父親のやっていたこと

タイムリープの説明

「あ、ごめん。急すぎたね。あと、前回は家までついてきてくれてありがとう。」

「そうですよ。びっくりしますよ。あと、前回ってなんですか?昨日のことですよね?」


あ、前の日のことを前回というのは僕だけだった。


「あ、いや、えーっと、どこから説明していいかわかんないんだけど、僕実は一日終わるごとにタイムリープしてて、5月3日を、ずっと繰り返してたんだ。だから、前回って言ったんだよね。って、こんなこと言っても信じられないよね。」

「そ、そうですね。なんだか良くわからないです。」

「そうだよね。ちょっと待って。」


こういうとき、漫画やアニメなら、新聞やニュースに出ていることを言い当てたりするのだが、うちにはテレビもないし新聞もない。


「あ、そうだ。今日って5月4日だと思ってるよね?でも違うんだ。もう一回5月3日が来てるんだ。スマホ見てごらん?」

「え?あれ、本当ですね!今日の予定のところに先輩とのデートが入ってます!でもどうして?」

「いやだから、僕たちはタイムリープしちゃったんだよ。どうやら、この部屋ごと1日分過去に戻ってやり直してるみたいなんだ。」

「え、うそ……そんなことってあります……?」


まだ信じられないようだ。仕方ない。僕も初回のタイムリープの時には前回の記憶が夢だとばかり思っていたから。


「あ、そうだ。SNS見てみて、KZS28が渋谷でゲリラライブやるって告知が出てるはず。」

「KZS28って、なんか聞いたことありますけど、ゲリラライブやると、タイムリープと何か関係ありますか?しかも、何もそれっぽい情報出てないですよ。」

「え?嘘、確か前回は出てたはずなのに……。あ、もう一回更新してみて。」

「どういうことですか?一応やってみますね。……あれ、なんか出てきました。渋谷でライブって……。なんで先輩アイドルの秘密情報なんて持ってるんですか……。……。ひょっとして、先輩本当に未来からやってきました?」

「そうなんだよ。やっと信じて貰えた。」


やっとといったものの、こんなにすんなり受け入れてもらえたのは、やはり僕と西浦さんの間の信頼関係があってのことかもしれない。


「あーーーーー!!!」

「どうしましたか?」

「やばい。柴田がやばい。今からじゃ間に合わないぞ」

「先輩、どういうことですか?教えてください。」


今から5分後に僕は隣駅にいないと柴田が人身事故を起こしてしまう。こうなればリモートで事故を防ぐしか無い。と、電話をかける。


「おはよう柴田。」

『おう、穂高か、おはよう。どうした?俺今急いでるんだ。』

「だよね。KZS28のライブいかなきゃいけないんだよね?」

『おー、良く知ってるな。流石、ちゃんと公式情報しっかり把握してるじゃん。』

「あ、あぁ、まぁ、そんな感じかな。それより、柴田最近新しいスマホ買ってない?柴田なら新しいやつ買ってんじゃないか、って思ってさ。」

『おー、グッドタイミング。ちょうど昨日買ったところなんだよ。』

「そっか、良かった。その新しいやつでさ、駅の外観の写真撮ってくんね?僕も新しいのを買おうかと思ってるんだけど、カメラがどんなもんか知りたくてさ。ちょうど最近そこの駅の写真撮ってるから比較したいんだよね。」

『まあ、ちょうど改札くぐる前だったからいいけど、駅の写真で比較するって珍しいな。普通夜景とか、電車みたいに動くもんじゃね?とにかく、すぐ撮って送ってやるよ。黒は俺が買ったから、穂高は黒以外買えよー。』


という話をしているうちに、離れたところから電車が勢いよく通り過ぎる音が聞こえてきた。問題の通過列車はやり過ごせたようだ。


「わかったー。ありがと。じゃあ、ライブ楽しんで。」


無事に今回も友の命を救ったぞ。隣では西浦さんが何が起こってるのかわからない様子でぽかんとこちらを見ている。


「西浦さん、とりあえず出かけよう。細かい話は途中で説明するよ。」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る