デジャ・ヴ
駅に着くと、電車が動き出していた。まだダイヤは乱れていて、ひっきりなしにアナウンスがお決まりの謝罪フレーズを流している。
ダイヤは乱れていたものの、待ち合わせの時間にきちんと到着できた。僕ら以外のメンバーも既に揃っている。
必死に平静を装うがどんどん怖くなってきた。流石に昨日の記憶は夢じゃない、夢だとしたら、今も夢が覚めてなくてずっと寝ている可能性もある。それはそれで怖すぎる。
そう思うと、2日前?の記憶も夢ではなく、普通に経験した記憶のような気がしてきた。よくあるタイムリープものの主人公は、1回目のループで気が付くものなのに、2回目の今まで、夢だとばかり思っていた。
さっき、壁を強めに叩いてみたら、今も手の甲が痛いので、今も夢を見ている可能性は多分無いはずだ。
「お、来たな。」
「なんで穂高はスーツなんだ?」
「こいつ、今日の約束忘れててバイトの格好して家出てきたらしいぜ。」
「よーし、じゃあ受付するぞー。」
「フリータイムのドリンクバー付きでいいな?最初のドリンクはここで注文するから、順番に言えよー。」
「なんで炭酸なんだよ。ちゃんと歌えなくなるじゃん。」
完全にここまで経験済みの会話だ。
でも一旦冷静になろう。
「あ、そうだ。僕、クーポン持ってるわ。10%OFFになるやつ。」
とりあえず必要なことは喋っておく。もし、本当に僕がタイムリープしているのだとすると、未来を見越して最適な行動を取らねばならないのだ。
「マジか!全員分つかえるやつ?ナイス!」
「あ、それ俺にも来てたわ、忘れてた。グッジョブ穂高!」
「じゃあ、盛り合わせプレート頼もうぜ。俺朝飯食ってきてなくてさ。」
「そうだな、プレート頼んでももとの金額とほとんど変わらないからな。」
「あ…ちょっと…しまった…」
安くするために出したクーポンなのに、結局安くならなかった…。昨日も後悔したんだった。
一旦僕が本当にタイムリープしていると仮定して、これから同じ失敗をしないように、慎重に行動するようにしなければいけない。
と思って、昨日の記憶を思い出す。
このあと横木が部屋につくなり曲を入れ、声をひっくり返し、僕が変なノリでジャケットプレイをするものの、ドンズべりすることになるはずなのだ。
「横木、朝イチだし、練習がてら、落ち着いた曲から歌えば?」
「え?朝からぶっ飛ばそうと思ってたのに。まあいいか。」
と言って、いつものように番号を覚えている曲リストから曲の予約をした。
やっぱり朝から飛ばすつもりだったのか。やはり昨日体験したとおりだ。
なので、ここは僕は変なことはしないでいつもどおりの選曲をすることにしよう。ジャケットプレイなど、男だけのカラオケで誰も望んでいないのだ。
横木は無事にお上手に歌いきり、僕も無難に好きな曲を歌って、3回目のカラオケは始まった。
1曲歌って感じたのだが、喉がつかれている気がする。連日カラオケに来ているかのようだ。と言うか、今の状況から察するに僕の体は3日連続でカラオケに来ているようなので、ある意味当たり前だ。
問題はタイムリープすること自体が普通に考えて当たり前ではないってことだ。
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