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幽霊の女の子はなにもしゃべらない。
「霰はどこにいったの?」飾は言う。
幽霊である飾には、同じ幽霊の存在がすぐにわかった。それは相手も同じだ。この幽霊の女の子も飾が幽霊であるとちゃんとわかっているのだ。なのにしゃべってくれない。飾を無視しているのだ。
しかたないな。と思いながら飾は女の子の隣にちょこんと座った。
それからしばらくの間、会話はせずにただぼんやりと青色の晴れた空を見ていた。
「あなたは誰?」と幽霊の女の子は言った。
それはこっちの台詞だよ、と思いながら「ぼくは飾。東雲飾。霰の友達なんだ」と幽霊の女の子を見ながら飾は言った。
「幽霊なのに人間の霰と友達なんだ。……変なの」と少しだけ笑って幽霊の女の子は言った。(その無邪気な笑顔をみて、飾はかわいいと思った)
この幽霊の女の子からは敵意や悪い雰囲気のようなものはまったく感じられない。この幽霊の女の子は悪い幽霊ではない。むしろどちらかというと、もっと光をまとった、とてもよい幽霊のような感じがする。
「あなたの名前は?」と飾は言う。
「名前はまだないよ」と今度はちゃんと飾の顔を見ながら幽霊の女の子は言った。
「わかった。じゃあ、質問を変えるね。霰は今、どこにいるの?」
「安全なところだよ」と幽霊の女の子はいった。
「それは本当のことだよね。今は霰は安全なところにいる。それは間違いないんだよね?」
「うん。もちろん」とうなずいて幽霊の女の子は言った。それから幽霊の女の子は向こう側にある自動販売機を見る。なにをみているんだろう? と飾が幽霊の女の子を見ていると、きゅうにぴょこんと幽霊の女の子の頭の上に猫の耳がはえた。(飾は少しだけびっくりした。昨日、同じような光景を見たから、驚いて声をだしたりはしなかった)
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