決戦に備えての買い出し

近くのスーパーは、これまた、人類の終焉が近いとは思えない、のどかな雰囲気で、普段通り営業していた。むしろ、GW中の東京なので、普段よりかなり空いている気がする。


とりあえず、食料、特に長持ちしそうなものを選んでいく。料理する暇も無いくらい忙しくなるかもしれないから、レトルトとかのほうが良いだろうか。いつもレトルトばかり食べていると思われてしまうだろうか。まあ、それは元々思われているか。


並んでいる食材を見たら急にお腹が空いてきた。そういえば朝も何も食べてなかったし、昼ご飯も食べないまま、今はすでに14:00過ぎだ。現金以外で支払えば明日にはリセットされるんだ。たくさん買っておこう。


「おーい、穂高。」

「わぁ!びっくりした。柴田か。」


本来、朝の隣駅で会う事になっていた、柴田に声をかけられた。


「なんだよ、そんなに真剣な顔でレトルトカレーとにらめっこして。」

「あ、いや、ちょっとね。そんなことより、お前どうしてこんなとこに?」

「あー、俺はさっきまでKZS28のゲリラライブに参加しに渋谷まで行ってたんだよ。」

「お、おぅ。それは知ってる。」

「ん?なんで知ってるんだ?穂高も渋谷にいたのか?」

「あ、いや、そうじゃなくて、告知は知ってたから、どうせ柴田は行ってただろうなと思って。」

「そりゃそうか。確かにな。じゃあ、俺はこれから横浜にライブにいかなきゃいけないから、またなー。」

「おぅ、じゃまた。」


こいつ、どんだけライブ好きなんだ。あと、大好きなライブに行けるように、命を救ってもらって良かったな。と思いながら、見送った。


いけない、こんなことをしている間に西浦さんが家に来てしまうかもしれないじゃないか。急いで買い物を済ませよう。とりあえず、食材は買えるだけ買おう。あとはお掃除グッズだ。


一通り買い物を済ませたら、なかなかに凄い金額になってしまった。まあでも、これも人類を救うための出費だ。仕方あるまい。


家に帰ってあらかた掃除が終わったところで、西浦さんからのメッセージが入った。近くに来たけど最後道がわからないらしい。確かに、前回の夜は僕が道を指示したから、一人では来られないのか。とりあえず、迎え入れられる体制が整った後で良かった。迎えに行くことにしよう。


「あ、西浦さんこっちこっち。」

「先輩、こっちですね。ありがとうございます。」


視界に入った西浦さんは前前々回くらいにみたワンピース姿だった。やっぱりかわいい。これでお泊りしに来てくれたのか。なんだか行けそうな気がする。それにしても大きな荷物だな。


「その荷物、何?」

「あ、これですか?えっと、パソコンと充電器と、コンタクトと洗浄液とメイク用具と着替えと、えっとあと、ノートとかですね。1年のときの理学系の授業の教科書とかも持ってきました。」


なんだか本気だ。ひょっとして、この状況を楽しんでいるのか?と言うか、理系の本能で探究心が抑えられなくなってきてしまっているのかもしれない。かく言う僕も、この謎を解くことに、若干の好奇心がないわけではない。ただ、これが解けなかったときのことを考えると、背筋が寒くなる思いもある。

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