第5話

「お嬢さん、誰に断ってここで商売してるんじゃ」」

聖歌が道端でメザシを売ろうとしていると

頬にゴッツイ傷をつけたオア兄さんが

呼び止めた。

「ここは不動産売却の総元締め黒駒の権蔵

親分の縄張りだぜ。ショバ代はらってもらおうか」

「これメザシ」

「そんなおとわかっとるわい。何を売るにしても

権蔵親分のお許しがないといかんのじゃい」

「ヤバイよ聖歌。場所変えようよ」

「大丈夫、不動産大王にお出まし願うから」

「フッ、不動産大王」

オア兄さんがびっくりしたような顔になった。

「お嬢さん、不動産大王さまとお知り合いですか」

「ふえ」

「おみそれしゃした。権蔵がよろしく言っていたと

お伝えください」

オア兄さんが走るように逃げて行った。

「大王とも犬猿の仲なのにね」

ミーオが他人事のようにそう口走った。

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