この後の予定

縁もたけなわ、というわけではないが、そろそろフリータイムの時間も終わりが近づいてきている。実は今日の僕にはこの後隠れた重大ミッションがあるのだ。

というのも、この後控えている、1つ下の後輩とデートの約束はこのメンツには秘密だからだ。

別に秘密にしなければいけない理由もないのだが、無駄に茶化されるのが嫌なだけだ。決して出し抜こうと思っているわけではない。決してだ。

ここで問題なのが、カラオケ後に基本的にすぐには解散しないということだ。晩飯に流れ込んだり、部室に行ったり、誰かの家でゲームをやったり、ありとあらゆる二次会メニューがGWであればやりたい放題だ。

これをどうまいてデートに行くか、ということが問題だが、どうやらそれが相当気になっていたらしい。昨日の夢の中で同じシチュエーションを体験している。昨日何を言ったかというと、実家から親が来ているというものだったのだが、実の親なのに、昨日のニュースで自分の親が研究成果の発表を経済産業省のなんとか会議とやらでするというのが流れていたらしく、嘘だとバレて怪しまれた挙句、さらに適当なことを言ってその場は逃げてきたものの、どうやら横木あたりは感づいてしまっているらしく、夜色々と探りの連絡を入れてきて相当面倒だった。


と、まあこれは夢の話なのだが、自分の親ながら、なんだか結構有名人らしいので、親を使うのはやめにしようと思う。


「ごめん、そろそろ帰る時間だと思うんだけど、僕この後家で荷物受け取らなくちゃいけなくてさ。二次会いけないわ。」

「えー、なんだよそれー。再配達してもらえばよくね?」

「せっかく俺んちでゲーム大会でもオールでしようと思ってたのにー。」


ごめん、みんなゲーム大会には何の罪もないが、今はそれよりも大事なイベントが僕にはあるのだ。そんでもって再配達してもらえば受け取らなくてよい、ということは断じてないぞ。


「いや、ほんとごめんごめん、これ大事なやつなんだよね。しかも、すでに1回受け取り損ねてて、2回目は無いと思うんだよね。」


なんだかんだ言われたが、とりあえず怪しまれずに解放されたので良かったことにしよう。さすが夢シミュレーションの成果があらわれたといえよう。


友の視線を背中に感じつつ、次への目的地に向かって駅へと急ぐ。これは相当急がないと追いつかれてしまう。そうなれば、なんで逆方向に乗ってんだ?となってしまうので、バレない程度に早歩きをしてまく、という作業が必要になるのだ。これは日常生活でもきっと役に立つし、体も動かすので、次々回くらいのオリンピック種目に入れてもらっても良いのではないかと思う。


電車に乗りながら、ふと気になって、スマホを取り出す。そう言えば父親は何か発表するのだろうか?今朝の電話はひょっとしてそれ関連だったのだろうか?

"東雲高"と検索窓に打ち込む。

すると、東雲高氏、重力物理学センターでの記者会見の予定、という記事が目に入ってきた。読むと、重力場の記録に関する発表と書いてある。また難しいことを発表するようだ。普段から何をやっているか聞いているものの、専門がかぶっている僕でさえほとんどわからないことを世間に向かって発表する意味はなんなのだろうか?と考えてしまう。


まったく記憶にないのだが、この記事、既にアクセスした記事の色になっている、どうやらいつか読んだ記事が記憶の中に残っていて夢にまで出てしまったらしい。とんだファザコンだな。全く自覚無いし、そもそもこの半年顔を合わせてもいないのだけど。


そんなことを考えていたら、次の駅が目的地の駅だという車内アナウンスが流れた。

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