初挑戦

「すみません。東雲副センター長の家族のものなのですが。」

「あー、穂高くんね。私のこと覚えてる?」

「はい、ホームカミングデーの時はありがとうございました。」

「よく覚えててくれたわね。うれしいわ。あら、今日は彼女さんも一緒なのね。お父様に挨拶かしら?」

「いや、そういうのでは無いです。」

「そうなの。残念ね。東雲先生、そう言うの楽しみにされてますよ。本当は事前に入場申請が必要なんだけど、穂高くんは特別に入っていいわよ。」

「ありがとうございます。」

「3階の角のお部屋だけど覚えてるかしら?先生は昨日の夜から泊りがけで研究室にいらっしゃいますよ。」

「わかると思います。ありがとうございます。」


中に入ると、とりあえずエレベーターの3Fのボタンを押す。3Fまで登ったところで会談を使って僕は2F、西浦さんは1Fに降りる。2Fでエレベーターが止まって疑われるのを避けるためだ。これで今回は怪しまれないだろう。


西浦さんは階段の影から1Fの受付を監視する。

その間に僕は渡り廊下を通って演算室に向かう。今日もひんやりしている。匂いは……今のところしないようだ。


パソコンに向かって画面を付ける。パスワードはノートに書いてあった。僕の名前と誕生日が繋がったものだ。それだけ息子のことを思ってくれていたのか、もしくは、遺志を引き継いでもらう時にわかりやすいものに変えたのだろうか。


パソコンはLinux系のようだが、操作自体はシンプルなもので、メインのプログラムと思われるものにたどり着いた。逆に、こんなに簡単でよいのだろうか?プログラムを展開すると、数えきれない数のファイルが格納されている。ノートにもなんとなく説明が書いてあったが、開いてみないと良くわからないなと思った。のだが、結局開いても全然どこからどう手を付ければ良いのか全然わからない。なんとなく、データベース系っぽい名前のファイルや.libがあるので、ここが怪しいが、まずはこれを開く前に、強制巻き戻しのやり方を習得せねば。


強制巻き戻しの名前はForce Resetと言う名前のプログラムを実行するもののようだ。調べてみると、先ほどの画面で少し操作をして機能を解放したところで、外付けの物理ボタンを押すと起動する仕組みのようだ。これは簡単。昔のゲームについていたリセットボタンの感覚で簡単に押せてしまう。ただ、形は赤くて核爆弾の起動スイッチのようだ。


最後に、衝突確率の計算プログラムだ。これも開くこと自体は簡単だった。

『6/4〜5 北米〜太平洋 80%, 6/4 南米20%』

というノートで見たものに似た表示で止まっている。どうやらこれを再計算すれば良いようだ。流石、何十年も同じようなプロセスを繰り返したからだろう、様々なものが誰でもできるように作り込まれていた。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る