二人の夜
そんなことを考えていると、さっきの店員がラストオーダーの確認に来た。意外と遅い時間になっていたらしい。
「ごちそうさまでした。」
「ごちそうさま。今日は僕が出すね。」
「ありがとうございます!」
今朝気になってクレジットカードの履歴を見たが、前回の支払い分の履歴は当然なく、何回払っても結局一回分なので、何度でも貯金を気にすることなく払うことができるのだ。
「じゃあ、駅に向かおうか。」
「そうですね。」
と思って歩き始めたら、ちょっと頭がクラクラして、一瞬意識が飛びそうになった。若干飲みすぎたかもしれない。
「あれ、先輩大丈夫ですか?あ、いや、多分大丈夫。飲みすぎたかもしれないけど。」
「えぇ?大丈夫じゃないですよ。明るいところで良く見たら顔色もあんまり良くないですよ。少し休んでいきますか?」
「あ、いや大丈夫。家に帰って横になればなんとか。あと、自転車も取りに行かなきゃいけないし。」
「自転車を取りに?それは無理だと思いますよ。しかも、飲酒運転じゃないですか。」
「いやでも、取りに行かないと柴田が……。」
「誰ですか?柴田って。」
駄目だ。だんだん何がなんだかわかんなくなってきた。
「あ、先輩の最寄り駅、そっちから回っても私家に行けるんで、一旦付き添いますよ。」
「え?本当?ありがとう。」
本来逆の立場であるべきなんだと思っていたんだけど……。もうそういう状況じゃない気がしてきた。
結局受け入れて、最寄り駅までついてきてもらうことにしてしまった。でも結局体調は良くならなかった。
「ありがとう。ここから頑張って帰る……ね。」
「頑張って帰れるようには見えないんですけど。着いていきましょうか?」
「う、うん、ありがとう。」
いや、今家に来てもらっても。散らかった床は片付いてないし、いい感じの雰囲気になる状況でもない。でもこの流れは、自分のために止められない。
「はい、着きましたよ。鍵ありますか?扉開けられますか?」
「それは大丈夫。財布にくっつけてるから。」
ガチャ、鍵を開ける。
「先輩、楽譜とか出しっぱなしじゃないですか。だからしょっちゅう無くしちゃうんですよ。」
「あ、あぁ、ごめん。気をつけるね。」
穂高は家の電気をつけながら、よろよろと部屋に入る。肩を貸してもらうほどではないが、荷物は持ってもらってしまった。申し訳ない。
「ありがとう。寝たら大丈夫だと思うから。こんなとこまで来てもらっちゃってごめんね。」
良く考えたら、僕の体は毎日のように朝割と早く起きて、カラオケで歌い、だべり、夜はデートで飲んで夜遅くまで遊んでいたんだ。かなり無理をしていたらしい。そこにデザートワインまでいっちゃったのはたしかにやりすぎたかもしれない。
ただ、状況次第では西浦さんが家まで来てくれる可能性があるというのは判明した。
明日は朝自転車無しで隣駅まで行って、カラオケの受付も早くして、この感じは歌も手抜き気味にして昼寝も何処かでしたほうが良いかもしれない。あー、またやることが増える。やれるかな……。
そんな事を考えていたら、いつの間にか眠りについていた。
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