タイムリープの真相

『何をやったか、詳細を知りたければ、これまでの記録をすべてノートに記しているので必要に応じて読んでもらいたい。元々穂高に読んでもらうつもりで書いていないので読みづらいかもしれないが、許してもらいたい。


結論から言うと、お父さんは隕石との衝突を避けることはできなかった。1日のみで実行できる内容には限りがあるし、お父さん一人ではやれることに限りがあった。


お父さんは今は80歳くらいの体になっているはずだが、恐らく何か重篤な病気にかかっているようだ。ただ、1日では健康診断の予約をしたり結果を見ることができないので良くわからないままだ。


なので、お父さんが続きをできなくなってしまったときのために、穂高の部屋も、この研究室同様に5月3日を繰り返すように設定した。


先ほど、繰り返しが無事に成功したことを確認したので、さっき電話をしたが出てもらえなかったので、ここにノートとして残すことにする。メールにも送るが、これまで繰り返す中で穂高が今日忙しくてメールを見れないことは分かつているので、サーバーから消えないようにノートにも残す。』


穂高は振り返って倒れている父親を見た。確かに健康そうには見えない。メールが来ているかも、と思ったがメールボックスには届いていなかった。つまり、ここで言うメールが送られたタイミング、このノートが書かれたタイミングは、今回ではないのだろう。お父さんが最後に僕に送りたかったメールを読むチャンスを永遠に失ってしまった。


「先輩のお父さんは、体がボロボロになるまで人類を救うために試行錯誤をしていたんですね。」

「そうみたい。それで、僕に託そうとしていたのに、自分の用事が忙しすぎて、電話にも出ず、最後の会話もできなかったと言うことか……。」


色々なことがあって理解が追いつかず、感情というものを置いてきぼりにしてきたのだが、ここへきて、悲しみと後悔と怒りと虚しさとごっちゃになった感情が込み上がってきた。


「先輩……大丈夫ですか?」


気がつくと、泣いているつもりは無いのに、涙がノートにポタポタと落ちていた。


「あ、うん。大丈夫だと思う。でも急に色んな事があって。」

「そうですよね。そうですよね……。」

「ごめん、逆に気を使わせてしまって。」


『最後に、この部屋にあるコンピュータ類へのアクセス情報や、必要な連絡先を書き残しておく。特に、スーパーコンピュータの部品は寿命が次々に来ている。自力で交換できるところで、予備部品がこの建屋のこの部屋の外にあるものは交換しても次の回の日には戻るので問題ないが、工事が必要になる場合は、業者を呼ばないといけない。必ず今日中に直しに来るように伝えること。深夜1時には再計算が始まってしまう。』


こちら側の感情とは関係なく、事務的な連絡が続く。恐らく、もう色々悟っていたのだろう。しかも、良く考えたら、この手紙を書いているのは僕の知っているお父さんではなく、肉体的にも精神的にも80代になっているお父さんなのだ。

しかも何十年分もの期間を孤独に、目に見えない相手と戦ってきたんだ。


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