演算室への細工
田中は家に帰ってたくさんの機材が入っている箱を漁っていた。ラズパイ、Arduino、ICやセンサーあと、それらの電源や配線がたくさん入っている。
田中もまた、これからトライすることにワクワクしていたのだが、正直コンピュータシステムの予知保全なんてしたこと無いので、とりあえず色々やってみよう、みたいな状況だった。
この辺持ってけばいいかな。多分だけど、電子機器だから、壊れかけると変なところで発熱したり振動したりそういうことになるだろう。
話を聞く限り、何かトラブルが起こると、数分で係の人が飛んでくるらしい。みんなであの部屋にいたらばれずに脱出するのはとても難しいだろう。なので、事前にあのセンサーが発動する条件を察知して、脱出する時間を確保するのがとりあえずの目的だ。ただ、これは難しい予感もするので、もう一つ逃げ道を用意したいと思う。それは、センサーが発動したときに、少し反応を遅らせるか、信号が伝わるのを一時的に止めて、脱出する時間を確保することだ。
だとすると、シリアル通信をバイパスして、何かしらのコンピュータでディレイをかけてやればいい。本当はアナログ回路で遅くしたりしたいが、サクッとやるならソフトでやる方が早そうだ。
後は、回路作ったりしたりするかもしれないから、はんだごてとかも持っていくか。基板は……ユニバーサル基板で何かできるかな……。とりあえずブレッドボードだけでも持っていくか。何か回路を組むとすれば、相手のシステム以上に信頼性の高いものを作らないといけないけど……。手元にあるものでそんなのを作るのは難しいか。とりあえずブレボで試作して、上手くいったら研究室の基板プリンタで正式に作るか。よし、それだ。
とりあえず、一通りのものを机の上に出したが、ちょっとリュックサックにおさめるのは無理な量になってしまった。ここはスーツケースを持っていくか。着替えも持ったら、軽く旅行にでも行く感じになってしまった。ただ、元々楽器を持って行くことにしていたのだから、それよりは軽い。
「あれ?あらた?今日は家にいたのか?」
「いや別に、これから出かけるところ。」
「そうか。気をつけてな。」
田中家は両親とも大手メーカー勤務だ。連休は年によっては学生の新よりも長いときがある。今日も父さんはだいぶ遅くに起きてきたみたいだ。でも、ワイシャツを着ていたから、会社に行く予定でもあるのかな?社会人って大変だな。大変だからこそ、穂高の父さんの話を、周りの大人は真面目に聞けなかったのかもしれない。うちの両親もそうなのかもしれないな。根っからの真面目だからな。
そんなことを思いながら、研究所に向けて、家を出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます