消えゆく記憶と誕生せし人格

 この厨房にも隠すようにしてカメラが仕掛けられてある。

 画像を録画している秘密の小部屋では、美絵が連れてきた猫が二匹、録画中の画面を見ている。

 その画面には、体に包丁を突き刺した人間の死体を、美絵と同じ衣装で綺麗に化粧した牧保が運んでいるように映っている。

 そして、調理台の前で待つ美絵は、影さえ映っていない。

 完全に単独犯の映像になっているのだ。


 作ってやると言っておきながら、美絵は牧保に「ああせえこうせえ」と指示するだけで、一切手出ししない。

 体験としての子牛。画像としての人体が不器用に解体されていく。

 大きなズンドウに次々と放り込まれる肉の塊が、画面に臓物として映し出される。

 手や足に映って見える調理場の録画は、悍ましい食人鬼の一人宴会にも思われる。


 少しすると、一旦席を外した美絵が調理場に戻ってきた。

 画面上でその姿は、迷彩服を着た屈強な男である。

 男は調理台に向かう牧保の後ろから、太くたくましい両の腕をまわし、しっかり抱きしめる。

「おいおい、あんたもあの姉妹と同じサービスをしてくれるのかい」

「ええ、あちらこちらそちらの面倒も見るように頼まれていますから。しっかり御勤めさせていただきますわ」

 この時ばかりはやけにしおらしく答える美絵だが、画像ではあくまでも筋肉ムキムキ男である。


 調理を終え二人が食卓でワインを飲み、そこにはには二匹の猫も同席している。

 この猫が、録画では黒豹と虎の子供に見えている。

「女将さんがね、温泉に入りたかったらいつでも来てねって言ってたわよ。しばらく御客さんも来ないし、宿代は気持ちで良いって」

「へー、有難い御誘いだね。前金ももらってる事だし、そのうち遊びに行こうかな。何だかこっちに来てから良い事ばかりだ」

 男に映っている美人を前に、少し酔ったらしい牧保が食後の厭らしい体感を期待した目で美絵に答える。

 こちらに着いて、気づけば殺人犯になっていた事などすつかり忘れている。


「今日は屋敷のお風呂で我慢してね」

「屋敷のお風呂ってのは、あのローマ百人風呂みたいなのか?」

「ええ、そうですわよ。勿論、温泉!」

「二人しかいないのに、あんなの使っていいのか。だったら、なにも宿まで行く必要なんかないなあ」

 ダム湖に沈んだ刀探し以外は、美絵としっぽりこの家で過すのがよろしいと、今からむっくりさせている牧保だが、その姿はすっかり女装家の好き者に映っている。


「ねえ、地下の拷問部屋に行かない?」

 美絵が唐突に床を指さして問いかける。

「嫌なこった。ちらっと見せてもらったけど、すんごいのがゴロゴロしてただろ。本当に使ったみたいなのもあったしな。悪い趣味だぜ」

 血糊でどす黒くなった斧や拘束椅子を見たのを思い出し、一瞬、大穴の中で稲光に照らされた有羽愛の顔が蘇る。

 ちょいとの酔いがすっかり覚めたらしく、デキャンタのワインをグラスに注ぎ、一杯二杯と勢いよく飲み干す。

「まあ、そのうち行きたくなるわよ」

 こう言って笑いうと、美絵も一緒になってワインを飲み干す。


 申し合わせたように二人が立ち上がる。

 長いテーブルの両端に居たのが中央に寄ると、丁度真ん中の所で抱き合い、フレンチキスを数分間楽しむ。

 うずくものを握り、忙しく美絵をテーブルの上に座らせると、彼女の淫靡なものの中に押し込もうと企む。

「まだ早いわよ。もっと楽しませてくれなきゃ良い事なんかしてあげない」

 こう言って美絵はテーブルから降りると、さっさと一人で風呂の方に向かって歩き出した。

「まあいいか、時間ならたっぷりあるしな」

 半分ばかり硬くなっていたのをなだめて、牧保も風呂についていく。


 脱衣を二人で一緒に済ませると、既に湯殿の湯は一杯になって溢れていた。

「かけ流しかよ。贅沢しやがって、ガス代は誰が払うんだ?」

 温泉だとは聞いていたが、宿と同じにも見える湯の加減を見て、他人事ながらにも心配する牧保。

「ガス代はかからないわよ。高温だから冷却管を通して冷やしているくらいなの。暖房も全部温泉で賄ってるから、光熱費は安いものよ」

 夏の冷房にしても、高温の温泉と外気の温度差で発電した電気を使っているから、殆ど冷暖房と給湯の費用はゼロだとの説明に、あるところには集まるようにできているのが世の中だと再認識する牧保。


