二次会の第二回戦

「おいしかったね。デザートをここで食べるってものいいんだけど、お店変えてデザートだけ別のお店で食べるってのはどう?」

「それいいですね。今日うちに帰ってもだれもいないんで、ゆっくりできるんですよ。」


これで3回連続、そのことを言ってくれるということは、やっぱりチャンスなのかもしれない。むしろ誘われている可能性が高いぞ。


「じゃあ、一旦お店を変えようか。辛いのいっぱい食べたから、アイス的なのが食べられるお店とかどうかな?」

「それいいですね。アイスが食べたいです。確かに辛かったです。」

「りょうかーい。」


会計を済ませてお店を出る。前回見つけた、近くにカフェバーにむかう。新作パフェの看板が相も変わらず立っているが、確かに昨日食べたパフェは美味しかった。デートで浮かれている分を差し引いても美味しかった。二日連続でも全然抵抗感がない。


前回と同じ、間接照明の下の、丸いテーブルを囲む少し高い椅子に案内された。


「僕は、このデザートワインってやつをとりあえず頼もうかと思うんだけど、どうかな?」


これは、今日ここに来るまでに調べたこのお店の隠れ人気メニューだ。


「えー、私飲んだことないです。一緒に頼んでも良いですか?あと、私はパフェが食べたくなっちゃったんですけど、一人で食べ切れるか不安で……」

「じゃあ、二人で分けようか?」


前回の感じでは、二人で同時に1つのパフェをいきなりつついても西浦さん的には抵抗感なさそうだった。ここはどんどん距離を詰めることにしよう。


「じゃあ、デザートワイン頼んで、あとは二人でパフェを分けることにしましょう。」

「了解ー。」


と言って、店員を呼ぶ。前回と同じ、地味っぽい店員がやってくる。


「パフェとデザートワイン2杯」

「はい、パフェ2つ、デザートワイン2杯ですね。」

「え?あ、いや違います。パフェは1つで大丈夫です。」

「あ、はい。分かりました。」


前回と同じボケをかましてきやがった。いや、前回のやりとりを覚えている僕のほうが歩み寄るべきだったのか?まあいいや。ここまでこんなに順調に言っているのだ。そんなことで目くじらを立てる必要はない。


「楽しみですね。」

「うん、そうだね。入口の看板のやつ、おいしそうだったね。あと、ここのデザートワインは隠れた人気メニューらしいよ。ほら、あの隣の人が飲んでるやつがそうだと思う。」


ふらっと入った前回と違って、今回は元々おススメだった店に入るテイにした。これは主導権を握れる感じになるに違いない。


「ご注文のお品です。以上でお揃いで良いでしょうか?」

「はい、ありがとうございます。」


「それじゃ、本日二回目の乾杯ー。」

「そうですね。乾杯ー。」


あぁ、ここはコンべじゃなくてよかったはずだと思うのだが、ノッておいたほうがよかったのかな?まあいいか。

いずれにしても、薄暗い店内、小さ目なテーブルで近い距離で一つのパフェをつつく二人。やはり周りから見たら普通にカップルに見えるに違いない。


「苺、最後の食べちゃっていいよ。」

「え、ほんとうですか。ありがとうございますー。」


こんなにカップルっぽいやり取りは無い。やはり、今日はイケる。ここ何回か繰り返してきた5月3日の集大成に、今日はなるべき日なのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る