第112話 降り立つデス

「場所はここに生息しているボス魔獣のダークトレンドよ」


 エヴァネス様が地図を指差す。


「ここって…………ディアリア街の西ですね。わかりました。すぐに行ってきます」


「燃やすと素材がダメになるからね~?」


「はい!」


 すぐにリビングからテラスに出て、レイに飛行モードにしてもらい孤児院に寄った。


 相変わらず子供達で溢れていて、みんなそれぞれ仲良く遊んでいたり、図書館で勉強している子もいれば、大きな木の下の陰で本を読んでいる子もいる。


 そんな中でも一番子供達が集まっているのが、広場でポチと遊んでいるグループだ。


「「「「領主様だぁああああ~!」」」」


「ワンワン!」


 ポチと子供達が雪崩れてきてすぐに囲まれた。


「ははは……今日はポチに用事があってきたんだ。これから少し外に出掛けるんだけど、ポチも一緒に来るか? それともここで遊んでる?」


 実は以前ポチを放置して狩場に行ったら、とても寂しがっていた。だから念のため聞きにきた。


「ワフッ」


「そうか。ポチがそうしたいならそれでいい」


 俺は手を伸ばしてポチをひと撫でしてあげた。


 周りの子供達が不思議そうに俺達を見上げる。


「領主様~?」


「ん? ああ。ポチはしばらくここを離れることになるからな。それまでみんなと一緒に遊んでいたいってさ。みんな。うちのポチは好きかい?」


「「「「大好き~!」」」」


「うんうん。ポチもきっとみんなが大好きなんだ。だからみんな仲良くね?」


「「「「は~い!」」」」


「じゃあ、みんなまたね~」


 囲まれたまま高く飛び上がるとレイが飛行モードになってくれて、そのまま空を飛んでクロイサ街を離れる。


 レイのおかげで移動が格段によくなって助かるな。やっぱり空を飛べるってかなり大きい。リサもポンタで空の移動ができるから、屋敷から孤児院に行くまでポンタで飛んでいくし、うちのソフィアもよく一緒に乗っている。


 クロイサ街の北側の岩山から景色が少しずつ変わり、どんどん緑が消えていく。


 やがて岩山から木々が見え始めるが、葉っぱが一つもない木ばかりだ。


 枯れ木の森の中を進んでいくと、今度は黒い枯れ木達が並ぶ。


 そんな中、一際大きい黒い枯れ木の樹木を見つけてそちらに降り立った。


「ま、まずいぞ!」


 男の声が鳴り響く。


 どうやらダークトレンドと先に戦っていたパーティーがいたようだ。


 俺が降り立つと同時に周りのブラックトレンド達が俺に向かって枝を伸ばしてきた。


 すぐにブラックサイズを取り出して、全て薙ぎ払う。


「う、うわああああああ!」


「どうしてこんなところにデスが!?」


「まずいぞ! このままじゃ全滅するぞ!」


「ひいいいいいい!」


 四人が俺を見るとパニック状態になる。


 そんな隙を見逃すはずもなく、ダークトレンドの太い根と枝が彼らを襲う。


 最近飛行モードで大活躍中のレイだが、実はレイの本気は飛行モードではない。俺の体の動きに合わせて空気を叩く・・・・・と今までとは比べ物にならない爆発的な速度が実現できる。


 これは俺がスキル【シャドウウォーカー】の影糸に非常に似た効果だが、影糸は【シャドウウォーカー】でしか使えない上に、事前に設置しておかなければならないデメリットがあるが、レイの補助はそんなデメリットが一切なく、俺の意志を汲み取ってくれて手助けしてくれる。


 彼らを襲う枝や根を全て切り払う。


「「「「ひいいいいいい!」」」」


 よりパニックになった四人は、一目散に逃げて行った。


 ……何だか昔もこんなやり取りあった気がするな。孤児院の子供達はレイを見てもなんとも思わないのにな~。


 さて、そんな間も休まず攻撃を繰り返しているダークトレンドだが、レイの自動迎撃によって全て薙ぎ払われている。レイの感覚も俺に繋がっているので手に取るようにダークトレンドの攻撃軌道が読めてしまうな。


 エヴァネス様から燃やすなと言われているが――――そもそも俺に燃やす術などないからな!


 スキル【エクスキューショナー】のままダークトレンドの懐に飛び込む。


「――――技【サイズスイング】!」


 一回転するだけで枝が豆腐のように斬れて地面にバタバタと落ちていく。


 再生能力も非常に高いと有名なトレンド系列魔獣。ボス級ともなると、枝や根くらいなら瞬時に回復するんだな。


 なら――――核を壊すのみ!


