隣人の様子
部屋をこっそり覗いてみると、暗くて良くわからないがテーブルの上には6枚のケーキ皿が空になって置いてある。作戦通り誕生日ケーキが提供されたのだろう。
ソファの方に視線を移すと、男女ペアが2組、並んでいちゃついている。恐らく外から見えない角度にもう1ペアいるのだろう。
こんなにうまく行ってよいのだろうかと逆に不安になるが、どうやら無事いい感じに盛り上がって、カップル誕生?したらしい。
たかが無料のケーキがあるか無いかでそんなに差があるもんかとも思うが。きっかけは案外小さいものなのかもしれない。
そう考えると僕の夜の行動にも気をつけなければならない。
とりあえず、謝罪せねばならない雰囲気にはなっていないことがわかったので、部屋に戻る。
その後も特に隣からなにか言われることもなく、僕らの部屋も楽しく歌ったりだべったりして時間が過ぎていった。
「なあ、ちょっと早いけど、今日はめっちゃ練習できたし、カラオケも楽しんだし、早めに切り上げないか?」
横木からの突然の提案だ。確かに、前回までと比べると、途中で邪魔が入ったりすることがなかったのでかなり満喫できた気がする。
そして、僕は連日のカラオケで喉がつかれてきている。
「うん、そうだね。僕は賛成!」
「そうだな。じゃあ、ゲーセンでも行くか?」
「いや、ゲームやるならうちでやろうぜ。」
「マジで!?いつていいの?」
次の予定で盛り上がっているところ申し訳ないが、僕はせっかく早く終われるこのチャンスを逃すわけにはいかないのだ。
「ごめん。ちょっとこのあと予定入ってて。」
「あ、そうなの?なんの用事?デートとか?」
「あ、まあ、そんな感じかな。多分。」
「へーーー。やるじゃん。」
いらない詮索はされたくないが、良く考えたら、今日の会話はリセットされるのだ。別に匂わせたっていいはずだ。
「じゃあ、解散にしようか。お金はアプリで僕に送っといてー。」
このお金もリセットされるのだが……。
「了解ー。」
「じゃあなー。」
「またなー。」
みんなと別れて駅に向かうことにする。
ここもこんなに順調に行くものなんだな。
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「あいつ、デートの件言ったなー。」
「そうだな。これまでもなんかはぐらかされてたけど、ついに言ったな。」
「適当な言い訳したら出かけるの邪魔してやろうかと思ったけど、ちゃんと言えたから許してやろう。」
「そうだな。西浦さんの予定俺等の前で聞いてたもんな。それが今日だって忘れるとでも思ってんのかね?あいつは。」
「恋は盲目だからねー。俺等のこと見えてないんじゃね?」
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今日のデートがバレていて、しかもこれまでしれっと邪魔をされていたこと、ちゃんと言えば応援してくれるつもりだったことを、僕は知らない。
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