「へー、随分と良い暮らしみたいだな。羨ましいよ」

「なんだったら、私か瞳のどっちかと結婚すれば貴方の物になるわよ」

 意地悪そうな目で牧保を見て美絵がこう言い、下にあっていくらか上向き加減になっている物をむんずと掴む。

 ただ、この場の画像も盗み撮りされている。

 写し出されているのは、牧保が厚い化粧ですっかり女になりきっていて、美絵は体格の良い男である。

 おまけに、しっかり下の何を大きく膨らませ、ドライソーセージ並みに硬くしている。

 この男が手に握ったまま、女の様に弱々しく振舞う牧保の物を、ゆっくり上下に擦ってやる。

 すると、乙女が恥じらいをもって漏らす吐息とも喘ぎともつかない声が、思わず牧保の口から漏れ出した。

「はっ! あー………」

「誰もいないんだ、もっと弾けて良いんだよ」

 男は牧保に、心底感じたままの声を出すよう促す。

 そして握った物をひざまづいて口に含むと、二三度前後してからいったん外に出し、舌先を器用に使って全体を刺激する。

 先から根本に伝った舌先は、ふらりと下がった袋の中にコロコロしているのを、薄皮と一緒に含んだり舌でなでたりする。

「あー。あー」


 次第に声高になっていく牧保を一回強く抱きしめた男が、紅潮する自分の体に湯船からすくった湯をかけると、もう一杯湯桶にすくい牧保にもかけてやる。

「横になって」

 男が牧保を、洗い場の真ん中に置かれたエアーマットの上に寝かせる。

「なにをするの?」

 もはや抵抗する気などなく、成されるままの牧保だが、嗜好が自分の思いと違う路線で走っているのに戸惑って尋ねる。

「綺麗にしてあげる」

 すっかり男姿の美絵が女の言葉と発声をして、牧保を全身石鹸の泡で包む。

 そうしておいて左右の手に持った安全カミソリで、素早く泡の下に隠れた体毛の全てを剃り落とした。

「つるんつるんのピッカピカー」

 二人の体に残った泡をシャワーですっかり洗い落とすと、上機嫌の鼻歌混じりで牧保を抱き寄せる。

「なんだか変な気分」

 しおらしく抱かれたまま、牧保が小さな声で言う。


 脱衣所に一旦戻り体を拭き、そこから隣りの化粧室に入る。

 洗面台の上には化粧品がズラリと並んでいる。

 男は自分が化粧するのと同じに、牧保にも丁寧に化粧を施す。

 二人の顔が見違える程の美女に仕上がるまでに、いくらも時間はかからなかった。

 ここからまた隣の部屋に入ると、男は牧保に似合った下着を探してやる。

「ここには色々と置いてあるから、後は自分の好みで替えると良いわ」

 こう囁く男の姿も、牧保と一緒に女物の下着を身に着け、仕草語り口調まで女になりきっている。

「こんな趣味はなかったのに、とってもすがすがしいの。自分が自分じゃないのに、本当の自分のよう」

 初めての経験に興奮している牧保は、その表情がいつもの自分と違って、すっかり少女のようになっている事に気づいていた。


「二人で森を御散歩しましょう」男が言う。

「でも、外は真っ暗よ」

「大丈夫」

 二人で仕切りのない隣の衣裳部屋へ動くと、男が室内の調光スイッチばかりの卓に座る。

 何十ものスライドスイッチを両手で器用に操作すると、外の景色が一斉に色取りゝに照らされ、幻想的な景色がダム湖となった谷の畔まで広がる。


「今日はどんな服にしましょう」

 こう言う男の姿は、本来ならば美絵として映らなければならないのに、移り変わる出来事にすっかり幻惑された牧保には、もはや男が変身した画像上の姿となっている。

 しかし、これまでの経緯から現実との行き違いに違和感を感じていない。

「私のも選んでください。御姉様」

 意識してこんな言葉が出てきたのではない。

 何も考えず、だだ正直自然に振舞った結果としての発声である。

「今日はー、私ともう一人の貴方が初めて出会った記念すべき日だから、豪華なドレスが良いわね」

 男が、一千着はあるだろう衣装の中から、宮廷の舞踏会にでも行くような衣装をとりあげ、下着姿の牧保に合わせてみる。