 樹木の中央におぞましい顔があり、目のように二つくぼんだ場所。それに向かって切り払う。


「――――技【サイズスイング】!」


 俺の一閃がダークトレンドの両目を通り過ぎると、動きがピタリと止まった。


 そして、そのまま上部と下部が半分に分かれ、切られた上部が地面に倒れて周囲に爆音を響かせた。


 厄介な魔獣だけど、燃やせばそこまで難しいボス魔獣でもないし、核の位置とそれを斬れるスキルやらステータスがあれば、こうも簡単に倒せる魔獣だ。


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ダークトレンドを倒しました。

経験値200000を獲得しました。

称号【転生者】により獲得経験値が1/10に下がります。

レベル差によるボーナスにより、追加経験値600000を獲得しました。

称号【転生者】により獲得経験値が1/10に下がります。

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称号【魔王と呼ばれていた者】

(11/100)

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【スキル】

農耕の心得(-)

草刈り鎌達人(-)

大鎌の心得(-)

大鎌展開(-)

大鎌の呪い(-)

◆エクスキューショナー(947281/1000000)

◇シャドウウォーカー(1000000/1000000)

◇サイズマリオネット(1000000/1000000)

威圧(-)

限界突破・王(-)

ダークネス(1720/30000)

魔王覚醒・始(0/100)

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レベルが29から30に上昇しました。

ステータスポイントを3獲得しました。

称号【転生者】により獲得ステータスポイントが10倍になります。

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【職 能】グリムリーパー

【レベル】30

【 力 】50

【俊 敏】300+200

【器 用】100+100

【頑 丈】50

【魔 力】1+100

【抵 抗】100+200

【 運 】246+200

【SPスキルポイント】30

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 お~帝国に行く前にレベルが30になった!


 そろそろ上がるかなと思ったらちゃんと上がってくれて良かった。ディアブロ戦から毎日一人で王都地下ダンジョンに籠っていた甲斐があったな。


 経験値効率はあまりよくないけど、周りに狩りを邪魔する人がいないから好きなように戦えてたし、レイが貰ってからはより高速で狩れるようになったしな。


 それと二度目の限界突破のおかげで、素の俊敏が300まで上げられるようになった。これは非常に大きくて、装備がなくてもスピードだけなら王国でも指折りの速度となった。


 頑丈を上げ過ぎるとせっかくの【死神覚醒】が使いにくくなるので50で止めて……といってもこれでもすごく高いんだけどな。ゲーム時代なら想像もできなかった高ステータスだ。残りは程よくバランスよく伸ばしつつ、リーパー系統の火力にも直結する運を上げ切りたい。今回で276だから、次のレベルアップで300まで上げられそうだ。


 落ちたダークトレンドを素材は全てマジックバッグに自動格納されたので、またレイに飛んでもらいすぐにクロイサ街に向かう。


 ディアリア街はルデラガン伯爵様の領となって、今では落ち着きも取り戻しているが、以前のような活気はもうないみたいで、移住する人もちらほらいるとかなんとか。


 一年前くらいまではディオニール子爵領だったから移住も叶わなかったけど、伯爵領内なら移住が簡単になって、過疎地になってしまったがそれが彼らには幸せなことだったかもな。


 あのときの中心にいたシャーロットさんは、今でもうちの屋敷で一緒に暮らしている。あまり一緒に時間を過ごしたりはしないけど、毎日一緒に学園まで行ってるし、そのおかげでまた馬車での移動にはなったけど、お嬢様もディアナも嫌な顔をしないし、三人は普段からとても仲がいい。


 学園にいるときはディアナが常にリサの手を引っ張っていて、今でも賑わう輪に入りたがらないリサもディアナか俺の隣ならジッと参加してたりする。


 アルの奴は最近シャーロットさんに毎日会えるから腑抜けてしまって、半年くらい前にディアナにボコボコにされた。


 入学した時点ではディアナと同レベルくらいだったけど、ディアナの方が遥かに強くなってるから、今ではアルですら手も足も出ない。


 それにショックを覚えたらしく、アルもまた昔のような王子の顔に戻って、日々頑張っている。それを応援しているシャーロットさんもとても楽しそう。


 空の旅が終わり、エヴァネス様にダークトレンドの素材を全て渡し、さらにいくつかの貴重な材料をグッドマル商会を通して俺のポケットマネーで全て仕入れさせてもらった。




 それから二週間が経過し、俺達はついに帝国に行く日を迎えた。

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