2度目の失敗はしない

昼時またぎのカラオケフリータイムは昼ご飯をどうするか、という重大な問題を乗り越える必要がある。

昨日は牛丼屋に行って済ませたのだが、タイムリープしているとすると今日行ったら3日連続で牛丼、ということになってしまう。バリエーションを増やすために、今日はハンバーガー屋に行くことにしよう。

戻りがてら、トイレに寄る。ここも昨日来たときと変わらない。ただ、ここで一つ実験をしようと思ったのだ。できるだけ僕以外触らない、実験に適した対象物がある。

帰ってくると部屋には僕と横木だけになっていた。部屋が静かになると、いやおうなしに周りの部屋の音が漏れ聞こえてくる。

隣から昨日聞いたのと同じ、爆音で音の外れた歌が聞こえてくる。昨日の金髪グループが今日も来ているのだ。いや、彼らにとっては<<も>>ではないか。今日<<も>>来ているのは僕だけか。


「おい、こっちで同じ曲の正解の歌い方、きかせてやろうぜ。」

ちょうど入ってきたが言った。

「それいいな。ちょうど今の曲は最後に歌おうと思っていたやつだし。」

横木が乗っかる。

これはまずい、昨日と同じパターンだ。

「いやー、やめとこうぜ。こっからアニソン縛りとかどう?」

「えー、まあいっか。そういえば、OP動画が見られるやつが増えたって誰か言ってたな。まずは俺から行くぜ。」


自然な流れで大事故を防いだ。我ながらナイスプレー。工業大学生お得意のアニソン祭は大いに盛り上がった。萌え系とかそういうのでは無く、SFもの、ロボットものアニメには理系の心をくすぐる話が見きれないくらいあるのだ。


ふと外をみると、全員部屋に戻ってきているはずなのに、扉の外から覗いている人影が見える。すると、

バーーーン

と扉を蹴り開けて、金髪ピアスのいかにも、というやつが入ってきた。


「お前ら気持ち悪いな!アニメの気持ち悪い曲ばっかり歌いやがって!」


後ろでこれまたいかにもっぽい風体のやつが、シャツを引っ張って制している。


「おい、やめたれ、こんな男だけで昼からカラオケしてるやつらと絡むな。」

「ったく!とにかくやめろよ!」

バタンッ


嵐のように去っていった。びっくりした。真似さえしなければ良いと思っていたのだが…。アニソンも地雷だったとは…。


「おいー!穂高がアニソン縛りしようなんていうからひどい目にあったじゃんか。」

「なんだよ、アニソン縛りにしようって言ったの穂高だったのか。いいかげんにしろよー。」


いや、僕は隣を茶化すような選曲を阻止したわけで、その結果、昨日の怒り方よりマイルドになっていたのでむしろ僕はいいことをしたはずだ。

なのに、僕がアニソンを提案したことによって僕一人だけが悪者になってしまった。


なんだか僕だけ悪者にされてしまったし、結局隣に気を使って選曲をすることになってしまった。

タイムリープしているからと言って世の中を良い方向に向けるのはこんなに難しいことなのか……。

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