「社交界デビューみたい」

 牧保は照れた風に顔を赤くする。

「これだと肩のストラップが邪魔ね、下着を別のにしましょう」

 こう告げ、ひょいと近くにあったコルセットを取り上げる。

 これを巻きつけると、腰から上の肉と言う肉全てを押し上げ、どんどん締め上げていく。

「苦しいわ」牧保が音を上げる。

「我慢して、レディーなのですから。御客様に笑われますわよ」

「御客様が?」

「ええ、今宵は女ばかりの舞踏会で御座います」

 しっかり胸元に持ち上げられたのが、コルセットの上で未成熟な少女程の乳房を作ると、男は先ほどの衣裳をすっぽり牧保に着せる。

「綺麗よ」耳元で囁く。

「御姉様はもっと素敵」

 胸元の大きく開いた衣装に負けず、大きく張りのある男の乳房を見て、牧保はうっとりする。


 裾の広がったドレスを着込んだ二人がショールを肩にかけると、ショーウインドーの中で踊るマネキンのようにして、光のトンネルを潜り畔に設えたベンチまで歩き始めた。

 この間、牧保は男の腕をしつかり抱えている。

 二人がベンチに座ると、それまで辺りを照らしていた照明がゆっくりと消えてゆく。

 替わりに満点の星が二人を包み込み、彼は牧保を優しく引き寄せた。

 これから行われる事が二人の儀式の始まりと知ってか、牧保は潤んだ視線を送りすぐに目を閉じた。

 互いの気持ちに一転の曇りもないのを確認した彼は、艶のある真紅のルージュに染まった唇を、淡い桃色の唇に重ねる。


 体をすっぽり抱擁されると、牧保は体中に熱い血が迸る程の熱を感じた。

 心の欲するまま肩を覆う腕に抱かれ、自分は肘から折り曲げ彼の背中に回すと力一杯しがみ付くようにして、内にあって抑えきれない感情の高ぶりを伝える。

「良いのよ。ここは広い私有地だから、御客さん達が来るまでは誰の目も耳もありませんわ」

 こう言って彼は再び牧保の唇を塞ぎ、温かく柔らかなものを入れては出し、入れてはくるりゝとまわしてみたり、互いに重ねたり吸ったりと始める。

「うん、うん」

 口が塞がって言葉の出せない状態でも、喉の奥から出てくる歓喜の声は、静寂の森に響き渡る大きさで漏れ出てくる。


「我慢しなくていいからね」

 ドレスをたくし上げ、頭をすっぽりフレアの中に隠れるまで倒すと、こう言った彼の口先がドレスの内で緊張した牧保の一部を銜え込む。

「あーっ!」

 息苦しい程の激しい口づけに塞がれていた声が、この時とばかりに夜の森に木霊して行く。

「あーっ! 御姉様、いけません。御口が汚れますわ」

 この言葉を彼は聞き届けるつもりもなく、獣のように

いきり立つ物にむしゃぶりついている。

「いけません………良いー。気持ち良いー」

 いけませんとしながらも拒絶するそぶりではない。


 スカートの中で繰り広げられている舌と唇の動きがどういったものか、自分の体感から思い浮かべられる。

 それは乙女になった牧保にとって、羞恥の一線を超えた快感となり、思わず衣服の内で上下に動く彼の頭に手を置き、ただされるに任せて星空に歓喜の声を響かせる。

「あーっあっあっ! 行くー。行くー。御姉様ー」

 この声と同時に牧保の体が大きく痙攣すると、体の奥から噴き出すものは、含まれたもの先から光速の勢いで彼の口中に放出された。


 彼が頭を上げ牧保からの贈り物を飲み込むと「今度はあなたの番よ」慣れた表情で自分のスカートをそっと持ち上げる。

「はい。御姉様に喜んでいただけるのなら、私も頑張ります」

 これまでの牧保からは創造すらできないしおらしい言葉である。

 彼が上げたスカートの向こうに頭をそっと降ろすと、その上に彼がふわり持っていた裾をかぶせる。

 中で何が行われているのか見る事はできなくとも、やはり彼は体感として牧保の仕草を想像できている。

 初めての事も有って、彼の動きに比べて随分とぎこちないが、ついさっき自分にしてもらった事を思い出しながら舌を絡め、唇を吸いつかせ、頭を上下させ、そっと添えていた両手の一方で自分のものを慰め始める。

