三回目のS
駅へ向かう途中、西浦さんに電話してみた。
「あ、西浦さん?そっちは今どんな状況?」
『えーっと、結局あの後みんなそれぞれのことをしているのでわからないんですが、私は床裏と天井裏を調べていて、先輩のお父様が万が一の時にも誰かに発見されないように、隠せる場所を見つけました。冷風が出てくるところにも近いみたいなので、保存状態も悪くないんじゃないかと思います。』
「そっか。ありがとう。」
父さんの死体を動かしてくれたのか、たくましすぎるな。あと、床裏も天井裏も入ったのかな?建築系、行動力ありすぎるぞ。
『あと、ネットワーク関係っぽいケーブルの束を床裏で見つけたので、今杉下さんに調べてもらっています。』
「そうなんだ。よかった。確かに、あの部屋でネットが使えないのは辛いもんね。」
『先輩の方はどうでしたか?』
「父さんの家に行ってきた。というか、実家に帰ってた。もう出たけど。パッと見た感じ、部屋は散らかっていたけど、変なところは無かったと思う。父さんが大切にしていた手帳とか色々見つけたからこれから買い物をして家に帰ったら読もうと思う。」
『そうなんですね。わかりました。また明日、お話聞かせてください。』
「西浦さんは、研究所で一晩を明かしても大丈夫?シャワーとか浴びなくていい?」
『はい、私は家を出る直前にお風呂に入ってきたので大丈夫です。』
「そ、そっか。了解。」
やはり、今夜は僕は一人ぼっちの夜になってしまいそうだ。
家の最寄り駅に近づくと、見慣れた顔が電車に乗ってきた。
「おぉ、穂高じゃんか。」
「おぉ、柴田か。」
ちょっと待ってくれ。僕はどんな未来になっても、柴田が生きている限り今日どこかで出くわす運命なのか?
「どうしてこんな時間にこんな電車に?」
「そう、それが聞いてくれよ。今夜は横浜というか、赤レンガでライブだったんだよ。」
そういえばそんなこと言ってたな。
「で、最後にみなとみらいでやってる花火とコラボして背景にメンバーのイメージカラーの花火が上がるっていう演出だったんだけど、なんと花火が中止。赤レンガも他の建物もせっかく電気まで消して待ってたのに。」
「そうなんだ。でも、どうして花火が中止になったんだ?横浜も天気は悪くなかったと思うけど。」
「そう、それが、何やら電波障害が起こって、花火を連携して打ち上げるのが上手くいかなかったらしい。さっきネットニュース見たら、あの辺の基地局につながる線の緊急工事をしてたら、何かミスがあったらしくて、他の基地局に繋げようとあの辺に集まってたみんなのスマホが一斉にアクセスして関係ないところまで落ちちゃったらしい。そんなんあるんだな、今時。」
「そうなんだ。色々残念だったな。」
「そうだな。ま、でも、ライブ自体はちゃんと見れたし良かったよ。」
「それならよかった。じゃあ、僕はここで。また今度ー。」
何気ない会話だが、朝僕が救わなければ、ライブにもたどり着けてなかったはずなんだよな。別にお礼が欲しいとかではないけども。
スマホで調べると、確かに、ネットニュースに横浜で通信障害、と書いてあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます