

「あ、があああっ!!」

「ぼえっ!!」


 ついにばったばったと俺のパンツの匂いで倒れ始めるザッコザッコウルフ。

 

 地獄絵図。

 これが本当の地獄絵図。


『レベルが3に上がりました。獲得ドロップ品:ザッコザッコウルフの牙×10。同種討伐数が一定に達したためボーナス個体(強個体)が出現……しましたが、逃走開始。あなた臭すぎます』


 ……。

 おいアナウンス! お前までなんで臭い批判済んのやめて!


 こっちだってさっさと風呂入ってこのステテコパンツを出すとシュートしたいのよ!

 でもこれがつええって分かったら、ザッコザッコウルフ一発で処理できるくらいまで利用するしかないのよ!


「逃げてる強個体? もこれで追い回すしかないのよ! ゲーマーってのはなぁ、時に見栄えの悪い装備、やり方でも効率を重視する時があんのさ! ドロップ品取り出して……。うおおおおっ!! 出てこいザッコザッコウルフ! 全員臭い殺してやるからよ! あーっ! くっさ!」


 パンツを右手に、ザッコザッコウルフの牙を左手に変態ダッシュ。


 どうやら毎日のランニングはこの時のためにあったらしい。


 さて、準備は整った。世にも珍しい丸出しコツコツレベル上げで主目的、壁叩きの強化を始めますか!

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