 そうしてからもう一方の手で彼のを強く握ると、素早く上下に動かし、そこへ唇と舌の動きも加える。

 これに慣れてくると頭の動きも加え、ドレスの中で激しく彼のものを欲する動きを続けた。

「あー、上手よ。良いわ。気持ち良いわよ。あーあっー、あっ!」

 彼の声が、スカートの中で硬くなった物の魔力に憑りつかれ、一心不乱に奉仕する耳まで届くと、この上ない幸福感が牧保の体を包み込んだ。


 一方の手で握っていた自分のは、彼からの贈り物が口の中へ広がったのと同時に、また一度絶頂を迎える。

 この感覚は、体ばかりではなく頭の中に繰り広げられる事が大きく関わっていて、男であった時には一度も味わえにかった絶頂である。

「良いわー。行くわー。もっとー、もっと吸ってっー」

 彼が牧保の頭をドレス越しに抑える。

 牧保は彼の声を聞き素直に反応し、いったん飲み込んだばかりの口ですぐさま彼のに吸い付くと、舌先で綺麗にする仕草を繰り返す。


 一連の動きを終えると二人はその場に立ち上がり、互いに握りあった物先をくっつけてクリクリとこすり合わせ始めた。

 並立した二本の樹先から滲み出る透明の粘液を混ぜ合わせ、すべすべした動きを助けると、これまで以上に際立った二人の声が一緒になって、森の隅々まで蹂躙して行く。

 こうしていると、何度も自分が頂点に達し、その度に得られる幸福感が、果てなく積み重なって行くのを実感できた。

 幸福感が心の奥底まで染み入り、次第に情欲の女神に憑りつかれて行くのを感じる。

 やがて、今までの自分とはまったく別に、もう一人の人格が確率し、男であった時とは比べ物にならない程の快楽に酔いしれる。

 女としての自分が此処に居る。

 二人の営みが激しくも愛おしく続けられると、次第に蓄積した幸福の器が快楽の樹液で溢れかえり、牧保は意識を薄くして行った。


 気づくと、すでに寝室のベットでドレスを着たまま横になっている。

 彼がここまで運んできてくれたのだろう事は、無垢な少女の感性に支配されていても容易に想像がついた。

 遠くの居間から聞こえる声に耳をやると、彼とは別の客らしき人物の声が混じっている。

「随分しっかりした作りの家ね。それに、家具のセンスも良いわ」

「中世の御城を模しいるから必然性って事かしらね。御婆ちゃんの趣味なの」

 居間では、美絵だった彼と長身で見栄えの良い女が話している。


 客と言っていたのはあの声の主かと思い、起き出した牧保は居間の扉を軽くノックして入る。

「初めまして。牧保と言います」

 スカートを両手で持ち裾を少し上げると、右足を左足の後ろに浅く交差し軽く膝を曲げて会釈する。

「あらまあ、可愛い御嬢さんだ事」

 客の大女が、すっかり少女になりきっている牧保の仕草を仕切りに愛眼する。

「真樹穂。今日からこの方が、貴方の家庭教師になってくださるデンジャラス・キンベン先生よ。この世界で暮らす知識を余さず与えてくださるわ。御勉強頑張ってね」

 牧保を真樹穂と呼ぶ美絵は、まるで自分が牧保の母親であるかのような口ぶりで大女を紹介する。


「はい。わたくしキンベンが教えるのは、より美しいレディーになるための作法よ。綺麗になりたいでしょう。だから、先生の言う事を良く聞いて、しっかり守ってね」

「はい。キンベン先生の教えを守って、素敵なレディーになります」

 何がどうされようとしているのか不明だが、今の牧保は地獄の底に突き落とされても疑問を感じなくなっているのだけは確実である。

「今日は疲れたでしょう、ゆっくりおやすみなさい。御勉強は明日からにしましょう」

「はい」

 目覚めてみれば、さっきまで有った自分がすっかり消え失せ、今度は子供のように素直な気持ちで全てを受け入れている。

 そして、周りに居る者たちは牧保の母であったり先生であったりと、周囲の状況までもが急変している。 

 それでも疑問を抱けないまま、すっかり流されて床に着くと、そのまま深い眠りに落ち入った。


 翌日。まだ明けきらない朝陽が真樹穂の顔を照らすと、森には小鳥達がせわしなく飛び交う。

「真紀穂、朝ですよ。早く起きなさい」

 美絵が居間から声をかけると、メイド服を着た御姐さんが部屋に入って来た。

「今日から御嬢様の御世話をさせていただきます」と言って、衣装部屋から真樹穂の着かえの一式を持ってくる。

 胸に留められた名札には、冥途美智恵とある。

「変わった名前ね」

「よく言われますわ」

 誰から見ても違和感の塊が二つ並んで朝の支度を始めると、昨日まで無かった真樹穂の胸は、まだ何も知らない二つの膨らみを誇らしげに成長させていた。

 そして、昨日まであった筈のでっぱりは、ツルっと消え失せ別のものに変わっている。

 気づかぬ間に異次元へ召喚されたかと勘ぐるのが、正常な精神を持ち合わせた人間のなすべき事であろう。

 ところが、ここでも真紀穂はいっこう物事に頓着する気配がない。


「そうだ、御嬢様。着かえる前に温泉に入りましょう。わたくし、この御城には温泉があると聞いて楽しみにしていましたの。昨日は遅くになってこちらに着いたものですから、まだ入ってないの。ねっ、良いでしょう」

 鏡に全裸で映る真樹穂と年頃は同じ位であろう冥途が、友達と話すようにして真樹穂に共の入浴をせまる。

 生活環境の不自然な変化には気づいていない真樹穂だが、記憶がなくなっているのではない。

 ただ、昨日と今日の自分が違うだけで、その主体が望むのはいずれも情欲の末路である。

「いいわ、御一緒しましょう」

「ありがとうございます」

「その、ございますは………まあ、いいのでしょうかね」


 奇態なもので、そうと決まれば互いの入浴姿を眺めているだけではいっこうに満足する域に到達できない。

 冥途が真樹穂を背から抱き寄せ、肩越しに石鹸の泡を満たした両手で胸を撫でまわす。

 すると次には真樹穂が後ろに周り、冥途の太ももに左手を這わせ、右の指を彼女の最も神秘的な部分に入れて小刻みに震わせる。

「はー、はっあー。御嬢様にもしてあげる」

 冥途が真樹穂の肩をとり自分に向けると、漏れ出す喘ぎ声を押し堪え「御願い、早くして」とせがむ少女の唇に自分の唇を重ねる。

 すぐに答える真樹穂の舌が、冥途のと強く絡み合う。

 冥途もまた、真樹穂の秘密の部分に指を入れ、激しく震わせる。


 二人の息が荒くなり、共に塞いだ唇を開け放つ。

「あー、あー、あー」

 合唱のように浴室で響く二人の声が、屋敷中に行き届く。

 この声に刺激されたのは、昨夜やって来た家庭教師のキンベンである。

 押さえきれない性愛への欲求を満たすべく、まだ起き抜けていなかったベットの中で、豊満な乳房の先を摘んで自ら甚振り始めた。

「うっあーん」

 既に淫乱の館にあって誰に憚るでもなく、淫らに歓喜の声を吐き出す。

 一方の手では、細くしなった指先に溢れ出る愛液をしとらせ、秘部の手前で硬直した小さな突起を過激に擦り続ける。

「あっあっあっ! あっあっあっ!」

 大きく開けた口から出した舌で唇を舐め、きつく閉じた瞼の奥では眼球がブルブル震えている。

 身体をそらせ何度も繰り返す快楽の間で、ひときわ大きな波が近付いてくる予感がしたと同時に「あっあー!」家中に響く絶頂の声をあげると、すかさず二本の指をスッと中に入れ、ゆっくり動かし余韻に浸る。


