第87話 新パーティー
数日後。
俺が思っていたよりも噂が広まる速度は凄まじく、王様、王妃様、冒険者達のおかげで、クロイサ町に高級温泉旅館と大浴場が設立開店したことが王都中に広まっていた。
「ねえねえ、聞いた? 西にクロイサ町というところができて、温泉に入れるんですって!」
「私も聞きたわ~温泉は美容にとてもいいみたいだから温泉に入りたいわ~」
「でも旅館というところはとても高額みたいよ」
「お父様にねだってみたんだけど、中々聞いてもらえなかったわ……はあ……」
ははは……予定通りというか、男性より女性に受けが良さそうと思ったらその通りになったな。
その日の授業が終わり、俺達はエヴァネス様の屋敷にやってきた。
「あ。ディアナ。一つお願いがあるんだけど、いいか?」
「私? どうしたの?」
「ディアナの屋敷の地下にあるダンジョンに入りたいんだ。ダンジョンの前に転移陣を設置させてはもらえないか?」
「そっか。いろいろ魔石を使う設備も増えたもんね」
「ああ。使用料なら払うから使わせてもらえないか?」
「使用料だなんて、私も温泉を使わせてもらってるし、気にしないで。今からくる?」
「そうだな。遠くないし、今から行くか」
「じゃあ、私達は先にクロイサ町に行ってるわよ」
お嬢様達には一足先にクロイサ町に行ってもらい、俺はディアナと一緒にエヴァネス様に事情を説明した。
相変わらずエヴァネス様が怖いようで、ディアナは俺にピッタリくっついて、少し後ろに隠れた。
何だかリサみたいだ。
「王都になら一か所作れるし、ダンジョンの入口前も行けるわね」
「ではさっそく行きます!」
ディアナと一緒にエヴァネス様の屋敷を出て、ディアナの屋敷に向かう。
「まだエヴァさんが怖いか?」
「と、当然でしょう……」
「そっか……そんな怖い人なんだな。俺、ストーリーやってなくて良かった~」
「え? やってなくて良かったの?」
「おう。だってエヴァさんこと、もし怖がっていたら、初めて会ったときにたぶん斬りつけてるから」
「あ……それ……死亡フラグだね」
「そそ」
そういやディアナと二人で歩くのも久しぶりだな。最近クロイサ町はバタバタしてるし、時間ができたらみんなで狩りに行ってるし。
「ディアナ。ここで待っていてくれ」
「ん?」
「俺一人で行ってくるよ。帰って出てを繰り返すといろいろ誤解されるかもしれないし」
「そういや……ベリルくんって、勝手に屋敷の中に入れてたもんね……」
ちょっと身を引くディアナ。
「へ、変なことはしないよ! あれは確認のためだし、魔石のためだったから」
「ふふっ。冗談だよ。ベリルくんが何かをやろうとしてたなら、もうやってるだろうし」
悪戯っぽく笑ったディアナを見送り、技【影移動】を使って彼女の屋敷に侵入し、ダンジョンの入口のところで短剣を差し込んで転移陣を作った。
それから再度ディアナと合流して、エヴァネス様の屋敷からクロイサ町へ飛んだ。
これならディアナに来てもらわなくても大丈夫だったかな。
クロイサ町に戻りみんなと合流、俺とディアナ、リサ、リンの四人はそのまま西の森の最深部に向かい、狩りを始めた。
森の最深部は通常森とは違う、強力な魔獣が現れる。
樹木の色も普通の木々の色ではなくて、黒色になってて非常に不気味。
そんな間から、全身が禍々しい色の全長十メートルくらいの大蛇が鋭い目を光らせてこちらを睨み付けながら、スルスルと木々の間をすり抜けて近付いてくる。
「ブラックマンバ出現~! 周りに敵影なし~!」
リンが木の上から周りを眺めながら声を上げた。
「私が先に出るよ~!」
ディアナが剣を持って走り出す。
「技発動! 【ブレイバーフォース】!」
彼女の体から白い光が美しいヴェールのように全身を覆い、動く度にキラキラした光が目立つ。
技の力によって驚異的に上昇した身体能力でディアナが一気に距離を詰めて、素早いはずのブラックマンバが反応すらできずに攻撃を成功させた。
「ギシャアアアアアア!」
「――――【アイシクルバルカン】!」
続けて離れていたリサが両手を前に出すと、手の前に魔法陣が展開され、無数の鋭い巨大氷が放たれて、ブラックマンバの全身に突き刺さった。
すかさず、木の上で周りを見張っていたリンが飛び込んで、空中を蹴り上げて一気に飛び、ブラックマンバの片目に雷を武器のように突き刺した。
非常に強力な魔獣のはずなのに、三人娘の連携によって一瞬で片付いた。
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ブラックマンバを倒しました。
経験値4000を獲得しました。
称号【転生者】により獲得経験値が1/10に下がります。
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経験値量はエンブラムダンジョンの二層で出現するミノタウロスと同等である。それくらいダンジョンで出現する魔獣は強いし経験値量も多い。
それでもブラックマンバでも十分に強くて、このままクロイサ町に現れたらかなり大きな被害を被ることになる。
やはりレベル上げはこちらよりダンジョンが手っ取り早いが、外の魔獣は素材が手に入るのでこちらの方が得るものが大きいんだよな。
「ご主人様~! もう倒したよ~」
「ははは……相変わらずみんないい感じだな」
「リサ様~」
ボーっと立っていたリサに向かってリンがハイテンションで手を上げると、リサは無表情のまま両手を小さく上げる。
それにリンが「いえ~い!」とテンション高くハイタッチをすると、リサが無表情のまま「いえい」とローテンションで答える。
何度も見た光景だが、何だかこれも愛おしいんだよな。
今度はディアナとハイタッチをするリン。
ムードメーカーのリンのおかげでジメジメした森の中の戦いも楽しいものとなってるし、ディアナの表情も暗くない。
倒したブラックマンバは俺のマジックバッグに収納され、また次の魔獣を倒しに向かった。
王都地下ダンジョンにも行けるようになったし、そろそろがっつりレベリングのためにダンジョンを攻略して、みんなのレベルを底上げしてしまおうか。
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