全員での挑戦#1-2
「そうとなったら、実験計画だな。」木村が口を開いた。
「最小の試行で答えに辿り着くための作戦を考えよう。たくさん試行回数があるとはいえ、人間には寿命があるし、何より、これだけやって一生が終わるのは流石に嫌だから、早めにケリをつけたい。」
「実験計画法か……。なんか久しぶりに聞いたな。どういうやつだっけ?」
「例えばだけど、試してみたい項目が13個あってそれぞれを3つのパターンで実験したいとするだろ?そうすると、3の13乗だから……えーっと、100万回以上試験しないといけないように見えるだろ?つまり、毎日1回試験ができるわけだから、そのままだと実験をし終えるまでに4000年かかるわけ。だけど、交互作用って言って、それぞれに関係性が無い項目同士であれば、L27直行表ってやつに割り付けると27回の試験をするだけでよくなるわけだな。つまり、1カ月で終わる。それなら、なんとか頑張れば俺らだけでもできそうだろ?」
「そういうことか、流石、日々ちゃんと実験をやってるやつは違うな。俺、なんとなく言われたままにやったら結果が早めに出るくらいにしか思って無かったわ。」
「確かに。俺も。ていうか、1年の実験以来その単語を聞いたことが無かった気がする。」
「お前ら、頼むぜ……。で、まあ、あとは、どの項目を実験してみたいかだな。その顔は、なんか考えがあるんだろ?穂高。」
「あ、ああ。あると言えばある。父さんのノートを見る限り、やっていたのは、大きく分けて3つある。1つは、隕石自体に干渉して未来を変えようとする試み。次の1つは地球の状況を変える試み、例えば火山噴火を誘発させてみたりとかだな。最後の1つは人間の活動を変える試み、例えば衛星の軌道を変えて隕石に衝突させようとしたりとかだな。更に細かく見ると色々な項目をいじっているみたいだから、その中から優先順位を付けて13個を選ぶのはできそうな気がする。」
「いやまて、13ていうのは、あくまで3水準を全部でやらなきゃいけないときにそれっぽい直行表に割り付けられる例だから、13にこだわる必要はないぞ。とりあえず、考えられそうなネタを全部教えてくれ。」
「よし、穂高の見解を聞きながら、みんなで何をいじるか、ブレストだな。」
そう言って杉下はホワイトボードを取り出した。昼間に買い出しに行ったときにそういえばでかいものを抱えて帰ってきていたな。なんというか、好きというか型通りというか。いずれにしてもさすがとしか言いようがない。
こうして、僕たちはホワイトボードを囲んで議論を始めた。
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