 キンベンの声は当然に浴室へと流れていた。

 この声と同調するように、二人は互いの指を入れあい、激しい営みの末に行き果てた。

 真樹穂にとって登り詰めた後の感覚は、これまでにない快楽の極みである。

 また一人、快感に酔いしれた淫靡な少女としての人格が増えたのに、本人はその事に全く気づかず、これが真の自分と信じて疑わない。

 体も心もとろけそうな一時に総てを任せ、淫らな情景にその身を置いているだけである。


 冥途は余韻を楽しむ間もなく、さっさと厨房に向かう。

 取り残された真樹穂は、まだ身動きの自由が効かないでいる。

 体に漲る喜びの一部始終を頭の中で繰り返し、淫乱で艶めかしい快感の再体験によって、幸福を幾重にも積み重ねているのである。

 そうして、相手が無くとも自分が何をしなくとも、ただ横になっているだけで矯声を上げる。

「はっ、あっ、あー、んー、んっんっ、あっ、あー」

 止めどなく続くとも思えるあえぎ声が次第に小さくなると、真樹穂の意識は遠退いて、終いにはそのまま浴室で寝てしまった。


「起きて」

 朝食の仕度を済ませた美知恵が、穏やかな顔で眠る少女の真樹穂を呼びにくる。

「あら、寝てしまったのね」

 ぼんやりする視界に浮かぶ美知恵に、起き上がるのを手伝ってもらうと、軽く口づけをしてから脱衣所へと歩き出した。

 湯上りには、昨日と違って随分と簡単な衣服が用意されていた。

 下着の用意はなく、上からスッポリ被って着る白いシルクの袖なしワンピースだけである。

「これだけ?」

「はい、御母様と先生はこれだけ。私もこれに着かえるわ」

 この家の皆がこういった格好なのを、意識が不安定な真樹穂でも妙に感じた。

「どうして?」

「これからは、毎日こんな感じで行きましょうって、先生がおっしゃってたわ」

 先生が言うからには、母親の言っていた御勉強の為だろうと納得する真樹穂の横で、美知恵も着替える。

 終わると「今日は御庭に朝食の準備をしてあるのよ」美知恵が真樹穂の手を取る。


 陽はすっかり昇っているのに、森から流れ込む霧が、城前に広がる手入れの行き届いた芝庭を覆っている。

 歩く先にはテーブルと椅子が有り、朧気でどちらが誰かまでは分からないものの、既に二人の女性が座っているよえに伺える。

「もう、美知恵は御姉さんなのですから、これからはもっと早く真樹穂を起こしてあげなさい。先生も私も御腹ペコペコなの」

 いつからか、冥途美知恵は真樹穂の姉になっている。

 だからと言って、ここでこの状況に不信感を抱く牧保ではなかった。

 すんなりこの発言を受け入れ、二人を姉妹と言う美絵が自分の母親なのだと確信した。

「御母さん、ごめんなさい。御風呂で寝てしまいました。御姉さんが悪いのではありません」

 この言葉に先生が「まあ、よく寝る子ね」と笑って、真樹穂の頭を撫でる。

「さあさあ、食事が済んだら今日は屋外授業ですよ」

 先生が付足すと、朝食会が始まった。


「今日は、御父さんはどこへ行ったの?」

「早くにここを出て、被災地の視察だそうよ。夜には戻るけど、遅くなるから先に寝ていなさいって」

「あら、朝から夜には寝てなさいの話も変なものね」

「言われて見ればそうね」 


 ひとしきり談笑して食事を終えると、少し森の中に入った所に向う。

 そこには、白いレースのカーテンベットが置かれてある。

 誰かがここで生活しているのではない。御昼寝用とも思われぬ。

「今日は、殿方との接し方について教授させていただきます。おかあさんには今回特別に、殿方役で助手をしていただきます」

 ベットに向くと、既に裸になった母親が天狗の鼻をつけて仰向けになっている。

「これを扱う時は、力の加減を変えてやるのが宜しいでしょう」

 キンベン先生が、天狗の鼻を上下に擦って見せる。

「舐め方ですが、決して歯を立ててはいけません。唇で歯を包むようにして、中で舌を回すと喜んでいただけます」

 言い終ると、天狗の鼻を丁寧に舐め回して見せる。

「自分がしとってまいりましたら、ゆっくりと挿入しましょう。慌てて動くと、早い方はこちらの都合など関係なく発射してしまいますので注意してください」

 先生がゆっくりと構えた腰を落としていくと、天狗の鼻が体の中に飲み込まれて行く。

「あっ、あー! このように、喜びに満ちた表情でよがり声をあげますと、尚更喜んでいただけます」

 今度は腰を上下に素早く動かす。

「こうしますと、殿方が自然と動きたがりますので、その時は成行に任せましょう」

 母親が起き上がって先生を強く抱きしめると、四つん這いにして後ろから激しく天狗の鼻を突けた腰を振り始める。

「あー、良いー。良いわー! 行く、行く、行くー! こう言って、絶頂である時は殿方に教えて差し上げます。こうする事によって、二人がより一層幸せになれますの」


 この授業を見聞きしているうち、真樹穂と美智恵は自分のものに満たされた粘液が溢れ、しっとり周囲を濡らしているのを感じてきた。

 粘液の海に己の指を泳がせ、心行くまでみだらな息遣いを奏でたいと願いはじめる。

「先生、何だか体が熱くなってしまって、我慢できません」こう言ったのは美知恵である。

 真樹穂は聞く前から自分で慰め始めている。

「良いでしょう。自分で処理しながら、先生と御母さんの営みを、殿方と自分に置き換えて観察してください」

 キンベン先生に言われた二人が、その手のおもむくままに体を宥めながら、ベットの上でくりひろげられる痴態を凝視する。


 母親が天狗の鼻を外すと、今度はそれを先生が付け、逆の立場になって模擬性交を続ける。

 それが一段落すると二人共女に戻り、ただ欲情の示すままに体を交わらせ、歓喜の声を森に響かせだした。

 互いの脚を絡ませ、その間にあるものを押し付けあうと、露出した固い突起が重なり合う。

 これを感じ取った二人はより一層動きを早め、触れ合う突起から伝る快感に溺れて行った。

「あーっ」

 殆ど同時に果てた二人が小声で姉妹に言う。

「今日の授業はこれまで。解散よ」

 先生が言うと、すぐに母親が付足す。

「これから私達は出かけてしまいますから、今夜は二人で過ごしてね」

 自分で弄るだけでは到底満足の行かなくなっていた姉妹が、二人手に手を取って走り出す。

 目的の地は城の中にあるベットである。

「天狗の鼻がないわ」

 真樹穂が息切らせながら姉に問うようにして話す。

「大丈夫よ、私が良いもの持っているから」

 こう答える美知恵には、先程の景色とは違った考えが浮かんでいた。


 部屋に入るなり、姉が真樹穂をベットに押し倒し上から覆いかぶさった。

「いけない所を擦ってあげる」と姉が言うと、真樹穂はそっと目を閉じて体をまかせる事にした。

 父親も母親もいない二人きりの家で思う存分、考え得る限りの淫らを繰り広げる気でいる。


 昼前から始まった姉妹の狂宴は昼食の間も続けられ、外が薄っすら暗がる頃までにいたった。

 流石にここまで長時間にわたる色事に、そのまま寝入ってしまった姉の横で、真樹穂はまだ飽き足らずあれこれ引っ張り出した色玩具を、愛おしそうに眺めてはちょっと使い、飽きては別のに取り替え一人で夜遅くまで遊んでいた。


 ここでまた一人。姉との関係を良しとして、余韻の最中に更なる快楽を注ぎ足す人格が、少女である真紀穂の別人格として誕生した。


 翌朝。既に姉は何処かに行ってベットにはいない。

 家庭教師のキンベンに起こされ、二人きりの朝食を済ませると「今日の授業は地下室です」

 言われるまま拷問部屋へと連れられてゆく。

「私、この部屋は嫌いです。なんだかとっても怖い」

「そう言わないで、こんな部屋が好みの方も大勢いらっしゃいますのよ」

 どういった分野の家庭教師か正体が危なっかしいのに、真樹穂は素直にこの言葉を受け入れる。

「そうなんですか。勉強ですね」

「はい」

 部屋の様子に似合わず、爽やかな会話が石の壁に響く。

 キンベンがまず持ち出したのは、皮製の短い房鞭である。

「これで、先生を甚振って頂戴」

「えっ?」

「良いのよ、思い切り虐めてほしいの」

「そんな事できません。先生が怪我をしてしまいます」

 やる事はやっていても、まだまだ純粋無垢な精神構造に支配されている少女の真樹穂は、人を傷つける事を恐ろしい事だと思っている。

「傷付けても良いのよ。私がお願いしているのだからやって頂戴。これは先生からの命令よ」

 ここまで言われ、ようやく勉強の一環と理解した真樹穂。

「はい、わかりました」

 元気に返事をすると、シルクのワンピースを脱いで素肌を晒したキンベンの背中に、房鞭の一撃を入れる。

 しかし、この時はまだ心に躊躇があって、勢いはさほど強くない。

「あー、もっと強く、お願い」

「はい、先生」

 今度は、一度目よりも強く打ち据えてみる。

「あっー! もっと強くー」

「はい」

 躊躇なく、三度目は力を込めて打ってみる。

「あー、そうよ、良いわー。もっと打って」

「はい」


 打つ度にキンベンは身もだえ、自分で乳房を鷲掴みにしたり、濡れた秘部を弄ったり始める。

 こうしている間にも、真樹穂はキンベンを打ち続ける。

 やがてキンベンの表情は陶酔し、天狗の鼻を真樹穂に付けて、それを口に含み獣のようにむしゃぶりだした。

「あっ!」

 模造品である筈の天狗の鼻を刺激されると、真樹穂はさもそれが体の一部であるかの如く感じ取り、電撃を受けたように全身が痺れた。

「先生ー、気持ち良いです。どうして? あっ、あっ、あー」

 この問いに答える事なくキンベンは自ら拘束椅子に座ると、真樹穂を引き寄せ天狗の鼻を自分の中へとゆっくり招き入れた。

「はっあー。良いのよ。先生の中で行ってー。貴方の全てを頂戴」

 こう言ったキンベンは、両の手で自分の乳房をきつく掴んで身体をのけぞらせる。

「先生、良いです。とっても気持ち良いです」


「絞めて、先生の首を絞めて」

 死の寸前まで自分を甚振り、尚且つ愛欲のまま情の塊を突き刺す者に最大限の愛を感じる。

 恍惚の世界へ自らを誘おうとしている。究極である。

「でも、そんな事をしたら」

「良いのよ。先生は大丈夫だから。絞めて、早く。行きそうなのー。あっー、早くしてー、あっ、あっ、あー」

 真樹穂が動かす腰と同じに、キンベンが繰り返し声を張り上げる。

 乳房を握っていた手で真樹穂の両手を首に当てると、そのまま強く引き寄せ自分で首を圧迫する。

「もっと強く突いてー、強く絞めてー。御願い、あっー」

 真樹穂はキンベンの欲情が欲するまま、首を絞める手に力を入れてみる。 

 すると、キンベンの中に入れているものから、自分の全身に衝撃的な快感が伝わってきた。

 女とか男とかの別ではない、総ての持てるものを犠牲にして尚有り余る快楽の極である。

 遠退く意識の中で、更に絞める手に力を入れる。


「うぐっ、うっうっ」 

 声にならない音をキンベンは喉から発し、真樹穂の腕を握った手にもっと絞めてと力を入れる。

 キンベンから伝わる刺激を求め、激しく動かす真樹穂の腰先に付けた天狗の鼻は、いつしか身体と一体化していた。

「先生、良いです。とっても、あっー」

 荒くなる息遣いと体の動きに同調して、首を絞める手は増々その力を強めていく。

「あっー!」

 真樹穂が頂点に達し、固まったものの中心を一塊の粘液が激烈に通過する。

 キンベンは両腕をぐったりとして、息遣いもなく身動きしなくなった。


 余韻に浸る真紀穂。

 もの先の周囲が次第に冷めていくのを感じとると、一旦はおさまりかけていた欲情の炎が再び激しく燃え始めた。

 もはや身動き叶わぬ骸となったキンベンの中で、激しく前後する真紀穂の一部は、それまで以上に固く強くしなっている。

「あっ、あっ、あー、あー」

 地下室に響くのはただ一人の声である。

 冷め行く体を抱き、次第にその柔らかさを失って行くキンベンの中で、真樹穂は何度も何度も、精神と肉体が共に絶頂へと達する喜びに浸った。

 幾度も行っては覚醒し、意識を飛ばしては覚醒を繰り返す。

 また一人。真樹穂と牧保の間に一人の人格が生まれた。


 いったい何度めの絶頂かも覚えがなくなる頃、真樹穂は意識を朦朧とさせ拷問部屋を出る。

 一人自分の部屋に戻り深い眠りについた。


「御嬢様、起きて下さい。朝ですよ」

 すっかり明るくなった外の陽を、締め切られたカーテンを開け室内に取り込むのは、つい昨日まで姉であった冥途であるが、この事に真紀穂は違和感を感じない。

「奥様が御呼びです」

 裸の真紀穂を浴室に引き入れる。

 冥途が儀式のように、ゆったり時間をかけて真紀穂の体を洗ってやる。

 こうしている間も茫然と立ち尽くす真紀穂。

 意識はあるが、自分から何かをする意欲がまったく湧いてこない。

 昨日の惨劇を真樹穂の身体からすっかり洗い落とすと、冥途は突き出した棒をその口に含み、器用に舌先を絡ませて硬直させた。

 真紀穂をエアーベットの上に横たわらせ、自分でしっとりさせていたものの中に招き入れると、ゆっくり上下に腰を動かし始める。

「御嬢様ー。あっあっー」

 この声で、ようやく寝起きのもやもやから醒めたのか、真紀穂が勢いよく動きだす。

「美知恵ー! いっ、良いわよー。良いのー。あっー」

「あっ、あっ、あっー。御嬢様ー。あっあー」

 次第に動きを早める二人の声が、浴室に響き渡る。

 

