50
「会えるよ。もうすぐ帰ってくると思う」
「帰ってくる?」
飾は帰ってくるってなんだろう? と思いながら幽霊の女の子の顔を見ると女の子は「もうすぐだよ」とにっこりと笑ってそういった。
飾がそのまま幽霊の女の子と一緒にベンチの上に座っていると、少しして公園の道を歩いて、木立霰がこちらにむかって歩いてくるのが見えた。(その手には買い物袋をもっていた)
「あ、飾! 心配してきてくれたんだ。連絡できなくてどうしようかと思ってたんだ。約束の時間に神社にいけなくてごめんね。この子が自分から離れちゃだめだっていうから私、ここからあんまり遠くまで勝手に動けないんだよ」といつも通りの様子で霰は言った。
そんな霰にはまだ動物の猫の耳としっぽとそれから新しくほっぺたに猫のひげが三本ずつ左右に生えている。
「霰。大丈夫なの? それ」と猫のひげを指さしながら言った。
「かわいい?」と猫のひげをさして霰は笑顔でいう。
霰に昨日のような切迫した緊張感は感じられない。どうやら霰はこの幽霊の女の子から今の状態についてなにか話をきいているようだった。
飾は幽霊の女の子から(霰に話したような)詳しい話を聞かせてもらうことにした。(いいよ、と幽霊の女の子は言った)
そのお話によると、この幽霊の女の子はどうやら本物の『木立霰の守護霊』のようだった。
呪いと勘違いをしてしまった霰の状態は、実はこの幽霊の女の子が霰を守るためにおこなった呪いではなくて(真逆の力である)守護の力のようだった。
「霰は少しよくない状態にあった。だから私が守ることにした」と幽霊の女の子は言った。
「それはどういうこと?」飾は言う。
その飾に「あのさ、飾。少し待って。詳しいお話をする前にさ、私、この女の子に名前をつけてあげたいの。いつまでも名前がないとさ、かわいそうだよ」と霰はいう。
「ぼくたちで決めていいの?」名前のない幽霊に名前をつける行為は強いつながりを生み出してしまう。名前のない幽霊に簡単に名前をつけてはいけないのだ。まあ、この女の子は霰の守護霊なのだから問題はないと思うけど。
「この子に聞いたら、私たちで決めていいって、ね」
「うん。好きな名前をつけていい」とうんうんとうなずいて幽霊の女の子は言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます