やり直されたディナー

店員に促されて席に向かう。

相変わらずワンピース姿が眩しすぎる。

「西浦さん」

「シノ先輩」

「ごめんね。待たせちゃった?」

「いや、今ちょうど席に案内してもらったところです。」


ここまではこれまで通り、やはり僕自身の行動を変えないと周りの反応は変わらず、前回と同じ展開になるようだ。


「そうなんだ。なら良かった。いやー、今日バイトかと間違えてスーツで出てきちゃって。変な格好でごめんね。」


先手を取ってスーツの件に触れる。


「そうなんですね。先輩もそんなミスするんですね。」

「いや、こんなの初めてだよ。」


なんでもない話をしながら、メニューをめくる。だが、ここで頼むべきはビーフカレーセットとドリンクにマンゴーラッシー1択だ。

あれ、ここまで結局前回と同じ流れのような……。


「僕はいビーフカレーセットとドリンクにマンゴーラッシーを頼もうと思うけど、西浦さんはどうする?」

「じゃあ、私もそうしますね。」

「了解ー。すみませーん。ビーフカレーセットとドリンクにマンゴーラッシーを2人分お願いします。」


若いお兄さんの店員が、聞き取れないくらい早口でメニューを繰り返し、去っていった。


「西浦さんは連休中はなにやってるの?」

「私はインターンで設計事務所に行ってるんです。」

「へー、さすが建築系だね。」

「建築系だからといって、設計事務所に行くかどうかは決めてないんですけどね。」

「そういうもんなんだね。」


なんだか別の話にしてみたが、だからといってなにか良いことがあるわけでもない。困ったな。


「都市工学やりたいのに、設計事務所なんだね」


とか聞きそうになったが、それは前回聞いた話だから、知らない前提なのだ。


「ご注文のセットのサラダです」


このタイミングでのサラダはありがたい。一旦次に何を喋るか考える時間が貰えた。

普段来る時はあまり気が付かなかったけど、ここのサラダが来るタイミングはかなり早いな。冷静に考えるとここまでほとんど喋る時間がなかった。


とりあえず、勉強の話はしない、アニメの話は避ける、だ。


「サラダと言えばさ、お菓子のサラダ味ってどうしてサラダ味っていうか知ってる?」

「えー、知らないです。なんでですか?」

「あれはね、サラダ油を使ってるってだけなんだってさ。」

「えー、そうなんですね。知らなかったです。どうしてそんな事知ってるんですか?」

「前にネットで読んだことがあるんだよね。」


うーん、ウンチクを語るのが正解だったんだろうか?ちょっとよくわからなくなってきた。

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