 ひとしきり朝の戯れを終えると「これから学校に行くのですよ」と冥途が言って、真紀穂に白いスカーフが付いた女学校の制服を着せると、薄く化粧をして居間へと連れて行く。

「奥様、御嬢様を御連れしました」

 こう告げ冥途は部屋を出て行く。

「おはよう、家庭教師の先生を貴方が殺しちゃったから、今日からは学校に行ってもらいますわよ。もう、あなたったら、これで何人目」

 昨日の事は頼まれてやったと言い訳したかったが、殺したのは確かであるから、真紀穂は黙って母親の話を聞いた。

「制服姿の貴方、始めて見たけど、なんだか可愛いわね」

 つい数秒前まで怒りの顔付きだったのが、いきなりほころぶと、制服の上から真紀穂の身体を撫でまわし始めた。

「今日からではなくて、明日からにしましょう。その姿で、今日は一日御家で過ごしましょう」

「はい」

 真紀穂は機嫌の良くなった母親を見て、無条件にとても嬉しくなった。


 冥途が準備した軽い朝食を済ませると、二人は早速夫婦の寝室へと入って行く。

 寝室としてあるが、その広さはマンションの3LDK分はあるだろう。

 キングサイズベットの向こうには、温泉を引き入れた浴室が広い敷地の森を望めるように設えてある。

 ここから出て更に森を進めば、授業のあった屋外ベットを経て、突如出来上がったダム湖への小路に通じている。

「どうしましょう。今日はお天気が良いから、外に出ましょうか」

「おかあさんと一緒ならば、どこにでも行くわ」

「まあ、可愛い事を言うのね」

「だって、おかあさんの事、大好きだから」

 真樹穂が母親の腰に両腕をまわして強く抱きしめる。

 これに答えるように母親も、まわされた腕の上から肩と腰に手をやり抱擁すると、虚ろになっ真樹穂の口びるに自分の唇を重ねた。


 堰を切った様に求め合う二人の舌が複雑に動き絡まり合うと、これまで経験してきた事が一斉に真紀穂の身体を蹂躙して行った。

 いかに人並み外れた精神を有しているとは言え、母親と娘の営みは畜生道の顛末が見え隠れする禁断の情欲である。

 これまで抑えていた感情の陰を曝け出すと、ついにここへきて互いを許し禁断の喜びを分かち合う。

「うっ、んっ、んっーん。うん、うっ、うーん」

「ん、ん、ん、うっん、うん」

 何もかも吸い尽くすかの如き母娘が、口と口でせめぎあい舌と舌の絡み合いを続ける。

 永遠に続くとも思われる長い口づけの最中、母親が娘の育ち切らない乳房に手をやりそっと握ると、娘も母親の乳房を赤子のように欲っする。


 母親が着ていたシルクのワンピースを、スーッと床に脱ぎ落す。

 娘が母親の乳を吸うと、母親は制服姿のままでいる娘の一番大切にしている所に指を一本指し込む。

「あっん。おかあさんー。恥ずかしい」

「真樹穂、おかあさんに任せなさい。もう我慢しなくていいのよ」

 娘のそこは中に満たされた愛液が溢れ、外に広がる欲情の受け皿を輝かせている。


 一本の指を激しく蠢かせ、空いた手で制服を一枚二枚と剥いで行く母親。

 一糸纏わぬ姿にして終えると「我慢しなくて良いのよ。おかあさんに体を預けていれば良いからね」

 快感の末に、立っているのさえ覚束無くなっている娘の秘部に顔を押し付け、舌先で固くなった小突起を嘗め回す。

 そうしておいて一方の手は、露出して硬くなっているもう一つの娘がものを握り、激しく上下する。

「おかあさん、だめ! 真樹保、溶けちゃう」

 小突起から口を外し「良いのよ、おかあさんの御口に出して」こう言い終えると、握っていたものへと移して銜え込み、上下する手と一緒に動かしだす。

 口の中では母親の舌が、もの先を一生懸命に愛してやっている。

「あっ、はっ、はっ、はっ、おかあさんー」

「んっ、んっ、んっ」

 母親が喉から出す音は、声にならずに娘のものへと伝わる。

「あっ。行く! 出るー」

 娘のもの先から、勢いつけた粘液が口中に飛び出すと、母親はそれを受け止め、うっとりした表情を浮かべながら静かに己の体内へと流し込んだ。


 口中に何もなくなると、ゆるりと立ち上がり、意識を朦朧とさせている娘を軽々抱きかかえ、森のベットへと向かって歩き出す。

 母親の腕の中で、なえたものと熱い液に満ちたもの、二つを同時に愛された真樹穂にまた一人。

 これまでとは違った人格が芽生え始めている。

 ベットに運ばれながら、さらに熱くなっていく自分の内を感じる真樹穂。

 次第に意識がはっきりしてくると、母親が腕中にあって待ちきれない感情にまかせ、自分の手を溢れ出る愛液に浸してみる。

「あっ、あーっ!」

 少し触れただけで、体中の神経が快楽の海へと解き放たれ、なえていたものまでもが歓喜の雄たけびに誘われてそそり立つ。

 母親はそれを見てこの上なく嬉しそうな表情である。


「今度は、一緒に行きましょうね」

 こう言う母親が、抱えていた娘を立ち上がらせる。

 後ろから娘を強く抱きしめると、成長して下腹部から飛び出して来た自分のものを、透き通るように白い肌の背中に押し付ける。

