真相に近づく
さっき亡くなったばかりではないとすると、1つおかしいことがある。何回か前の朝、お父さんの携帯から着信があったのだ。タイムリープしているのが僕だけだとするとその時間にはお父さんは生きていなかったということになる。つまり、お父さんも何かしらタイムリープしていたのではないだろうか。むしろ、この年のとり方を考えると、何年分もタイムリープして、同じ日に返ってきてを、繰り返していた可能性がある。なんのために?そして何故僕とお父さんだけがタイムリープしているのか?更に僕はせいぜい一桁日分しかタイムリープしているのに、どうしてお父さんはこんな老人になるくらいの回数、タイムリープしているのだろうか?
何かしらのヒントを求めて恐る恐る、本棚にあるノートの一冊を手にとって見る。表紙には、
『6514回目から』
と書いてある。開いてみると、なぐり書きの文字で、計算式とプログラムのコードのようなものが記載されている。一番下には"効果なし"の文字がこれもなぐり書きされている。この部屋がスーパーコンピュータの部屋であることを考えると何かの大規模な演算のプログラムの一部なんだと思われる。
古めのノートを手に取ると、こちらの表紙には、
『268回目から』
と書いてある。中には日本語英語入り混じった名前とメールアドレス、電話番号が書かれていて、そのどれもに取り消し線が乱雑に引かれていた。
どれもあまり聞いたことがない名前だったが、大学とか研究所とかLab.という単語が並んでいるところを見ると、恐らくお父さんの研究者仲間か関係者なのではないかと思われる。
「なんですか?これ?」
「詳細はわからないけど、何かの問題を解決するために、多分、お父さんはここで何千回も、同じ1日を繰り返していたんじゃないかな?何日目、ではなく、何回目、という言い方を僕はこれまでしていたんだ。それと同じだ。」
「何かの問題って何ですか?」
「それは全然わからない。心当たりもないし。」
何かわかるかもしれないと思って一番新しそうなノートを手に取る。そこには、
『穂高へ』
と書いてあった。その瞬間、穂高は自分で自分の鼓動が激しくなったのを感じ取った。
「これ、先輩宛てってことですよね?」
「うん、多分そうだと思う。」
「個人的な手紙とかですか?私も見て良いんですか?」
二人の目の前でおもむろに開こうとする僕に驚いて、西浦さんが聞いてきた。
「うん、むしろ一緒に読んでほしい。一人で読むのが若干怖い。」
「わかりました。読んでみましょう。」
ノートを机の上に置き、2人でそっと開いた。
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