作戦会議

2人は部屋のテーブルに座って、持ってきたノートを広げた。二人合わせて35冊のノートを持ってきている。記憶を遡ると、ざっとこの20倍はありそうだったから、700冊から1000冊くらいのノートがあることになる。


「とりあえず、読んでみようか。」

「そうですね。最初の方から行きますか?」

「そうだね。」


一番古いやつを持ってきたはずなのだが、4回目〜、と書いてある。中を開くと、1ページ目に、


『国連軍への迎撃依頼』


と大きく書いてある。

やっぱり、そう言うのは最初の方に思いつくのだろう。


その先は、防衛省、外務省、経済産業省、内閣府、文部科学省などの肩書がついている人名がずらっと書かれている。恐らく、このあたりから連絡を取る方法を探ったのだろう。ページをめくると、赤字で


『清水台長、観測依頼、5/8回答。』


と書いてある。台長ってなんだろう?


「国立天文台……。」


西浦さんが隣でつぶやく。そうか。台で終わる名前の組織と言ったら、国立天文台か。


「なるほど、隕石の観測を依頼したのか。」


5/8の日付が記載してあるページまでめくる。


『清水博士回答 14:00〜15:00

6/4〜5 北米〜太平洋

重力圏影響 5/3〜9』


「やっぱり1ヶ月後に隕石が衝突するんだ。」

「重力圏影響は5/3〜9って広めに書いてありますね。」

「前回見たノートと違うけど、この時はまだ詳細がわからなかったんじゃないかな?隕石や彗星の観測は近づけば近づくほど精度が上がるから。」

「なるほど、そうかも知れないですね。」


飛ばしたページを見ると、


『NGリスト』


と書いてある紙が落ちてきた。先ほどと同様、日本の官公庁以外に、英語名も書いてある。警察に通報、とか、通話中断などと書いてある。


「これって、ひょっとすると、この人に連絡したら頭おかしいと思われて、ヤバい人かも知れない。」

「なるほど、そう言うことですね。先輩探偵みたいですね。」

「そうかな。ありがとう。声を掛ける人を間違えて、警察に連れて行かれでもしたら、あっという間に隕石が衝突しちゃう。あ!」

「どうしましたか?」

「1ヶ月時間のあったお父さんと違って、僕たちは毎日あの研究室かこの部屋に帰ってこないと、タイムリープできなくて、記憶が消えちゃうかもしれないんだ。」

「あ、そうですね。」

「それ以外にも、事故でも起こして病院に入院したりしたらそれも終わりだ。」

「あ……。怖い……。」


急に怖くなってきた。記憶が消えてしまったら、また次に西浦さんとデートのあと一夜を過ごし、この自体に気がつける保証はない。


「これ、めちゃくちゃ時間がかかりますね。まだこんだけしか読めてないです……。」


時計を見たら、もう夕方だ。


「そうだね。とりあえず、手分けして読もうか?」

「そうします。必要なところは教え合うことにしましょう。」

「うん。」


2人はそれぞれノートを手にとって開いた。

父さんと隕石との人類の存亡をかけた戦いの歴史を読み解く作業は深夜まで続いた。

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