試行錯誤

穂高は再修正のやり方を確認するとメインのプログラムの解読に取り掛かった。プログラミングを研究室でやっていない訳では無いが、これは普段使わない言語だ。

スパコンで良く使われる言語、でネットで調べたら出てきた候補と比べてみた所、多分、Fortranだろうということはわかった。普段はMatlabとScilabなので、見た感じ全然違う。


とりあえず、言語はわかったので解読作業自体には手がつけられそうだ。ただ、一つ一つコメントを確認しながら、いじったら意味がありそうなところを探し出すのはめちゃくちゃ時間がかかりそうだ。しかも、全部に説明があるわけでもなく、英語でさえないっぽいコメントもある。これが国際的なプロジェクトと言うものなのだろうか。翻訳ツールをいくら使っても前に進まない。


とりあえず、再現する対象のデータベースにアクセスする場所を探さないと……。ただ、プログラミングの専門家でもない穂高からはどのソースコードも違いが良く分からない。途方に暮れていると、気がついたら横に西浦さんが立っていた。


「先輩、順調、ではなさそうですね?でも、もうお昼なので何か食べませんか?」

「え、もうそんな時間?」


時計を見ると、既にお昼をだいぶ過ぎてしまっていた。


「じゃあ、お昼にしようか。」


2人はカバンからおにぎりやパンを取り出して食べ始めた。


「受付の様子はどう?」

「午前中は昨日と同じタイミングに一回席を外してます。その後、12:30に、お昼休憩に入ったみたいで誰もいなくなったので、私もここに上がってきました。先輩はどうですか?」

「えっと、良いニュースとしては、強制巻き戻しとか、衝突確率の計算方法はあっさりわかった。でも、悪いニュースとしては、プログラムの何をどう変えたら良くなるのかは全然わかってない。」

「そうですか。そうですよね。きっと大変なプログラムが入ってるんですよね?」

「そうなんだよね。だから、時間がかかるかも知れない。とりあえず今日やれるところまでやって、どうなるか試してみようかと思う。」

「わかりました。」

「今日の午後受付見てもらったら、次回以降は一緒に見てもらえないかな?」

「わかりました。私でわかることがあるかわからないですけど……。」


二人共理系だが情報系ではないのだ。でも、1人より2人のほうが良いに違いない。

不安を抱えつつも食事を終えると、トイレのために部屋を出た。ずっと室内だったので窓から差し込む陽の光が眩しい。


いつもと変わらない平和な空をしばらく眺めた所で、ふたたび演算室の机で穂高はプログラムとの格闘を始めた。

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