「私、おかあさんのが欲しい。今すぐに欲しいわ」

 ベットに寝かされた娘が、ベットサイドに立つ母親の固くなったものを口に含んでから腰に片腕を回し、涙してすがりつく。

 そうしてから一方の手を、母親の熱く潤った所へと伸ばし、二本の指を入れ中で蠢かせる。

「真樹穂、上手よ。おかあさん、とっても気持ち良いわ」

「私にも、おかあさんのを頂戴。いっぱい頂戴」

 娘が一旦、口を固いものから避け、見上げる母親の顔は既に陶酔して口を小さく開けている。

「あー、あっ、あー、あっー、行く、真樹穂、おかあさん、行っちゃう、出るの、出ちゃうー。受け止めてー」

 激しく動く娘の口と舌に母親が耐えきれず、硬くなったもの先へと身体の芯から欲望を噴き出す。

「んっーん!」

 母親のを口内に受けた娘は、もっと多くの愛をねだって動きを止めない。

「またよ、また行くわー。真樹穂ー、素敵よ、私も溶けちゃう。あっーあー、あっ、もうだめ、行くー」


 共に二つの愛を持った母親と娘の、誰はばかる事ない痴態の舞は、屋外の芝生に置かれた白いカーテンベットの上で何度も繰り返された。

 やがて母親は娘の熟れた果実の中へ、何度行っても硬度の衰えない自分のものをゆっくり入れて行く。

「痛っ!」 

 経験がなかったのではない。しかし、この時の真樹穂はこれまでを忘れ、初めての事として感じていた。

「大丈夫よ。少しだけ我慢して。すぐに気持ち良くなるから。おかあさんが真紀穂を幸せにしてあげる」

 こう言う母親は、娘の中へグイっと入って行く。

「んっ、つっ」

「ごめんね。痛かった? もう少しだからね」

「大丈夫、おかあさんに任せるわ」

 更に母親が娘の奥へと入って行く。


 母親が差し込むもの先にフワッとした感覚が纏わり、それを超えるとすぐに柔らかな壁に突き当たった。

「もう大丈夫よ。痛くないでしょう」

 まだ未完成の器の中で、周囲を労わりそっと身動きする母親。

 次第に真樹穂の表情が苦痛から快感へと変わって行く。

「はっ、あーん、あっ、はっあー」

 真樹穂の甘えた声は森を何処までも伝わって行き、湖の畔まで辿り着くと、蒼く澄んだ湖面へ波紋となって広がって行く。


 性の喜びに全身を包み込まれると、真樹穂は自分の身体が浮遊しているかの如き錯覚に陥った。

「おかあさん、凄いわー。真樹穂、飛んでるの。ふわふわ飛んでるのー」

 うわ言のように繰り返す言葉、それが重なっていくと同じく、身体の中に幾段もの幸せが積み重ねられていく。

「おかあさーん。大好き! もっとー、もっとー」

「いい子ね、良いのよ、もっと感じてー、もっと大きな声を出してー。何度も行って良いのよー。おかあさんも気持ち良いの、あっ、あっーん」

 母は腰を動かしながら起きていた体を寝かせ、娘の感極まった唇に自分のを重ねる。


 腰にあって娘の中に入り、幸福の種を撒く自身の一部と同調した舌が、唇から先へと出たり入ったりする。

 入って来た時に、娘は母のに自分のを絡ませ、出て行くと、もっと来てと自分から母の中に入って行く。

 互いの出入りが、もう一方で行われている出入りと相まって、更なる快感を脳内に巡らせて行く。

「んっ、うーん」

「んっ、んっ、んーん」

 母は娘を、娘は母を、欲して望むままに抱き合い、体液の海に溺れ、深い快楽に浸って行く。


「お父さんが帰って来たわ」

 突如、母親がこう告げると、両腕で抱擁していた体を放し、一方の手を乳房へ、そしてもう一方で二人の間にあっていきり立つ娘のものを握りしめた。

 今までの母の動きとは明らかに異なり、その手が荒々しく上下すると、真樹穂の中にあったものがもっと大きく固くなって娘の中心深く入ってきた。

「真樹穂、これでやっと御前も大人になれるんだな」

 母の声が野太く、父親のそれになって娘に言い聞かせる。

「おとうさん、ありがとう。あっん、とっても素敵よー。もっと早く動いても大丈夫よ。もう痛くないから。気持が良いの。あっ、あー」

 目前の母親が、今の真樹穂には父親に見えている。

「良いかい、気持良いのかい? 行かせてあげるよ。出してあげるからね。おとうさんが、真樹穂の中に沢山絞り出してあげるからねー」

「あっー、良いのー、おとおさーん、もっと、もっと、もっと頂戴。いっぱい行きたいの。来てー。あーっ!」

 これまで以上の快楽に酔って頂上まで登り詰めると、また一人。別の真樹穂が生まれた。


 父親と母親が入れ代わり立ち代わり、娘への情愛を執拗に体現していくうち、その姿は美絵が最初に変化した屈強な男に変わっていく。

 そして真樹穂もまた、綺麗に化粧をしてはあるものの、体がすっかり男の姿に戻った。

 この二人が数時間ベットの中で過すと、牧保は化粧をしていない状態になった途端、意識を失って眠り込んだ。

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