良い流れ

ビールはすぐに運ばれてきた。


「じゃあ、乾杯しようか。」

「韓国式だとコンベ、なんですよ。それじゃあ、シノ先輩の就活の成功を祈ってコンベー!」

「あ、あ、コンベー。」


なんか主導権を握られている気がする。取り返さなくては。


「サラダはチョレギサラダ頼むね。いいかな?」

「私も頼もうかと思ってました。気が合いますね。」

「うん、そうだね。他にはヤンニョムチキンとか、適当に頼んでいいかな?」

「ありがとうございます。お任せしちゃいます。」


そりゃもう、前回君が頼んだものなんだから、気が合うのも当たり前だ。これから頼むものも、全部西浦さん好みのものだ。


「西浦さんは韓国行ったことあるの?」

「去年の夏休みに、学科の友達と行きましたよ。親以外と初めて海外旅行に行きました。」

「あー、そういえば、旅行で一週間くらいいなかったときあるね。」

「そうなんです。でも、帰りの飛行機ぎりぎりまで遊んでたら乗り逃しそうになって焦りました。最後に買いたいお土産がありすぎて。」

「そうなんだね。」

「これが南大門の前で撮った写真です。知ってますよね?」

「知ってるよ。定番だね。買い物したのは明洞かな?」

「そうです。先輩は行ったことあるんですか?」

「いや、無いんだけど名前とかは聞いたことあるよ。一回行ってみたいなぁ。」

「卒業旅行とかにどうですか?おすすめの場所、教えますよ。」

「そうだね。考えてみるよ。まずは卒業できるように色々やらないとね。」


なるほど、うまく会話するとこういう展開になるんだな。まるでゲームの会話の分岐を1つづつ試しているかのようだ。それにしても、流石にいきなり一緒に旅行に行きましょうにはならなかったか。これは、5月3日だけをループしている間は越えられない壁かもしれない。


「サラダとヤンニョムチキンですー。」


店員が両手に食事を持ってきた。


「あ、これ韓国ノリだよね。チョレギサラダは実は韓国のりが一番好きかも。」

「そうなんですね。サラダなので野菜メインですよ。変なの。」と、可愛く笑う。

「えー、変かなぁ?」

「ある意味先輩らしいかもしれないですね。」

「チキン取り分けようか?」

「あ、ありがとうございます。」


食事もいい感じ。会話も弾むしお酒も進む。今思えば、最初の回のカレーは何だったんだろうかと思う。お店から会話内容から全てチョイスを間違えていたじゃないか。



「次はマッコリ頼もうかと思うけど、西浦さんもどう?」

「あ、そうですね。私ももらいます。」

「じゃあ、そうするね。すみませーん。マッコリ2人分もらえますかー?」


いい感じに酔っ払って、いい感じな雰囲気にできそうだ。


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