3回目の朝
ヴーヴヴー…ヴーヴヴー
スマホのバイブで目覚める。
スマホメーカーの企業努力は凄いもので、ちゃんと寝ている人間をたたきおこす、無視できないイヤーな感じを実現している。
今日は午前中に塾講のバイトがあるから早めに起きないといけないのだ。
猫かよ、ってくらいの伸びをしてベッドから起き上がる。都内の学生にしては広めの8畳のワンルームには、GW前からほったらかしになっている楽器と楽譜が転がっている。楽譜の下に埋もれているかもしれないゲーム機を記憶を頼りに躱しながら、朝飯を探しに冷蔵庫に向かう。
パンでもあればと思ったのだが、見つからず、仕方ないのでドリンクタイプのカロリーメイトを流し込む。
ここまではとても順調。バイトが始まる9:30に間に合うためには、8:45までに駅に行けばOK.着替えして歯磨きして…ギリギリだけどまあ間に合うだろう。
塾講師らしくスーツに着替え、駅へ向かう。と、ここまでは良かったのだが、駅につくと、改札前に人が溜まっている。人身事故かなにかだろうか?昨日と全く同じ光景だ。
「いつになったら動くのかわからないのか!?」
昨日も聞いた覚えがある声だ。
連休で遊びに行く予定だったに違いないおじさんの姿が改札前にある。
おかしい…。昨日と全く同じ時間に人身事故が起こって、昨日と全く同じおじさんが駅で吠えていることなんて起こりうるのだろうか?そう思って考えてみると、作曲を通った女子高生三人組も、ベビーカーを押しながらスマホを見ている女の人も、昨日もいたような気がする。
はっ……、と思ってスマホを開いた。
今日の日付は……、5/3、になっている。
おかしい、僕は今5/4の朝を迎えているはずだ。スマホが壊れているのか?いや、インターネット時計に接続されているスマホの時間が狂うことはまず無いはずだ。
自分が自分で信じられなくなってきた。駅前のコンビニにかけこむ。レジ横には今や絶滅の危機に陥っている新聞が並べられている。
一番上の競馬新聞を手に取った。人生で初めて競馬新聞がそこにあってくれて良かったと思った。
日付の欄に5/3と書いてある。やっぱり今日は5月3日だ。昨日色々あって終わったはずの5月3日がまたやってきたのだ。
だとすると、このまま家に向かうと高岡が歩いてやってくるはずだ。すると、昨日と同じ場所で、昨日見たのと同じ服装の高岡が向こうからやってきた。
「おーい、穂高!どうして駅から歩いてきてるんだ?忘れ物でもしたか?」
このセリフも昨日聞いた気がする。
「いや、今日はバイト入れたつもりで駅に行ったんだけど、今日って5月3日であってる?」
「何いってんだ?5月3日に決まってるだろう?日付がわかんなくなるくらい寝てたのか?」
「いや、そうじゃないんだけど…。」
もう全く意味がわからない。
ただ、今日は5月3日で、僕は今から高岡とカラオケにいかなければいけないのだ。昨日?と同じく、二人で駅へと向かう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます