次回のために
とりあえず、このままいって前回より劇的に良くなる予感はしない。であれば、もう一回今日がやってくると仮定して、次の回に有益な情報を引き出すことに専念しよう。もし、明日、今日が来なくても、将来役立つ情報になるはずだ。
「西浦さんは、どんな食事が好きなの?」
「私は最近友達とは韓国料理をよく食べに行きますね。」
ちょうどカレーを持ってきた店員が、ちょっと気まずそうに皿を並べる。しまった。聞くタイミング最悪だった。
「そうなんだ。韓国料理、最近よくテレビとかでも紹介されてるよね。」
「そうなんです。またブーム来てるみたいですよ。」
ふむふむ。これは参考になる。
「韓国料理屋に行ったらやっぱりマッコリ飲むの?」
「あんまり飲まないですね。甘いお酒のほうが好きなので。」
なるほど。なるほど。
「旅行とかは行くの?」
「うーん、大学生になってからはサークルの合宿と遠征以外ほとんど行ってないですね。昔は家族でよく行ってました。今も両親は京都に旅行に行ってるんですよ。」
「そうなんだね。GWの京都は混んでそうだね。」
「そうなんです。だから、私も行くなら大学生だけお休みのときがいいなと思って今回はお留守番にしたんです。インターンもあるし。」
なんだとなんだと!?今日両親がいないということは、今日は遅くなっても良いということか。そういうことならそういうことだとちゃんと言っておいてくれよ。いや、そんなこと普通言わないか。でも知ってしまった以上、行動しないわけには行かない。
明日、と言うか、次回の今日に向けて、夢を膨らませながら、カレーの最後のひと掬いを口に入れる。
いやまてよ。明日、今日が来る保証はどこにもない。そもそもどうして僕がタイムリープしているのか、僕だけがタイムリープしているのか、発動する条件は何なのか、わからないことだらけだ。
「どうしたんですか?難しい顔して。何か考え事ですか?悩み事とかあるんですか?」
「あ、いや、そんなことないよ。カレー美味しかった?ここ有名なんだよ。」
「そうですね。美味しかったです。」
「デザートのバニラアイスです。」
前回同様かわいらしい器に入ったアイスをもって店員がやってきた。何度食べてもこのタイミングのアイスは美味しい。
「ごちそうさまでした。」
「ごちそうさま。今日は僕が出すね。」
「ありがとうございます!」
前回同様駅に向かい、改札で分かれる。
恐らく寝て起きたら来るであろう、次回のデートに向けて準備をせねば。帰りの電車で、お洒落な韓国料理屋を調べる。そのまま予約したかったのだが、今日の夕方の予定は、今はできない。電話をかけて、「明日もう一回来る今日の予約をしたい」といっても頭のおかしいやつが電話をかけてきたと思われて終わりだろう。グルメサイトのお気に入りに入れて明日予約を入れることにしよう。
穂高は家の電気をつけながら、明日来るであろう今日の計画に思いを馳せた。
次回の今日に向けて、今日は早めに寝ることにしよう。なんだか不思議な表現だ。
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