4月18日 木曜日 曇り

 真夜中に目がさめる。帰ってソファで横になり、そのまま眠りについたので電気は煌々としている。すぐさまシャワーを浴びる。鏡を見た時、肌荒れに気づく。それはそうだ、帰ってきてそのままソファで寝落ちする自分が悪い、などと思いながら、肌が荒れたことに対する嫌悪感を体の汚れと共にシャワーで流す。シャワーから上がると、大体こういう嫌悪感は流れ落ちている。一方で困るのは、眠気まで流れ落ちていることだ。

 なかなか眠くならないのでそのまま本を読んだり、作業をしたりして眠くなるのを待った。時刻は午前6時。お腹が空く。冷蔵庫にはトマトとヨーグルト、卵、ベーコン。モーニングプレートにするにはパンとサラダが足りない。買いに出ようと玄関を開けると、外気はひんやりとして、薄着な私の服の中に入り込む。昨日まで暑かったのに、などと思いながら着替え直すのも億劫なのでそのまま家を出た。昨日は暖かい、というよりは暑く今年初のコールドブリューを仕込んだ。寝落ちするとは思っておらず、抽出時間がやや長引いてしまったが、多分大丈夫だろう。そんなコールドブリューを仕込んだ自分の予想とは裏腹にこの涼しさ。少し前までの春仕舞いの暖かさとそれを通り越した昨日の暑さはなんだったのだろうと疑問に思いつつ、今日はホットコーヒーをドリップしようと決めた。

 こういう涼しくなったり、暑くなったりする時期はホットコーヒーとアイスコーヒーどちらが正解、みたいなものはない(勿論年中を通して正解はない)。夏真っ盛りだとアイスコーヒーが美味しいし、事実アルバイト先のコーヒー屋でもよく売れる。冬の寒さがほとばしる時期ではホットコーヒーが美味しいし、これもまたよく売れるのだ。ホットコーヒーとアイスコーヒーの出数どちらも半々くらいのこの時期にはそういった正解がないのだ。いい豆はホットコーヒーでのみたい(ホットの方が私はアロマを感じやすいから)が、基本的にホットはホットの良さが、アイスはアイスの良さがあると思っていて、どちらも同じくらい好きな自分にはアイスとホットの両方を楽しむことができて、すごくお得な時期だなと思う。帰ったらホットコーヒーをドリップをしよう、そう決めて早朝のローソンストア100で買い物をした。

 我が家では基本的にホットコーヒーだと3つの抽出方法から選ぶことができる。ハンドドリップ、フレンチプレス、エアロプレスだ。大体その日の気分で選ぶのだが、今日はハンドドリップだった。最近ハンドドリップをしていなかった。ハンドドリップという行為自体が好きな自分のやりたい欲が日に日に増していたことが、私をその気にさせた。家にはケニアのSLのナチュラルとエチオピアのエアルームのナチュラルとグアテマラのティピカのウオッシュトがある。焙煎度合いは全てライトロースト。どれもフレーバーの系統が違っていて、なかなか良いラインナップだと思う。エチオピアもまた、しばらく飲んでない気がしたので、今日はエチオピアにしようと決めた。久しぶりに飲むエチオピアは特別うまい。ナチュラルだと尚更だ。

 家に帰ると、早速モーニングプレートの作成に取り掛かる。買ったパンをプレートに乗せてレンチン、サラダとヨーグルトを盛り付け、目玉焼きを焼く。ベーコンを焼いて盛り付ければ完成。最近ずっと作っているから慣れたものだが、あまりにもレパートリーがないな、などと思いながらドリップの準備に取り掛かる。

 最近のマイブームはORIGAMIドリッパーにKalitaウェーブフィルターをセットしたドリップ。フレーバー、ボディ感ともにしっかりめに抽出されてとても美味しい。寒い日にはしっかりめなコーヒーが飲みたい自分は、今日もその流行りに乗ってコーヒーを淹れることにした。焙煎日からやや日が経っているため、油温は高め、ウェーブフィルターは目詰まりを心配しなくて良いので、挽きめもやや細かめにする。豆の状態では感じられなかったフレグランスは、挽くことでふわっと広がり、湯をかけることで揮発して、最近ハンドドリップをしてなかった私を魅了する。この蒸らしの時間が好きだ。お湯をかけてぷくーっと広がるコーヒー粉の視覚的な美しさ、広がるアロマ、待たなきゃいけないということすら、愛おしい。だから今日はそんな至福の時を長く愉しむために蒸らしを40秒にする。焙煎日から日が経ち過ぎた豆はそれくらいがちょうど良い。2投目をかける。やはり、2投目は膨らまない。元々ライトローストだから膨らむことは期待していないし、日が経っているなら尚更だ。膨らむ=美味しいが成り立つわけではないというのも知っている。それでも、蒸らしで膨らむコーヒー粉はなんというか、可愛いし、やはり一投目は特別なんだなと思う。それからは適当である。ここまで凄く考えて淹れていたから、このまま、、、というのではなく、時の流れに任せてみることにした。久しぶりのドリップ、やはりドリップスケールの数字ではなく、コーヒーの様子を見ていたい。結果、粉量20gに湯量300g、落ちきり3分弱と無難な抽出ができた。

 飲んでみると無難な抽出に相応しい無難なエチオピアができた。アロマはフローラルでバラのような赤い花の優雅さを思わせ、口にするとフルーティ、ベリーを思わせる酸が口に広がり、余韻はクリーンである。冷めてくると、シトラス系の酸が際立ってきてこれもまた美味しい。久しぶりだからか余計美味しく感じた。適当に淹れてもこのクオリティなのだからエチオピアはすごい。今日はやはりホットコーヒーを選んで正解だったなと思った。

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