全員での挑戦#1-3

作戦が決まったのは、タイムリミットの30分前だった。

隕石の衝突に影響を与えそうな項目は無数にあったが、上位互換のもの、例えば、地表の変化の中でも、隕石の落下地点に近いものと遠いものがある場合の近いもの、強く交絡していそうなもの、例えば、隕石の材質を変えることと重量を削るようなもの、を一旦削ったりした。

更に、現時点で解明されていないパラメータ、例えば隕石の現在地を変更するようなものについても削除した。

結果的に27回の試行で結果が出せるようになった。杉下は大急ぎで実験計画表に項目をあてはめてパラメータを決めた。これも、大きく変えた方が良いのか小さく変えた方が良いのかはよくわからないので適当に決めた。大学の実験の授業のやるような時はパラメータをどうしたらよいか見当がついているのが当たり前だが、人類が初めてぶち当たるような課題を実験で調べるときなんてこんなもんなんだろう。僕たちは幸い、一回実験してダメならやり直すチャンスを持っている。これについては、父さんの作ったシステムに感謝しかない。


決めたパラメータをキーボード壊れるんじゃないか、くらいのスピードで高岡がキーボードに打ち込む。キーボードを叩く音が鳴りやんだ時にはタイムリミットまであと5分のところだった。画面をにらんだまま高岡は固まっている。

「おい、大丈夫なのか?」

「ねえ、終わったの?」

「おーい、聞いてるのか?」


「あ”ーーー!うるさいなぁ。時間ギリギリまでミスが無いか確認してるんだから黙っててくれ!」


「わ、わかった。」


再び静寂が計算室を包んだ。そして、時計が深夜2時を指した時。

ディスプレイの表示が一斉に切り替わった。

世界地図の上に無数のステータスバーが表示されていて、それぞれが徐々に増えていっている。これは、前回うまく計算が進んだ時と同じ、世界中と繫がっているという計算のステータスなのだろう。


前回同様相当に時間がかかっている。前回は2人で画面を眺めていたが、今回は6人でディスプレイを囲みながら、計算が進んでいくのを見守る。


更に5回くらい新しい画面が表示されて、画面がやっと止まった。体感的には1時間以上待っていた気がする。画面の右下に、「Complete...」と表示されている。




「終わったの……。」

「そうなの?」

「うん、前回終わったときもこういう感じだった。」

「よし、じゃあ、人類消滅の確率計算をしよう。」

「そうだね。」


また高岡がキーボードを叩き始めた。またディスプレイに色々なウィンドウが表示されて、計算が進む。しばらく待つと、画面の隅に長い数字が表示された。


99.99999999997914%


「ん-、これは、いいのか?」

「どうだろう?」


9がいっぱい並んでいてよくわからない数字に一同何とも言えない顔になる。


「いや、でも、これって人類生存の確率が200倍くらいになってるってことだぞ。それでも宝くじ当たるより難しいけど。」

「そ、そうなのか。まずはこの数字をメモしておこう。」


一同口々に感想を述べながら、部屋を後にした。緊張と安堵と色々な気持ちがあって、全員が同時に水分補給とトイレに行こうと思っていたのを思い出したのだ。


それぞれがそれぞれのやりたいことをやって、みんなは疲れがどっと出てきて研究室のソファや寝袋で眠りについた。

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