誰かさんの願い
悪本不真面目(アクモトフマジメ)
第1話
流れ星が降って来た。二年前じゃなく今、あの時の二年後。今更どの面下げて流れていやがる。なんで二年前じゃなかった。今降って来て俺にどうしろというのだ。今更何を願えばいいんだ。俺は、拳銃で流れ星に向かって思わず撃ってしまった。当たる訳がない。しかし、流れ星はそのまま山の方へとフラフラと墜落していった。俺は、山へ登った。二年前も誰かと登った。手をつなぎ離さないように。今俺は拳銃を離さないで持っていた。この拳銃はその誰かともう一度会うために用意した。山頂につくと、いかにも星ですよといわんばかりの星形の物体が血を流しながら倒れていた。まだピクピクと星は動く。俺は星に近づき、もう一発お見舞させた。そうすると、新たに血を流し、さっきよりも細かくピクピクさせながらこっちへと近づき、俺の白いスニーカーに血をつけて倒れそのまま息をひきとったみたいだ。
空が鬱陶しい。俺の足元にもう干からびている星を蹴飛ばし空に向かい撃つ。一発二発と撃つ。俺は何も見ていない。すると星が落ちてきた。一体、二体。今更なんなんだ。何の嫌がらせなんだろうか。俺はその星たちをもう一発ずつ撃とうと思ったが、血を流し、しぼんでいた。その二体をなるべく最初の星の死体の方向に蹴飛ばした。思ったより軽く、二体同時に蹴飛ばせたが逆ハの字にそれぞれ飛んで行った。それぞれが山をズサーと滑っていく。下山のさいみつけたら、踏んだ後またどこかに蹴飛ばそうと俺は考えた。
光が横切る。まぶしく鬱陶しい。それは光蠅だ。ブンブンと俺の周りを光撒き散らし、目が痛くて仕方がなかった。ボヤーと白く何かが見え、白内障にでもなったのかと心配になった。しかし、それを見ていると俺は何でもできそうな気にさせる何かだった。その何かを盾に光蠅はしていた。アイツにも見えているようだ。なんとも卑怯な奴だ。だが、今の俺は何にでも出来そうな気になっていた。俺は撃った。光蠅は点滅し、血を流し、光らなくなった。こいつが死体の中では一番星形を保っていた気がする。それがなんだか気に入らなくて、尖っている部分を踏み折り、そのまま放置した。目の痛みは弱まっていた。
弾数は全部で六発。残り一発。ちょうどいい。俺はこめかみに銃口を向けた。まさかこんなにも星を殺す人生になるとは思いもよらなかった。誰かと会うための入場券のつもりだったが、よけいなオマケがついたもんだ。値段はそれなりにしたからこれくらいオマケがあってもいいか。間違いなく、こめかみはやけどをしているだろ。さっきまで花火をしていたから。熱い、熱い、でもいい。その後つめたくなるんだ。こんな熱さなど笑い話になるほどな。———パン!!!
どさっと、まるで忍者のように空と同化していた星が倒れた。血を噴水のように吹き出し、これで虹がでたらメルヘンだなと言うつもりだったがそうはならなかった。ただグロイまま、俺に大量に全ての血を出し切るように勢いよく血を流していた。俺は近づいた。近づくと血が俺の靴やトレーナーや顔につく。近づけば近づくほどに、宇宙な臭いがする血がべとべとついてくる。赤い赤い血。俺や誰かさんと同じ色。
俺は空に向かって拳銃を放り投げた。雨が降り出した。この血が洗い流される前に早く家に帰ろうと俺は走った。
誰かさんの願い 悪本不真面目(アクモトフマジメ) @saikindou0615
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