未来を変えるために
残念ながら、結局待ち合わせの時間にきちんと到着できてしまった。前回までと同様、僕ら以外のメンバーも既に揃っている。
「お、来たな。」
「なんで穂高と横木が最後だぞ。」
「いやー、駅に着いたら電車止まっててさ。参ったよ。」
「あー、じゃあ俺も同じ電車に乗ってたわ。走って損した。」
「よーし、じゃあ受付するぞー。」
「あ、ちょっと待って。」
とりあえず未来を変えるようにしなくては。僕たちの後ろに例の金髪軍団が並んでいないことを考ええると、おそらく先に入っているようだ。ということは、ここで時間を無駄にして、順番を後回しにしてもらえれば、隣の部屋になることを回避できるはずだ。
「なんだよ。何か問題でもあるのか?」
「あ、いや、確かクーポンがあるはずなんだよね。ちょっと待って。あ、お先にどうぞ。」
流れで次のお客さんを先に譲ってみた。
「あ、そうなん?どれくらい安くなるの?」
「確か全員10%OFFになるはず。」
「マジか、ナイスー。」
「じゃあ、浮いた分でおつまみのプレート頼もうぜ。」
何回やり直してもこの人たちはプレートを頼むんだな。好きだな。
違うか。こいつらはまだ一回目で、毎日プレート食べてるのは僕だけか……。
受付を済ませ、案内された部屋に進む。304号室……。これまでも見た数字のような気がする……。入るついでに隣の部屋を覗いてみる。中に6人いるが、その中に前回や前々回見たのと同じ顔のやつらが中にいる。ちょっとやそっと時間を後ろにずらしても、部屋は変わらないのかもしれない。そういえば、こちらも6人だ。
避難経路の看板を見ると、このフロアは同じような広さと形の部屋が並んでいる。この部屋も6人~8人でちょうどよいサイズに見える。先ほど譲ったお客さんはカップルのように見える2人だったので、彼らに譲っても部屋は変わらなかったのだろう。やはり、相当早いタイミングにやってきて受付をしないといけないようだ。
そうこう考えているうちに、横木が暗記している曲を元気よく入れ、そのまま気持ちよくサビで高音に跳躍するところで声がひっくり返っている一番恥ずかしいタイミングで、店員が全員分のドリンクをお盆に乗せて部屋に入ってきてしまった。
しまった、別のことを考えていて、選曲にアドバイスをするのを忘れていた。ケアしなければいけないことが多すぎる。しかも、やはり何か直接的に行動を変えないと、前回と同じことが確実に起こり続けてしまうらしい。
なので、ここで嫌な思いをしないためには、今回は隣の部屋との関係を悪くしない何かをしなければいけないのだ。
と思案していると隣の部屋で見た顔の女性たちが僕たちの部屋の前を通った。どうやらトイレのほうに向かうらしい。
「あ、ごめん、ちょっとトイレ行ってくるわ。」
何かヒントがあるかもしれない。トイレのほうに行ったら何か会話を聞けるかもしれない。
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