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飾は木立家の前までやってきた。(途中の道で霰と会うことはなかった)
少し待ってから飾は「お邪魔します」と言って木立家の中に入る。一階から階段を上がって二階にいって、霰の部屋のドアをあける。ドアは簡単に開いた。鍵はかかっていない。なら霰は部屋の中にはいないはずだ。飾が部屋の中にはいると予想通りにそこに霰はいなかった。部屋のベットの上にはぬぎっぱなしのパジャマが置いてある。ピンク色のうさぎの模様のある見覚えのあるパジャマ。それは霰のパジャマだった。(そのパジャマを着ている霰を飾は以前に見たことがあった)
霰はもう出かけているようだ。東雲神社ではなくて、どこか違う場所に寄り道でもしているのだろうか? ……どうだろう? 可能性は低いと思う。霰は寄り道をほとんどしないし、今は猫の動物霊の呪いにもかかっているのだ。いつものように東雲神社にやってくると思う。それに飾と霰は今日東雲神社で会う約束をしていた。霰が約束をなにかの理由もなしにやぶるとは思えなかった。そう。霰は約束を守るのだ。なら、霰がどこにもいないのは、『霰になにかがあった』ということだ。
飾は木立家をでると玄関の前で周囲を注意深く観察する。すると飾はあるものをみつけた。
それは幽霊の通ったあとに残るかすかな気配だった。
飾は注意深くその気配を見ようとする。
太陽の光の中で消えかかっているけれど、そこにはなにかがあった。道路の上。そこにはなにかがる。それはよくみると動物の足跡のようだった。猫の幽霊の足跡だ。その足跡を見て、飾はすべてを理解した。飾はその足跡をたどるようにして、朝の町の中をゆっくりと歩き始めた。
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