挑戦の朝
ヴーヴヴー…ヴーヴヴー
スマホのバイブで目覚める。
「おはようございます。」
「ぬわ、びっくりした。おはよう。」
寝起きに女の子に声をかけられた経験がなさ過ぎて、変な声を出してしまった。そうだ。西浦さんとは既にこの部屋で3回夜を明かしているのだ。
「今日は私のほうが先に起きちゃいましたね。先にシャワー借りちゃってました。」
「あ、そうなんだ。別に大丈夫だよ。あんまり掃除してなかった気がするけど大丈夫だった?」
「はい、大丈夫でしたよ。」
あんなに近づきたいと思っていた西浦さんが僕の部屋でシャワーを浴びていて、なんだったら夜お休みと言い合って寝ている。不思議以外の何物でもない。
「朝ごはん何食べますか?冷蔵庫から出しますよ。あと、柴田さんへの電話もしないといけないですね。」
「ありがとう。じゃあ、パンと何か飲み物を……。シャワー浴びてきていいかな?」
「はい、わかりました。」
シャワーを浴びながら、今日やろうとしたことを整理する。
今調べた限りでは、やはりミサイルやロケットで隕石を破壊するよりも、父さんのシステムで隕石の位置や軌道を変えるというのが現実的な気がする。なので、演算室に行ったら、父さんのノートを頼りに、隕石の座標を特定し、そこのシステムを改変する。それから再度巻き戻しが発生するタイミングまで研究室に残って、衝突確率がどう変わるか?を確認する。一日で行けるだろうか?タイムリープ自体は無限に繰り返されるので、何回でもトライできるが、僕自身は年を取っているし、昨日の感じだと、何十年分も使われているコンピュータが無限にもつとは限らない。メンテナンス体制は万全だとはいえ、だ。
「いただきます。」
「いただきます。」
ただのトーストだが、西浦さんが焼いてくれたと思うと、全然味が違う気がする。コーヒーも初めて飲む味わいだ。僕たちは朝ごはんを食べながら今日の作戦について話し合った。
「昨日、私たちが帰った時、受付が空っぽでしたよね?うまくタイミングを見計らって、あのタイミングで入ったらどうかと思ったんです。何かとマークされるかもしれないので。でも、そうすると出られなくなるかもしれないので、今日は私は受付の近くにずっといようかと思います。そうすれば、いつトイレやごはんで受付が無人になるか記録できるので、明日から動きやすくなると思うんです。」
「なるほど、そうだね。さすが。でも、受付のおばちゃんの動きに干渉しちゃうと、干渉していないときといなくなるタイミングがずれるかもしれないから気を付けて。」
「そうですね。わかりました。あと、プログラムを書き換える前に、緊急リセットのやり方を習得したほうが良いと思います。何かあったときにリセットできないとまずいです。」
「確かに。そうする。」
僕たちはそれぞれ着替えると、研究所に向かって家を出た。あ、そういえばだけど、きちんと柴田には電話をしておいた。
ついでにもうこれ以上怒られないように、カラオケも体調不良でキャンセルの連絡をしておいた。申し訳ないが、みんなで楽しんでくれ。
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