4月23日 火曜日 雨
午前7時。朝、目がさめて歯を磨く。出勤前に顔を洗う。時間の余裕がなさそうだったので、花の水だけ替えて家を出る。今日は9時からアルバイト。
大体の場合、日当たり絶不調の我が家では部屋の中からでは、天気がわからない。玄関の扉を開けると、今日は雨だった。
到着予定時刻では、まだ余裕があるものの、なんとなく早足で駅へ向かう。雨はパラパラと降っていた。
駅へ着くと、なんとなくの勘が当たって、電車の遅延。結局、快速が来なくて乗ったぎゅうぎゅう詰めの各駅停車は、10分くらい遅れて到着。急いで乗り換えへ向かう。そんなこんなで、なんとか本日のアルバイト先へ到着した。
5時間のアルバイトを経て、時刻は14時を回ったところ。せっかく乗り換えをして、遠くまで来たのでコーヒー屋を2軒ほど回りたい。授業までまだ時間がある。
一軒目はアルバイト先の近くにある、このあたりにくると必ず訪れるコーヒー屋さん。豆のラインナップはたくさんあったが、今日はグレープとかブルーベリーのフレーバーをもつエチオピアにした。派手すぎず、果実味の美味しいエチオピアが早起き、満員電車、バイトで疲れ切った体を程よく元気づけてくれる。コーヒーに好きになったきっかけもグレープフレーバーのエチオピアだった。気がついたらテイクアウトカップの中身は空っぽ。
近場で昼ごはんを済ませて、ぶらぶら歩く。次の目的地は、ずっと行きたい思ってたコーヒー屋さんで2,3駅ほど離れた場所にあった。せっかくなので歩きで向かう。空は白藍色で、空なのか雲なのかわからない色をしていた。ところどころ水墨画の濃淡のように色の深い場所があって、それが白藍の中を静かに流れる様子が綺麗だと思った。綺麗だが、快晴ではない。ずっと眺めていると、朝からの疲れもあってか、自分の意識まで空を揺蕩う雲のように宙ぶらりんな感触がしたので次の目的地へ急ぐ。
コーヒーとワインの両方を取り扱うお店なのだが、想像していた倍以上はワインが並べられていてびっくりした。ワインボトルがびっしり並んだ陳列棚の中を彷徨って、ようやくカフェスペースを見つける。こちらも豆は8〜10種類ほどのラインナップから選ぶことができて、半分以上がCOE受賞豆、さらに残りの1/4がゲイシャというふうにラインナップが豪華すぎて、¥650均一なのが心配になるほどであった。
バリスタさんとお話をする中で、結局メニューにないブルンジのお豆を紹介してもらってそれを飲む。決め手はスッキリ感だ。雨の日の満員電車、蒸れるインナーと靴下。これらのじめっとした感じを吹き飛ばしてくれるコーヒーが欲しいという趣旨のリクエストを伝えると、たくさん紹介してくれた。柑橘系の酸が綺麗でスッキリするイメージのコーヒーを求めていたので、その条件で絞るとラインナップの中ではエルサルバドルとブルンジが残った。豆の匂いをかいで、よりスッキリしてそうだったブルンジに決定する。抽出方法はエアロプレスを選択。エアロプレスによる丸みをおびたジューシーな質感と、酸の角も同じく少し丸い印象。それでいて柑橘系のフレーバーは繊細で後味はクリーン。求めていたイメージと提供された一杯がカチッと当てはまるとはこういうことなんだなと実感する。天気は相変わらずだが、気分は晴れて、夕方からの授業へ向かった。
授業からの帰り道、すっかり白藍色は濃淡もない一面の濃紺になっている。雨も本降りで、せっかくなら晴れた気分のまま、この雨を楽しんでやろうと思う。少し遠回りをした。神社の参道の石畳に水しぶきが立つ様子、濡れた道路の舗装に乱反射する街灯の光、タクシーのヘッドランプ。側溝へ流れていく歩道の雨水の流れ、傘の上を跳ねる雨粒の音。靴も靴下もびしょびしょになったけど、晴れた気分のまま帰った。コーヒーは気持ちを晴らしてくれる。
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